渋谷パルコ 文化を醸成 する“ショップ” リアルとネットの垣根を超えて
渋谷パルコ は小売の次元を超えて文化を発信する。 リアルとネットを行き来して、今までにない購買体験を創出する。また、リアル店舗の内装にもこだわる。シーンを重んじ、ブランドや才能、テクノロジー、それぞれの魅力をフルに再現する文化的空間である。
リアル でも ネット でもない 渋谷PARCO の新・ 購買体験
1.自分に合う酒をデジタルに指南する 日本未来酒店
最初に、地下にある「日本未来酒店」。飲み屋なのに注文を聞くわけでもなく、お酒を出さない。普通の飲み屋とは違った雰囲気を漂わせている。お酒を飲む前に、それと連動したスマホサイトにアクセスするよう促すのだ。
一体何が行われるのか。
というのも、飲み屋に入っても何を選んだらいいのか、案外「わからない」という事実。一風変わった趣向で、自分に合ったお酒を出してくれる。自分に合っているから、その時間はよりお客様にとって有意義となる。それをアシストするのが、スマホサイトだというのだから、確かに日本“未来”商店である。
写真のようにして、複数の日本酒を一口ずつ、飲む。一品一品、味わった上で、スマホのアプリで、そのひとつ一つに一つ星から五つ星まで自分の好みをつけていく。そこから、その人がどんなタイプのお酒飲みか判定してくれる。それが、提案に繋がっていくというわけだ。
2.価値観が分かれば、ここからコミュニティが生まれる
「どのタイプのお酒飲みなのか。それが判定できれば、その同じタイプ同士だけでスマホで呼びかけ、集めることだって可能です」。
お店のスタッフはそう語る。自分の合うお酒を探し出せる。それと共に、お酒だけではない価値を模索している。同じ価値観を持ったコミュニティを形成できれば、また違った楽しみ方をこの店は演出できるのである。お酒を出す場でありながら、コミュニティを形成しており、ここに継続顧客の土台も生まれやすい。
まったく繋がりのなかった人たちが日本酒の好みを通して、より深い関係を生み出す。デジタルがリアルな体験をより充実させる。全く新しい切り口のリアルな体験である。
価値観や用途で人と人とを引き合わせて、新たな楽しみや便利さを生み出すこと。そこにネットの意義があると思っている。たとえば、フリマアプリは売りたい人と買いたい人を直接、地域などの壁を取り外して、結び付けて、価値を生み出しているわけだ。でも、結びつける「きっかけ」は何でもいいのだ。この店ではそれが「お酒」だったというわけで、この挑戦は新しいと思ったわけだ。
売り買いの固定概念を打破する提案
1.買い物も文化、新たな価値を追求する
つまり、「渋谷パルコ」の素敵さはここにある。これまでのリアルの活用の仕方とは違った視点で、リアルの可能性を模索している。それを支えるのは、文化を先駆け用途しているからではないか。小売で新たな姿を提案して、文化そのものを作り替えようとしている。
5階では、まず今までの商業施設では考え付かないレイアウトでお客様を迎える。その開放的なスペースは、アパレル売り場の既成概念を打破する想いが伝わってくる。
各ブランドは仕切りで隔てられてはいる。けれど、ガラスも壁もあまりなくて、フラットな空間になっている。全ての商品が目に入ってくる。エスカレーター近くには巨大なディスプレイが飾られていて、近未来的だ。
全部で11店舗。それぞれの店に巨大なディスプレイが設置されてい流のが印象的。常に、ブランドの商品が映し出されているのである。
2.リアル店舗にいながら自然にネット通販を活用する
「Emily Temple cute」というショップに足を踏み入れた。
下記の写真がこのお店の様子である。ディスプレイはタッチパネル式になっている。タッチするとそれぞれのブランドの服が次々と表示されるのだ。それをお客様の方でタッチして選ぶと詳細画面が映し出されるようになっていて、QRコードが出てくるのである。
手持ちのスマホでこのQRコードを読み取る。すると、すぐにPARCOのオンライストアにアクセス。ディスプレイに映されている商品と同じ商品の詳細画面が出てきて、そのまま購入することができる。下記の通りだ。
