オリバックチェア10万台 ヒットの理由 原点は鍼灸治療院
最近、ベンチマークと称して他の企業を研究することはあるけれど、結局、その企業と似通った商品を生み出すことが少なくない。この商品は改めて、人の実態を踏まえて、世の中にない着想だなと思った。2年で10万台の実績を叩き出したオリバックチェアという商品についての話である。この商品に ヒットの理由 を学んでみよう。
ヒットの理由 は 商品企画の着眼点
1.その原点は鍼灸治療院
以前から、日本オリバックの代表取締役 金原巧治さんとは色々話してきたが、最近、「煌めく企業」という書籍を献本いただいて読んで、その企画力の意味を実感した次第だ。ここでは僕の見解で書いてみることにしよう。
オリバックチェアは、独自の形状設計で骨盤を正しい位置に補整してくれる椅子のことでそれでいて、体に負担の少ない姿勢で座ることができるものである。実はこの誕生には、鍼灸治療院が関わっている。一見遠回りに見えることでも、どこに着目するかで商品の誕生につながるものだな、ということである。この商品が生まれる前に実は、金原さんは鍼灸治療院を運営していたのだ。
鍼灸治療院とは、鍼をツボに刺入していくことで、筋肉のこりや血液の循環をよくしてくれる場所である。これと商品企画がどう結びつくと言えるのだろうか。でも、鍼灸治療院で金原さんは、肌で感じるわけである。人間の身体の不調の理由として、体力の低下や体の歪みなどから生まれることを。
2.ニーズに対してどうやって商品で形にするか
ただ、ここで金原さんの企画力たるところかもしれないが、ではその「体の歪みをなくす」ために「商品でどう形にできるか」という企画の話になるわけであって、それを椅子にしたというところに価値がある。
歪みの原因である、骨盤位置のずれや身体の歪みを、椅子により自分で調整できたら、悩みに答えることになるだろうと。椅子であれば体が本来あるべきところに調整していくことができる。使い続けるほど、徐々に体の歪みを治していくことができるだろう。この商品の着想にはそんな背景があるのだ。消費者の実態も意識し、毎日使うことを意識して折りたたみにするなど利便性を追求する配慮を忘れない。
実は、この商品は東急ハンズなどで瞬く間にヒットすることになるわけだが、このコロナ禍になってもその勢いは衰えずネット通販でもベストセラーを記録している。ここはよく、金原さんと僕とも話に及ぶ部分で、彼らが売り場に関係なく売れているのはその商品企画のバランスによるところが大きいと思っている。
3.工場との役割分担も奏功している
然るべき工場を選定し依頼をしながらも同社は店舗との関係構築を徹底して行い、そこでのニーズや相応しいキャッチ、見せ方などを工場にフィードバックしてバランスが取れている。工場は専門的知識を取り入れながら、その中身を追求しつつも、パッケージやその言葉選び、あるいはメディアへの露出などで金原さんがフォローすることで店舗が導入しやすくなっている。また、そのメッセージは消費者に受け入れやすいものだから、ヒットが生まれているのである。
この辺は、以前、金原さんと会った時に、「工場だけでもダメだし、我々だけでもダメ。7対3の割合で僕らは補完しあって成功を掴んでいる」という言葉が今でも頭に残っている。
今までにない発想だからこその繊細さ。消費者を見据えたコンセプトと、工場に求める専門性、出来上がってくるものに対しての心に響くメッセージ。これらがあるから、たとえリアルでなくて、ネット通販が土壌になったとしてもしっかり心に届いて、売れているというわけなのだ。新たな商品づくりは、着眼点と消費者の気持ちのバランスなのである。確実に長く、深く支持される商品になるのは、それだけの血と涙と汗の結晶なのである。
今日はこの辺で。