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Rakuten AIが切り拓く“会話で買う”時代──検索のいらない未来型ショッピング体験とは?

 「お母さんに贈るプレゼント、何がいいだろう?」。そんなふとした疑問を、まるで親しい友人のように受け止めてくれるAIがいたとしたら──。楽天が開発中の「Rakuten AI」は、そんな世界の実現をすぐそこまで近づけている。もはや検索のいらないショッピング。それが、Rakuten AIによってもたらされるのである。

 会話の文脈から自然にニーズを汲み取り、提案し、寄り添い、ときには褒めてくれる。“もうひとりの自分”のような存在へと、いまAIは進化しつつある。

日常会話から生まれる“気づき”が、購買体験を変える

 楽天AIの強みは、明確な質問でなくても自然な雑談から本質を導き出す点にある。

 「甘いものが食べたいな」という独り言から、「じゃあ、クリーム系のお菓子がいいのでは?」と提案し、「それなら、母の日にはお花とスイーツのセットが合いそうですね」と導く。その思考の流れは、もはや“人間以上に人間らしい”とすら感じられる瞬間がある。

 しかもこのやりとりは、過去の購入履歴や楽天の他サービスでの利用状況と照らし合わせた上での提案。単なる機械的な検索ではなく、日々の積み重ねの上に“理解”が生まれる仕組みである。

「Rakutenエコシステム」を横断する“つながるAI”

 これらの話を聞いていると、いわゆる僕らが描く「経済圏」という概念が、すでに過去のものに見えてきて仕方がない。実際に楽天は、「エージェント型エコシステム」という構想を掲げている。

 どういうことか。

「Rakuten AI」は、EC(楽天市場)、金融(楽天銀行・楽天カード)、旅行(楽天トラベル)、エンタメ(Rakuten TV)など、楽天が提供する多岐にわたるサービスの“接点”として、AIエージェントが利用者をシームレスに案内していく未来を描いている。

 この統合的な体験の要となるのが楽天IDだ。ユーザーがIDでログインすれば、サービスをまたいだパーソナルな提案が可能となり、「探す」から「出会う」体験へと転換が起こる。

 つまり、かつては「お得さ」を基準に構築されたエコシステムが、「快適さ」を基準に進化していく。同じ経済圏であらゆる接点を持つことで、その人の趣味嗜好がAIに蓄積され、提案の質が高まるのだ。

「楽天IDに宿る、もう一人の自分」という思想

 この価値に気づくためには、生成AIの本質に立ちかえるべきだ。つまり、生成AIに日々触れている人なら、きっとこう感じたことがあるはず。

 それはなにか。プロンプトを重ねるほどに、AIは自分の思考や好みに寄り添い、まるで“コピーロボット”のような存在になっていく。

 だがそれは単なる模倣ではない。問いかけの意図をくみ取り、性格や癖を理解した上で、最適な答えを差し出す。“自分を最も理解してくれる秘書”としての在り方だ。

 この構造を、もし楽天の中で実装したらどうなるか。楽天IDに紐づく膨大なデータ──購買履歴、閲覧傾向、使用アプリ、時間帯や文脈──それらがすべてAIのベースとなる。そしてAIは、商品やサービスの提案を超えて、楽天内における“人格をもった自分”として動き出す。

 楽天AIは、「データベース型の推薦」ではない。それは「データ全体から浮かび上がる“人間像”に基づいて助言するAI」なのだ。つまり、「楽天IDが人格になる」という思想こそ、楽天が掲げる「エージェント型エコシステム」の真の意味である。

自前開発のAI基盤が生み出す、楽天らしい進化

 こうした試みを可能にしているのは、楽天がAIを“自前”で開発しているからだ。外注ではなく社内で研究・開発を進め、独自のLLM(大規模言語モデル)を構築。しかも、その一部はオープンソースで公開されるという。

 楽天という巨大サービス群を横断的に連携し、その膨大なデータから個々のユーザーに最適化された“生活提案”を行うAI。それはもはや「買い物支援」ではなく、「人生支援」と言っても過言ではない。

 だから彼らは、その窓口として「Rakuten Link」の存在を挙げるのである。何か特定のサービスを示すものではない。僕らの同じものAIと同じで、問いかけから始める。

 時を同じくして、三木谷さんの講演が行われた2025年7月30日。その日から、「Rakuten AI」は正式に提供開始された。楽天モバイル契約者向けのコミュニケーションアプリ「Rakuten Link」に搭載され、チャット入力や音声・画像検索による質問が可能になった。

 アプリを開いてここであらゆる問いかけをしていくわけだ。つまり、楽天という括りの中では、最適解を示す。多くのサービスを使うほど、その顧客が得られるのは、お得さ(ポイント)ではない。あ、そうそう、それが欲しかった。そういう痒い所に手が届く回答である。つまりは、快適さ。あとは、AIが提示する追加プロンプトをタップすることで、より精度の高い“横断検索”が実現されている。

 楽天が楽天モバイルを起点にする理由は、まさにここにある。

 もはや「買い物ページ」ではなく、チャットで問いかけるうちに、あらゆる楽天サービスへと接続されていく。日常の買い物はもちろん、調べ物や翻訳、AIによる画像生成・コーディング支援まで可能という、汎用性の高いAI基盤がそこにある。

 これらの機能が「経済圏」というクローズドな環境内で作用することで、楽天AIの価値は最大化されていく。今秋には「楽天市場」への導入も予定されており、ユーザーの属性や購買傾向に応じた商品提案がさらに進化するだろう。

 すべては、「快適さ」へとつながっていく。

 どの経済圏を選ぶか──その選択基準は、「お得さ」から「快適さ」へ。楽天というサービスの中で、データが蓄積され、IDに紐づく“人格”が形成されるとき、AIは最適な秘書としての役目を果たす。

 もはやそれは、従来のショッピングモールとは別物だ。だからこそ彼らは、自らとAIの親和性を強調し、「これまでの蓄積は、この瞬間のためにあった」と胸を張るのである。

“スーパー秘書”は、あなたの心の奥を理解する

 今までは検索で購入するだけだった。しかし、会話の深掘りでいつしか、欲しいものに辿り着く。このリアルな感動は、「楽天エコシステム」を横断する“会話で買う”UXによって生まれている。

 もう検索はいらない。まるでショッピング体験が変わるだろう。

 AIが「これ、嫌いじゃなかったですよね?」と語りかけてくる未来は、もうそこまで来ている。それは単にデータを照合する世界ではなく、「あなたらしさ」に寄り添う、新しい人間関係の在り方だ。

 楽天AIが見せてくれたのは、そんな“スーパー秘書”のような存在だった。

 これからの買い物は、ただの物選びではなく、自分自身を知るためのプロセスになるかもしれない。

今日はこの辺で。

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