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メーカーが狙う新市場としての「楽天市場」

 地方を中心とした商店をエンパワーする目的で立ち上がった「楽天市場」。それは、いまや日用品を含め、あらゆる商品が集まる“総合ショッピングモール”へと成長した。ここに見いだせるのは、単なる広告施策にとどまらない。メーカー企業にとっての新たなマーケット創出という視点である。

1. 「地方の商店のエンパワーメント」から広がる波及効果

 楽天市場の原点は、地域のエンパワーメントを推進するところにあった。つまり、全国の中小規模の商店(地方の店舗含む)をネット上に出店させることで、それを叶えてきたわけだ。

 ところが現在、楽天市場を訪れる顧客の目的は、地方特産品だけではない。家電から日用品、食品、ファッションまで、生活に必要な幅広い商品がここで購入されている。

 こうした環境が整うと、もはや対象もまた、地方の商店だけでない。

 大手メーカーにとっても楽天市場が重要な販売・プロモーションチャネルとして機能し始める。顧客が「メーカー商品をネットで買う」という行動を当たり前に選択するようになった今、楽天市場というプラットフォームがメーカーにとっての新市場になりつつあるのだ。

2. 「RMP – Sales Expansion」で加速するメーカーの販促

 この流れを背景に、楽天は「RMP – Sales Expansion」の提供を開始した。これは楽天独自の広告ソリューション「RMP(Rakuten Marketing Platform)」の一環であり、「楽天市場」の商品検索結果画面にメーカー向けの運用型広告を配信できるサービスである。

• メーカーが自らの商品を広告配信

 「RMP – Sales Expansion」によって、メーカー企業は楽天市場内の検索結果画面に自社商品の広告を出せるようになった。例えば「P&G」が「レノア」の広告を出稿したとすると、「楽天市場」で「柔軟剤」と検索したユーザーの画面に、レノアを扱う店舗が広告として表示される。

• メーカー×楽天市場の相乗効果

 これまでは、メーカーがマスメディアや量販店を通じて認知を高めることが主流だった。しかしネット上では、顧客が「買いたい商品=具体的なキーワード」で検索し、購入に直結する可能性が高い。楽天市場内の検索結果に広告を出すことで、よりダイレクトに商品を訴求できるわけだ。

3. データを活用した新たな「役割分担」

 RMPで使える「マーケティングダッシュボード機能」は、楽天市場での消費行動を分析・可視化できる。メーカー企業はこのデータをもとに広告戦略を組み立て、より的確にアプローチすることが可能となる。

• メーカー側のメリット

 自社ブランドの認知度を上げつつ、ネット通販ならではの「購買データ」を直接活用することで、需要予測や商品開発に活かせる。

• 店舗側のメリット

 メーカーが広告を出稿していれば、扱っている店舗の情報が検索上位に表示され、売上アップにもつながりやすい。

• 競合激化の側面も

 一方で同じメーカー商品を扱う複数の店舗間では、価格やサービス競争がさらに激化する可能性がある。店舗としては、メーカー主導に振り回されない差別化策を講じる必要があるだろう。

4. メーカーの役割が変わる:モノからコト、そしてデータ活用へ

 かつては、大量生産・大量消費を前提としたマスメディア広告で一気に認知を広げる。それがメーカーの主な販促手段だった。

 しかし、楽天市場のようなプラットフォームが普及している。それで、消費者がすぐに購入へと移行する「具体的な検索」の場を持つ今、メーカーは自分たちの商品がどこで、どのような顧客に支持されるかを能動的に把握し、プロモーションに反映する時代になった。

• 商品のポテンシャルを活かす

 「この商品はネット通販ではどのような層に売れるのか?」「どの検索キーワードがより売上に結びつくのか?」。そんな分析が、商品企画やマーケティング戦略に直接役立つ。

• 販売チャネルを越えた動き

 メーカー自身が楽天市場に“メーカー直営店”として出店するケースも増え始めている。こうした取り組みは、地方の商店経由の売上だけに頼らないメーカー側の柔軟な販路開拓を象徴する。

5. 新市場での共存と差別化

 今後は、メーカー・店舗・プラットフォームがそれぞれの強みを活かしつつ、市場の拡大を目指す流れが加速するだろう。店舗側としては、型番商品だけに頼るとメーカー主導に埋没してしまうリスクもある。そのため、オリジナルセット販売や独自の接客サービスなど、自社ならではの価値づくりも重要になる。

• 地方の商店はどう活かす?

 地方の商店にとって楽天市場は、これまで通りのエンパワーメントを続けるだろう。ただ、それをしながらも、大手メーカー商品を扱うメリットを享受できる。何を主力とするかの見極めによって、地方ならではの魅力をアピールしつつ、メーカー商品で売上を補完する形が考えられる。

• 時代の変化を知識として吸収

 メーカーがネット広告で商品販促をする意義。それは、単なる広告予算の使い道ではなく、デジタルを介した新しい顧客との接点を獲得することにある。それは店舗にも波及し、EC全体の流通構造を変え得る大きな動きだ。

まとめーエンパワーメントの範囲はさらに広く

 「楽天市場」の登場と成長は、当初は地方の商店を主役にしたECのエンパワーメントとして位置づけられていた。しかし、いまや膨大なユーザーを抱えるプラットフォーム。メーカーが新たな市場を築く場として急速に注目を集めている。

 「RMP – Sales Expansion」のような広告ソリューションは、その象徴といえる動き。ただ、単純に広告メニューというよりは、全く新しいフェーズを迎えたと言って良い。メーカー・店舗・ユーザーそれぞれに大きな可能性をもたらしているのだから。

 だから、メーカーを主体とした下記の様なイベントも行われ始めている。

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 メーカーは自社商品のポテンシャルを最大化し、店舗はメーカー広告を利用して売上を伸ばせる一方で、差別化戦略がより重要となる。

 今後、「メーカーがどのようにプラットフォームのデータを活用して新市場を切り開き、それに対して店舗はどう対応していくのか」という視点は、ECの進化を読み解く上で欠かせない切り口だろう。

 単なる広告の話に見える背景には、大手メーカーと地方商店の双方に新たな価値をもたらす仕組みが着実に生まれているのである。

 今日はこの辺で。

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