高校生が学ぶ“バイトのリアル”─未来につながる働き方の授業 渋谷女子インターナショナルスクール潜入

現代の高校生にとって、アルバイトは単なるお小遣い稼ぎではない。社会との最初の接点となる貴重な機会だ。渋谷女子インターナショナルスクールでは、マイナビによる「バイトの授業」が行われた。高校生たちがアルバイトを通じて何を学び、どのように未来へつなげていくのかを考える場が提供されたのだ。マイナビから誘われ、来てみたが、大人たちが語る論点とも違って、興味深かった。
また、この授業が開催された背景には、同校の「社会に直結する学び」を重視する姿勢がある。本記事では、授業内容とともに、学校がどのように時代に合わせた教育を実践しているのかを詳しく紹介する。
1. 渋谷女子インターナショナルスクールとは? 渋谷発、世界へ羽ばたく学びの場
今回の授業が行われた渋谷女子インターナショナルスクール(シブジョ)は、2023年に開校した新しい形の高校サポート校だ。校舎は渋谷・原宿の最先端エリア「東急プラザ表参道・オモカド」にあり、流行やカルチャーが日常の中に息づく環境で学ぶことができる。
この学校の最大の特徴は、「渋谷から世界へ」をスローガンに、社会と直結した実践的な教育を提供していることだ。
伝統的な学力中心のカリキュラムではない。SNSマーケティング、動画編集、ファッション、メイク、ビジネス起業といった、現代の高校生が「好き」を仕事にするためのスキルを磨く授業が組み込まれている。これらの授業は、雑誌編集や広告業界での経験を持つ校長、業界の第一線で活躍するプロフェッショナルによって指導される。そのため、机上の学びではなく、リアルな実践を通じたスキル習得が可能となっている。
また、シブジョでは「自分で考え、自分で動く」ことを最も大切にしている。
校則すらも生徒自身が作ることができ、行事も生徒主導で企画される。例えば、入学式は「そもそもなぜ必要なのか?」という問いから新入生が考え、企画・運営する形式をとっている。「ルールを与えられるのではなく、自らルールを作る」。そんな主体性重視の教育が、シブジョの大きな特色だ。
2. SNSの使い方──何がいけないのかを理解する
・正確に判断できなくなる
今回の授業では、アルバイトを通して、SNSの使い方についての話も重要なテーマとして取り上げられた。
今の時代、SNSを通じた情報発信は身近になっている。だが、実は何が「いけないこと」なのかを正しく理解していない人も多い。授業では、以下のような問題があることが指摘された。
- • 一般人が、利益を得ていることを隠して投稿する
- • 企業が、一般人になりすまして商品やサービスをPRする
これらの行為がなぜ問題なのか。それは、「何が正しい情報なのかを、正確に判断できなくなる」という点にある。消費者が本当に良いと思って購入したものが、実は広告だったというケースは少なくない。
そうした背景から、現在では景品表示法(景表法)によって企業が罰せられる仕組みができている。
しかし、問題はそれだけではない。
・知らないと加担していることもある
企業だけでなく、SNSを利用する個人も、知らず知らずのうちにこうした違反行為に加担してしまうことがあるのだ。例えば、「これ、SNSで書いてください」と依頼された場合、本来であれば「#PR」などを明示する必要がある。
実際に授業内でも、「こういうDMが来たことがある」という生徒がいた。つまり、この問題は決して他人事ではなく、誰もが経験し得るものなのだ。
そのため、今回の授業では、
「消費者は、景表法などの仕組みによって守られている」
「SNSを利用してお金を稼ぐ場合は、法律を理解し、適切な行動を取る必要がある」
という点が強調されたわけだ。思いの外、我々は守られているから、健全な生活を得られているのである。
特に、SNSを活用して収益を得ようと考える若者が増えている今、こうした知識を持っているかどうかが、将来的なリスク回避につながる。この話は、高校生に対して関心を持つべきテーマなのかもしれない。
3. ブラックバイト・闇バイト──知らず知らずのうちに巻き込まれるリスク
授業では、「ブラックバイト」と「闇バイト」についても詳しく説明された。ブラックバイトの問題は、決して最初から過酷な環境を強いられるわけではない。
例えば、「休憩中に電話を取って」と頼まれるようなことがある。一見、些細なことのように思える。だが、法律上、休憩時間は「労働監督下にない時間」であり、業務を強制されることは違法だ。
しかし、こうしたルールを知らないと「そういうものなのか」「みんなやっているし、断ったら悪いかな」と、無意識のうちに受け入れてしまう。
こうして、気づかないうちに「見合わない労働」を続けてしまう。それで当たり前になってしまうケースが多い。このように、ブラックバイトの問題は、はじめから過酷な条件が課せられるわけではない。ここがこの話のポイントのように思う。つまり、、
「無意識に、不当な労働環境に順応してしまうリスクがある」ということ。それが、高校生が陥りやすいポイントなのだと思う。
4. 変わる学校、変わる学びのスタイル
・学校の役割の変化
お分かりいただけただろうか。この授業が象徴するのは、「学校の役割の変化」だ。
従来の学校教育は知識詰め込み型だった。だが、社会に直結するスキルを学ぶことが重視されるようになっている。その中で、シブジョはまさにその最前線を走っている学校のひとつだ。
SNS運用、マーケティング、ファッション、ビジネス起業。それらの実践的なスキルを磨くカリキュラムを提供することで、世間に通用する人材を育てようとしている。
また、「渋谷女子研究所」では、現に、マーケティング会社と連携し、リアルな消費者の意見を企業とつなげるプロジェクトだって実施しているようだ。こうしたカリキュラムを通じて、高校生のうちから「世の中に求められる視点」を身につけていく。
そして、マイナビのような就職(バイト)に絡む企業の知見が加わる。つまり、学校で実践する攻めの姿勢の一方で、ともすれば、足元を掬われかねない守りの知識だ。それにより、教育の実用性はさらに高まる。実社会と直結するスキルを学ぶ場があり、それを生かしてアルバイトや就職に活かす機会がある。
そう思うと、企業が果たす意義はただ働くだけではないことも見えてくる。
・社会で通用する人材を別の切り口で
この二つが組み合わさることで、従来の「学校で学び、社会に出て実践する」という流れとは異なる、「学びながら、社会で実践する」という新しい教育の形が生まれているのだ。
この仕組みは非常に面白い。
特に、企業と学校が密接に関わり、教育と実践がシームレスに繋がることで、単なる「学習」ではなく、実際に「稼ぐ力」を持った人材が育つ環境が生まれている。
そう考えると、シブジョの教育方針には大いに可能性を感じる。他の仕事があって、途中で退席してしまったが、一度、校長先生にも、改めて直接話を聞いてみたいと思ったほど。さあ、常識にとらわれず、新しい価値がここから続々と生まれることを祈って、挑もう。
今日はこの辺で。