雑貨が店を作り 店が雑貨を作る その舞台裏に迫る SOCALO 展示会ルポ
部屋を飾る雑貨や日常を彩る小物には様々な切り口がある。その形状や用途に遊びがあったり、僕らの馴染みのあるコンテンツをその模様に使って、おしゃれに演出したりと、いう具合。そういう雑貨を一堂に会したのが、「SOCALO」というイベントである。
雑貨ならではのアイデアは胸を躍らせる
1.アイデアで勝負をしているデコレ
まず、着目したのが、アイデアが冴え渡る雑貨に関してであって、今日はデコレコーポレーションの商品から見てみよう。正直、商品企画の現場に目を向けると、マーケティングと称して、他社のやっていることをそのまま、真似する傾向が少なくない。だから、なおのこと、オリジナル商品でアイデア勝負をする企業の存在は、売り場にとって貴重な存在。
例えば、こちらは何気ない「マグカップ」。でも、なぜか、サイドに取っ手以外に突起物がついている。「なんですか?これ。」そう聞くと、その答えを聞いて、ニヤリとしてしまった。
底面を見せてくれた。大きな鼻が掘り込まれていて、「あ、これは豚なのか」と気づく。つまり、コーヒーなどを飲むときに初めて、笑いを誘う設計。突起物は、豚の足だったのである。
2.アロマの知見を取り入れこんな楽しい演出を
些細な工夫だけど、これだって型を作らなければ、商品提供はできない。それなりの在庫リスクの覚悟を持って作っていることを忘れてはならない。
彼らはインテリアの商品などを手掛けており、ゆえにアロマディフューザーなどを手掛けることも、おてのものである。ただ、彼らのような名古屋の中小メーカーが、生き残るために、普通と同じ商品を作っては太刀打ちできないと、日夜、彼らが自ら企画会議を開くなどして、その力で勝負をしているのである。
アロマディフューザーにおける知見を取り入れると、こんな楽しい演出だって可能になる。
コップに水分を入れると、このマスコットはそれを吸い込んで、水を発して、部屋に潤いをもたらす。電池を使わずできる手軽さと、インテリアにした時の可愛らしい雰囲気。それは、世間で売られる加湿器のイメージを気持ちがいいくらい、覆すものである。
3.商品企画を通して気づきを得る
似た系統の商品で、下記の写真の商品がある。ちゃんと受け皿の上にマスコットがあるのは、後頭部の穴から水を挿せるような仕様になっているからで、徐々にそのマスコット自体に水が染み込む。愛らしくも実用的だ。
こういうアイデアが日常を便利に変えることだってある。秀逸だなと思ったのは、車を持つ人のための雑貨。傘を差しながら、車で荷物を出し入れするのは大変。そこで、この雑貨があれば、傘を持たずに済むという商品だ。傘の先端にマスコットを引っ掛けるのである。
マスコット自体には磁石がついている。だから、ピタッと傘と車の側面にくっつき、固定されるので、人間の手がフリーになるわけである。これであれば、屋根ができたようにして、車の中の荷物を濡れることなく、引き出せる。
どれもお見事というしかないクオリティであっぱれである。
4.日常に溶け込むオプション
こちらは、シンシアという会社の商品で、コンセプトは「日常に溶け込むライフスタイルオプション」である。つまり、大掛かりではなく、ナチュラルに家に溶け込む雑貨という意味合いで、このようなものだ。
充電式のBluetoothのレトロスピーカーやタイマー付きクロックなど、どれもさりげない商品提案であることに気づくだろうか。「ガッチリ作り込んでしまうと、買う人を選んでしまうので、これくらいでいいよねというこの商品独特の落とし所にこだわっています」と。
5.店とメーカーの一体で商売が成り立つ
これについては、色々お話を聞かせてもらって気づきが多かった。というのも、「僕らの業界は一度、買ってもらった後に“フォロー”してもらわなければならない」と。
聞いていて、なるほどと思った。雑貨商品で店を作り、その店がその世界でお客様を呼び込む。その世界を受け入れられれば、またその雑貨商品を必要とされる。だから、仕入れが継続的に発生するというわけである。店とメーカーの持ちつ持たれつの関係性を感じた次第である。
「日常に溶け込むライフスタイルオプション」というコンセプトを立てるのもそれが理由だ。店はその提案を持ち込んで、お客様を呼び込むことができれば、その延長上で商品を作り続ける。長いスパンで関係性を築き、ともに作り上げていくことの大事さである。
7.実は楽しいモチーフに溢れている日常
そのほかでは、パインクリエイトは、日常で目にする商品などの素材を、雑貨に落とし込むことで、楽しさを演出している。ユニークなのは「SPAM」である。
「SPAM」といえば、豚の肩肉を有効活用するために開発されたランチョンミート。このイラストのモチーフ自体には馴染みがあるだろう。シンプルカラーでアメリカンなテイストは、雑貨に取り入れてもおしゃれに演出できるだろう。彼らがライセンスを取って、マグカップやバッグなどの素材に用いるのである。
こちらは東亜産業の水筒である。イラスト作家「ぢゅの」さんが手掛ける猫のモチーフ。昨今、こうした猫などのモチーフを独自にアレンジすることで、絵の楽しさと猫好きの両面からブレイクする例が増えている。
どれもそれほど、単価が高いわけではない。話をしていて気付かされたのは、常にメーカーはそこで何かしらの世界観を持って、それを店に提案しているという当然の現実である。ときに、部屋を飾るものであったり、日常を彩る小物であったり。シーンにこだわったり、馴染みのあるコンテンツを取り入れたり。
雑貨はその雰囲気を楽しむものだから、店側もそれをフックに店を華やかに演出するのである。店とメーカーはその役割分担を上手に果たし合いながら、笑顔とともにお客様を今日も待ち受けている。
今日はこの辺で。