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  5. AIが仕事を奪うのではない。人の“思い”が試される時代だ──トランスコスモス所年雄が語る、企業と人間の分岐点

AIが仕事を奪うのではない。人の“思い”が試される時代だ──トランスコスモス所年雄が語る、企業と人間の分岐点

 「3年計画が、もう意味をなさない」そんな言葉から始まった対話は、単なるAI活用の話では終わらなかった。トランスコスモスでシステム領域を率いる所年雄さんとの対話は、単なるAI活用論では終わらなかった。生成AIによって企業組織、開発、生産性、そして“人間の役割”そのものがどう変わるのか──その本質が語られていた。

 AIによって、100人でやっていた仕事が、1人でできるようになる。だが、それは単なる効率化ではない。企業も、人も、「何をやりたいのか」を持たない者から沈んでいく時代の到来だった。  

「3年計画はもう古い」──スピードがすべてを飲み込む時代

 かつて企業は、中期経営計画を軸に未来を描いていた。3年、あるいはそれ以上のスパンで戦略を設計し、年次計画に落とし込む。

 だが今、その前提が崩れている。

 所さんはこう語る。

 「3か月前に作った資料ですら、もう使えない」  

 AIの進化によって、環境の変化スピードが加速し、“未来を見通す”という行為自体が意味を失いつつあるのだ。結果として起きているのは、計画ではなく「更新」が前提となる世界。

 企業は、完成された戦略を持つのではなく、常に書き換え続ける“流動体”として存在することを求められている。

 この変化は単なるITの話ではない。資本主義そのもののリズムが変わり始めているという示唆でもある。

100人の仕事を1人で──“個の拡張”がもたらす革命

 AIの本質は、自動化ではない。「人間の能力の拡張」である。

実際に起きているのは、こういうことだ。

・コードを書けない人がシステムを作る
・数人で企業レベルの開発が可能になる
・会議中にリストや戦略が完成する

 つまり、 “人の数”が価値だった時代が終わりつつある。

 所さんは言う。
「5人以上いらない世界になる」  

 この変化は、スタートアップだけでなく、既存企業にも大きな影響を与える。人を増やすことで成長してきたモデルが、根底から崩れるからだ。

 だが同時に、それはチャンスでもある。“1人ユニコーン”すら現実になる可能性があるからだ。

組織は“全員を救わない”──コア40人だけで未来を作る

 興味深いのは、組織の戦い方の変化だ。トランスコスモスでは、800人の組織の中で、
実際にAI領域を牽引しているのはごく一部。

 「最初は10%、でもそれでも多かった。今は40人くらい」  

 つまり、全員を同時に変革するのではなく、“先に行く集団”を作る戦略を取っている。

 これは非常に重要な示唆だ。組織は均一に進化しない。むしろ、先行するコアがゴールを見せることで、 後続がついてくる。

 逆に言えば、ゴールが見えない組織は、絶対に動かない。

 この時代のリーダーに求められるのは、“説明”ではなく“到達点の提示”なのだ。

「システムを納品する仕事」は終わる──価値は“時間”になる

 AIによって、開発コストは劇的に下がる。100人月かかっていた開発が、3人月で終わるようになる。ここで多くの企業が勘違いする。「売上が下がる」と。

 だが所さんはそれを否定する。「5か月早く課題解決できる価値に、価格をつけろ」  

 つまり、価値の定義が変わるのだ。

・作ること → 解決すること
・工数 → スピード
・納品 → 成果

 この変化は、すべてのビジネスに共通する。

 “何を作ったか”ではなく、“どれだけ早く価値を届けたか”が問われる時代。

 ここに適応できない企業は、確実に淘汰される。

最後に残るのは「人の思い」──AI時代の本質

 ここまでの話を聞くと、すべてがAIに置き換わるように見える。だが、所さんの結論は真逆だ。

「思いがない人が使っても意味がない」  

 AIは、あくまで過去の蓄積から“確率的に最適な答え”を出す装置に過ぎない。そこに方向を与えるのは、 人間の意思である。

 だからこそ、これからの時代に問われるのはシンプルだ。

・何をやりたいのか
・なぜそれをやるのか

 この問いを持たない人間は、AIを使っても“褒められて終わる”。

 一方で、強い意思を持つ人間は、AIによってその思いを拡張できる。結局のところ、
テクノロジーが進化しても変わらないものがある。

 それは、人間の“原点”そのものなのだ。

きょうはこのへんで。

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