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メディア化するほど、ECが伸びる理由 ヘリテージの上手な“雑誌”の活かし方

 僕にとっては興味深く、話を受け止めた。それは、メディアとコマースの関係について語られたものだったから。先日、僕は「ネススト・リテール・ラボ」というフォーラムに参加して、ヘリテージ 代表取締役 齋藤健一さんと話をさせてもらった。彼の話は「メディアの未来はどこにあるのか」そのヒントを明らかにしてくれる。何よりそれがネット通販における未来を指し示しているのが面白い。

ヘリテージ はこうして 雑誌 を再生させた

1.エイ出版社を受け入れて雑誌を再生

 ヘリテージは昨年2月、経営破たんしたエイ出版社から「ライトニング(LIGHTNING)」など主力媒体や飲食店の用賀倶楽部を譲受する契約を締結。今はメディアを運営する傍ら、ネット通販なども行って成果を出している。

 そこでもわかる通り、やはり雑誌などの衰退というのは避けられない状況にある。僕が関心を持ったのは、それらのコンテンツを受け入れ、どうマネタイズして活路を見出そうとしているのか、という部分である。

 僕らは知らず知らず、それらをウェブ、雑誌と二つに切り分けて考える。けれど、彼らの着眼点を見ると、そこではないことに気付かされる。齋藤さんが持ち出したのは「偏愛」というキーワードである。

2.偏愛とネットの親和性

 なるほど。これでピンときたのだが、今のネットの世の中は、偏愛だらけである。なぜか、それはSNSの台頭にあるから。多くの人がSNSでその価値観を共有することで、自分の存在感を示せるからである。

 多くは何かを発信したい。けれど、そのきっかけが欲しい。最近、「推し活」が話題になるのは、まさにそれだ。アイドルでも何でもいい。人と話題を共通して盛り上がれる要素があった方が今の人生を謳歌できるのだ。

 だから、LIGHTNINGなどの趣味系のコンテンツは活かせると、考えたのだろう。上手にネットへと浸透させることで、その最大化を果たせるポテンシャルがある。しかし、出版の世界は齋藤さんも話していたけど、高齢化もあって、そこが遅れているわけである。

 ここまで聞けば、齋藤さんが単に有名コンテンツだから、受け入れたわけではないことがわかるだろう。では何が受け入れる価値となったのか。その答えを探る上でキーとなるのが、エイ出版社の持つ「偏愛」的要素。今、上記で触れた通り、ウェブと親和性が高いと考えたから、譲受する契約を結んだわけである。

3.雑誌とウェブで切り分けると見えない本質

 ウェブ、雑誌とだけ切り分けて考えていたら、本質が見えない。先ほど、僕がそう話したのは、そんな理由からで、その基準だと安易に、雑誌はいらないという議論になる。

 でも、彼らの行動を見れば、そんなことは少しも言っていないとわかる。

 彼らは「LIGHTNING」、「2nd」、「趣味の文具箱」などの価値観はそのまま受け入れた。ただ「人がどうすればハマるか」という基準だけを見直した。それができるのは雑誌だけではない。無料で見られるYouTubeもあり、誰でも参加できるイベントだって存在する。雑誌にこだわるほど、なかなか手を出せない部分でもある。

4.熱狂をどう生み出すかが大事

 要は、かつてであれば、趣味の世界を雑誌一本で成立させていたわけだ。ところが、齋藤さんたちは、デジタルを巻き込みながら、その土台をもとに、より「偏愛」度を高めていく方向にして、そのものの付加価値をつけて、マネタイズするスタイルにしたのである。

 そうすると、それぞれの役目が棲み分けされてくる。より熱狂度が高い人が、雑誌を購入することになるのである。だから、自ずと広告の位置付けが変わってくる。部数を多く発行するのではなく、本当に熱狂する人たちが必要とされる分だけ、発行すればいい。

 だから、雑誌も必要以上に作ることなく、生産性が高くなる。仮に発行部数が減ろうとも、その部数で勝負をしているのではない。つまり、熱狂度で勝負をしているから、広告の依頼は後を絶たないというわけである。

5.偏愛を土台にマネタイズ

 見事な再生ぶりではないか。

 最近では、「趣味の文具箱」でいうなら、会員制サービスを開始して、年4回の発行の同誌が届くようにするほか、限定文具のイベントに優先招待などをするようにするわけである。まさに、サブスクリプションにより、雑誌すら安定性のある仕組みへと変えているわけである。

 当然、YouTubeでは思い入れたっぷりに、商品を語り、それをECサイトで販売するから、その熱狂ぶりは結果、その売上によって証明されるというわけである。

 ここで、学ぶべきことは、少しも売ろうとしていないこと。雑誌をテコに、偏愛の人たちを集め、そこで熱狂を生み出しているに過ぎない。あとは、そこから派生するパワーをフックにすれば、マネタイズは後からついてくる、というわけである。

 逆にいうと、普段、ネット通販に関わっている人たちは、こういうメディア的な要素を取り込みながら、自分達がより自分達の価値観をもっと深掘りできるかという部分に、重きをおくことでそのチャンスが広がってくるのではないかと思うのだ。

 今日はこの辺で。

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