音楽を聴くではなく楽しむ視点から LPジャケットの需要は生まれた 一九堂印刷所
要は視点の転換だと思っていて、「一九堂印刷所」という会社にあって、そう思った。何かというと、元々LPジャケットを作っている会社だといい、「さぞかしこのところの音楽配信で、業績が厳しいのだろう」そう思ったのだけど、必ずしもそうではないと言われ、ハッとしたのだ。キーワードは意味変である。
LPジャケットといえば衰退でしょ?
1.それが大きな間違い
「LPジャケット」というと、大抵は音楽を「聴く」ために必要なものと思い込んでいる。何の疑いもなく、レコードを収納するものだから。でも、そこがこの彼らと僕ら普通の消費者とで、考え方が分かれるところだ。
確かに、今や音楽配信で、iPhoneなどで聴けるものだから、レコードそのもののマーケットは大きく縮小して、需要は減ったけど、それがゼロになったのかと言われれば、そうではない。彼らはLPジャケットに関して音楽を「楽しむ」ためのものとして捉えたことで、その需要はまだあるのかもしれないと思うようになったと言う。
2.聴くのと楽しむのと何が違う?
ん?何を言っているかわからない?「聴く」のと「楽しむ」のは何が違う?
確かにその利便性を追えば、読者の多くがそうであるように、音楽配信で音楽を聴くことの方が一般的。理由は簡単で、皆が持ち歩くデバイスの機能が向上して、音楽を聴けるようになったからだ。絶対数はそちらの方が多いのは当たり前である。ただ一方で、音楽を聴くシチュエーションなどにこだわりたい人の間では、もの足らないのである。
暗いところで くつろぎながら、ゆっくりとレコードをかける。そんな人は音楽を楽しんでいるのである。つまり、シチュエーションに酔っているのである。つまり、レコードでありそのジャケットは、その大事なムードを演出する貴重な一因なのである。
3.一部の人に付加価値を持って買ってもらえている
だとすれば、不思議な話だけど、生産数を抑えられたとしても、そこから生まれる付加価値に相当する対価は高くなる。なぜなら、そのシーンを味わいたいのだから、単価が高くなっても、納得して購入するというわけである。PCの前でクリックするのでは味気ないわけである。
それはアーティストもまた、同じで、単純に歌を切り売りして、提供したいわけではない。ライブの価値を重んじているように、シーンを大切にしたいと考えていル。だから、世界観を重んじるほど、そういう形でリリースをして、ファンとの関係をより深く構築する材料にするわけだ。勿論、ファンであれば、その特別感とレアな感覚に熱狂し、購入していくから、確かにマーケットは小さくなっても、確固たる地位を残している。
意味変する事で違った価値を創造
1.意味変の大切さ
レコードには音楽を彷彿とさせるシーンを持っている。だから、それ自体をインテリアにしている人もいるくらいで、そこでも需要があると同社は話す。これがまた面白いのは、そういう価値観をこの会社自体が理解できているという事実は、また、この会社自体の新しい可能性を切り拓く。レコードジャケットで稼働しなくなった分、レコードと同じ視点で、付加価値のあるモノづくりを意図する。写真は、紙で作ったシャンデリアである。
2.その技術力とアイデアのファンが生まれる
紙製品や文房具をただ消耗品と捉えれば安さ勝負となる。だから、最初からターゲットを絞り、ユーモアたっぷりに、オリジナリティあふれる創作力で勝負しようと考えたわけは、レコードのジャケットで培った特殊な製法を持っているからだ。それがこの会社たる個性を生み出し、ファンができていく。一種クリエイターが作り出す作品のような形で次の新商品を心待ちにしているユーザーが出てきた。
いわゆる「意味変」ですかね。そう照れくさそうに同社のスタッフは言っていたけど、天晴れ。LPジャケットを収納ケースだと思っていたらこうはならない。インテリアであり、音楽の付加価値を高めるアイテムだと位置付ければ、受け入れる人も出てくる。当然だとされる利用用途を少しその「意味」を変えてみるだけで、違った世界が見えてくる。商品の持つ可能性が無限大であることを、彼らは教えてくれたのである。
今日はこの辺で。