ショップには商品が既に実際に飾られている。だから、ブランドのイメージ、素材感などはそこで手にとって分かった上で判断できる。そのまま店で購入しても、オンラインストアで購入をして自宅に配送してもらっても良い。
お店にないサイズなどもこれであれば、すぐに確認できる。自然にオムニチャネルを具現化している。リアルがただ存在する以上に、リアルの価値を生かしている。「レジの場所を考えずに」お客様が直感的に購入できる時代がもうそこまできている感じだ。
3.場所を活かしネットを活かして生産性高く
注目すべきは売り場面積。実はこの売り場の面積は通常の半分。10坪前後なので店側としては一般的なリアル店舗よりも固定費を抑えて出店できる。ネットとの連携を果たす事で、先程の話ではないが無理にその場に全種類の商品を揃えることなく、確実に買いたい商品に巡り会える。
勿論、オムニチャネルは徹底されていて、ショップとオンラインストアは在庫数が連動していてこれによりお店自体の生産性が高くなるというわけだ。
そこで販売を通して、仮説と検証を繰り返すことで適切なリアルな売り場の面積がどの程度なのかがわかる。リアルがどう、ネットがどうと区別されたものではない。お客様のニーズに合わせて、リアルとネットを一体で捉えて、ブランドにとって最も最適な販売形態は何か。その視点が貫かれているわけである。
文化を醸成する2020年の渋谷パルコ の ショップ達
1.パルコに任天堂キャラがやってきた「Nintendo TOKYO」
渋谷パルコはカルチャーを追求している。その最たるものの一つが「Nintendo TOKYO」ではないか。子供の頃から僕らにたくさんの夢を見させてくれたゲームキャラが一堂に会する。見ているだけで、冒険心がそそり、胸が高鳴る。
真っ先に目に入っているのはジャンプするの巨大なマリオの像。自分がゲームの世界に舞い込んだようで、ゲームにトライできる場所もある。そこはワンダーランドだ。
「マリオ」以外にも「どうぶつの森」「ゼルダの伝説」・・・。広大なフロアの至る所に、キャラクター像が立っており、取り囲むように関連グッズが並べられている。
広報によれば、店内のアイテム数は1000を超える。そのうち「Nintendo TOKYO」でしか手に入らないオリジナルグッズは500にも及ぶのだ。こりゃ来たくなるのももっともだ。
文具や日用品、アパレル、お菓子など、様々な種類とバリエーション。
ネコマリオ、ペンギンマリオ、ブーツマリオなど。懐かしいものから記憶に新しいものまで、様々なマリオのパワーアップをテーマにした「スーパーマリオ パワーアップ」は、ゲームの高揚感がこの場で蘇る。
2.名所とのコラボもまたソソる
渋「CROSSING SPLATOON」というシリーズは、渋谷の名所「スクランブル交差点」をモチーフにしたもの。スプラトゥーンのキャラクターが配置されたデザインのTシャツなどもある。
スクランブル交差点のモチーフ以外にも模様の中に自然に「渋谷」の文字が書かれていたり、遊び心に溢れている。任天堂にとっては国内初の公式ショップ。お客様と直接触れ合える貴重な機会である。より一層、キャラクターに愛着を持ってもらえる機会となりそう。
3.個性的なイロ、色々は文化を重んじればこそ
渋谷PARCOの素晴らしさは何度も話した通り、文化を提供しようとしている点にある。だから、アナログ的で昭和的なゴールデン街を思わせる、情緒ある飲み屋街が地下には形成されている。見ての通り、個性的な面々が迎える飲み屋も抑えているのは流石だ。
「渋谷PARCO」は再開発が進む渋谷の並居る競合のなかで、威風堂々彼ららしい佇まいで彼らのイズムを見せてくれた。その編集力に脱帽だ。それぞれのショップなどの個性や魅力に着目して、「パルコだったらそれをどう表現すべきか」を考えて「編集」している。この商業施設には文化の香りがあって愛がある。
販売する場」のみを提供せず、文化を提供する姿勢に、新時代を感じ、心から拍手を送りたいと思った。
今日はこの辺で。