楽天オンラインEXPO 三木谷 氏 モバイル 物流 に未来託す
楽天株式会社はただ今 楽天オンラインエキスポ を開催中であり、先ほど、代表取締役社長兼会長の 三木谷 浩史さんも講演を行った。やはり新型コロナウイルス感染症に伴い、社会環境が変化したことと、その中での自分達の役割に、言及したものとなった。
自らに関わる話としては、ショッピングEコマースのGMS(2020年4月〜6月期)が前年同期比48.1%にのぼった話を上げた。その理由は下記の図の通り、新規顧客の広がりと、久しぶりに購入する復活顧客が後押ししたものと思われる。
楽天オンラインエキスポ 三木谷 氏は何を語ったのか
三木谷氏はこれに絡んで「コロナ禍においては、コロナ前とコロナ後で戻るもの、戻らないものとがあるだろう。ただ、この売り上げは4〜6月だけの話ではなく、その勢いが7〜8月になっても衰えていないことを思うと、ネット通販は完全には元には戻らないのではないか。日本のEC化率は6%程度に過ぎなかったものが欧米並みに、この何年かで急激に成長を果たすのではないか」と話して、期待を込めて、楽天市場の重要性を強調した。
一つ、楽天として自らの強みについてはこれまで通り、SPUの価値。決済面で言えば、クレカ、デビットカード、電子マネーと揃っていて、これがポイントに繋がることでの後押し。最近ではそのポイントを背景に、アライアンスの強化で、Suicaでポイントが貯まるなどして交通機関利用者も取り込んで、幅を広げ、全体として、楽天市場に繋がりやすい環境を整えていると話す。
現時点は物流環境の整備が、楽天市場にプラス作用すると 三木谷 氏
楽天としては、成長を後押しする次なる取り組みとして、物流への投資を強調してみせた。2000億円もの投資を行い、自前で物流網を作ろうという思想のもと、自動化された倉庫を完備し、ラストワンマイルまで徹底する力強い意欲を見せたわけだが、その成果はどうだったのだろう。
具体的には「Rakuten EXPRESS」の人口カバー率62.5%、「Rakuten Super Logistics」の利用店舗が流通総額で35.9ポイント高い数字が出ていることを挙げた。ただ、これはまだ中間地点で、更なる利便性の向上を約束した。
「私も『スーパーSALE』『おかいものマラソン』で何個も商品を購入するのだが、店舗ごとに個別に配送されて、家に何度も宅配業者がくる。こういうものも改善したい。一回の配送でまとめて配達するなどすれば、ユーザーの利便性も向上する(から、もっと自社物流の価値を感じるだろう)」と話した。
送料込みラインの全店導入を実現したい構え
こういった物流での成果に合わせて、昨今、世間を賑わせた「共通の送料込みライン」の協力も呼びかけた。当然その成果についても、3月18日の開始以降、導入店舗は非導入店舗の売上に比べて20ポイント上昇するなど明らかにし、導入の意義を訴えかけたのだ。
参考記事:楽天 「 緊急停止命令 」 取り下げ と前日の慶大教授の見解
ちなみに、その「送料無料ライン」導入店舗は全体の8割を占め、ただ三木谷氏としては全店導入について諦めていない様子。「一般ユーザーに共通認識として、楽天市場で買うときは、3900円以上は送料無料なのだと浸透すれば、購買意欲を押し上げ、楽天市場全体の流通総額を押し上げることになるだろう」と話す。
もう一つの投資 楽天モバイルの必要性
さらに、三木谷氏は「楽天市場」を語る上でも、新しい取り組みの「楽天モバイル」の意義を述べており、現に、モバイル利用者は「楽天市場」の利用者が多いことを明らかにし、下記の通りである。
また、「楽天モバイル」のポテンシャルを上げる存在として、アプリ「Rakuten LINK」について触れた。「Rakuten LINK」とは無料電話、メッセージSMS ニュース ペイメントなどの要素が詰まった、コミュニケーションアプリ。三木谷氏は、これからの時代はコミュニケーションが重要となると話していて、「Rakuten LINK」をその起点とする狙いだ。
ニュースやペイメントなどを備えているので、日常、楽天モバイルのユーザーがそのアプリを触れる機会が増えていくとしており、聞いていて、昨今で他の企業でも叫ばれている「スーパーアプリ化」を狙っているのではないか、と思った。今は目下、将来2000万人を掲げている楽天モバイルへの積極的な投資も、こういう派生的要因をも含めてのことなのかも知れない。いずれにせよ、楽天経済圏と接点をさらに増やし、先ほど触れたSUPの価値を高めて、楽天のサービス全体の売り上げをさらに底上げできる。
足場固めと挑戦と
決算発表でも、投資フェーズに掲げている「物流」「楽天モバイル」などの投資に理解を求めつつ、そこから先、彼が描く展望の片鱗を見た気がする。
上記の通り、楽天モバイルも楽天市場の売り上げを上げるために、寄与する内容だとしているのを感じさせる話ぶりで、確かに、このプラットフォームとしての土壌をより拡大、強固なものにしていくことに、彼らの成長があり、楽天市場の成長もあるのかも知れない。それは物流もしかりだ。
不慣れでも荒削りな印象もなくない。賛否が巻き起こるところではあるが、先々を見据えなければ、新たな展開もなく、そうやって彼なりの理論で推し進めてきたことを鑑みれば、三木谷流は健在。スタイルは依然として変わらない。
イノベーティブでクリエイティブと言えるほどの派手さはないものの、彼らしい堅実で、先々を見据えた視点を織り交ぜながらの話ではあったようには思う。そのリーダーシップで、引き続き、店舗を未来へと不安なく導いて欲しいと願う。