ナノ・ユニバース 販売員 接客の変貌
昨今、コロナ禍によってガラリと世の中が変わってしまった。それにより、リアル店の 販売員 の接客が大きく変化した。上手にリアルの価値を活かしながら、業務を変えているのがナノ・ユニバース 。経営企画本部WEB戦略部 部長 越智将平さんの話はリアル店の変化に応える内容で、参考になるのではないかと思う。
ナノユニバースの販売員の変貌
1.一時、昨対5%の時も
前提として、コロナ禍、ナノユニバースは、昨年の緊急事態宣言下で集客率は昨年対比5%。10月くらいには持ち直し80%程度まで戻るものの、緊急事態宣言が再発令されて50%程度で推移している。
しかも生活様式も変容した。例えば、通勤服をターゲットにしたブランドは、通勤をしなくなった。ゆえに、それら洋服への興味がなくなった。売り上げの減少とともに、全体の収益性が低下。同じやり方で将来、戦う事に危機感が生まれている。
ただ、一方でリアルは生産性が高かったのかといえば、そうではない。かつての集客率を100%と考えれば、購入者はその中での5〜6%程。要は、ここの引き上げが狙い目ではないか。集客率が50%になったとしても、この購入率を倍に近づけるような接客の工夫。それが今は必要である。
2.DXで リアルの販売員は何が変わった?
ブランドとして、まずは、全体像を描き、スタッフがどう活躍してもらうか。そこを考えた上で、店舗とネット通販の一体化で捉えて、動く事が急務である。リアルとネットを横断して、お客様の一人一人に合わせた接客を行う。そうすることで、個々の顧客の趣味嗜好を踏まえた提案が生まれるようにしていく。
それを具現化していく上で、起点をデジタルに据える。と言っても、広告だけではない。広い意味でのデジタル。そこで肝となるのはアプリのダウンロードだとしている。
3.アプリの活用でファンを醸成
勿論、SNSやニュースメディアに比べてファッションアプリの閲覧頻度は低い。なので、UIの向上とコンテンツやサービスの質をブラッシュアップしていく。それと並行して、ここにスタッフの活用を織り交ぜていくのだ。なぜなら、それらは両輪であって、スタッフ自身が働き方の変化への理解をしてもらう事は欠かせない。徹底して、リアル店舗で、その実践をする事が肝となることを明らかにしている。
では何をしたのか。着目したのがコーディネイトで、「スタッフスタート」というサービスの活用を推進した。「スタッフスタート」は店舗スタッフの業務をオンライン化し評価まで実現するサービス。
4.スタッフの士気が向上
販売員がコーディネイト写真などをアップさせることが可能で、それにより得た実績は売上やアクセス数など全て可視化される。だから、それら投稿をアップした彼らにとっても利することが多い。
そのモチベーションの高まりと呼応する形で、導入後、その検索などから流入する率が向上。販売員の力をこれまでとは違った形で新しい売上をもたらし始めた。
綺麗に着飾ったものだけがお客様から支持されるわけではない。それも、その販売員ならではなのだ。身近さなり価値観なり、デジタルでありながら現場の実力で引き上げられた売り上げだ。
デジタル起点で 来店してストーリーは始まる
1.デジタルはリアルとの接点でもある
ただ、越智さんはもう一つ指摘している。それは、コーディネイトからの購入だけではなく、店舗に直接送客できることも重要な視点だと。
また、ここにはネット通販の本質的な問題が絡んでいる。これだけコーディネイトを強調しながらも、ファッションは、実はネットとの相性が元々良いものではない。例えば、トップスとボトムス、それぞれ個々人によりサイズが異なる場合が多い。また複数商品を買う以上、値段も高くなりがち。なので、ネットでの購入を躊躇させてしまう。
だからこそ、リアルのお店への来店に意味があるのだと。このコーディネイト提案の中でサイト上「カートボタン」に来た際、ごく自然な流れで、一緒に「来店しますか」という選択肢を用意するのである。
2.来店してこそ、本当の価値
これにより、店舗で予約できる時間が指定できるようになっているから、その時間に来て、試着できる。そのコーディネイト提案で購入される率を底上げできて、このストレスフリーな顧客体験こそが、顧客提供価値を高める要素の一つであるとしている。このサービスを始めて以降、多くの来店予約が入っていることは、まさにそのニーズに答えているからこそ、と述べている。
3.来店とお客様ごとの専属の販売員をセットで
さて、ナノユニバースとしては「販売員の指定」ができるものにしていきたいと構想を語る。現時点においても、お客様に「お気に入りの店舗」を決められる。なので、合わせて販売員も指名できるようにするわけだ。先程の来店予約と合わせていけば、まるで美容室の予約のように、継続性の高い関係性ができてくる。そこを目指すことで、最初に話していた集客率が減っても購買が倍にできると考える理由になる。
合わせて、彼らは個々のスタッフがそこで指名されるために、教育を徹底するわけである。スタッフスタートの利用の仕方にはじまり、オンライン接客などを学べる機会を提供していく。ツールを利用する人間の側のレベルアップもバックアップする。お客様にとって満足度の高いおもてなしを実現させる土台あってのツールだからだ。
ここまで読んでもらえれば、まさにコロナ禍ではあるけれど、それがもたらしたデジタルシフトは結果、販売員の働き方の変容にも繋がっている。これは、僕の印象であるが、今後、ファッションのお店は販売員という多くのスターを抱えるタレント事務所のようなプラットフォームになっていくべきなのではないかと思うのである。思い思いに気持ちに応えるスタッフと、季節ごとにコーディネイトを考えるそんな姿が目に浮かぶのである。
今日はこの辺で。