ふるさと納税 は“アラカルト“に。さとふるデータに学ぶ多種多様で 世相を反映する返礼品
考える以上に、「ふるさと納税」の環境が多様化している。それゆえ、今まで見られなかった傾向がちらほら、みられ始めているのも事実である。例えば、今の世相を反映して、返礼品に日用品を選んで寄付されていたり、より応援的な要素を強めたクラウドファンディングなど。返礼品自体が多様性を帯びて、バリエーションが豊富に、行動も様々になっているのである。先日、ふるさと納税のプラットフォーム「さとふる」と話をしていて、実感したことである。
ワンストップ特例制度
それらの多様化を後押ししているのは、利用者が増えているという実態である。
また、その利用者が増えていく事に拍車をかけいくであろうキッカケが、「ワンストップ特例制度」だと思った。これは、確かに一気に、ふるさと納税が簡単にできるようになる。みなさん、ご存知だろうか。「ワンストップ特例制度」は、確定申告を行わなくても、ふるさと納税の寄附金控除を受けられるというもので、2015年からやっているのだが、進化している。
例えば「さとふる」では2022年からそれをアプリ上で、簡潔に行える仕様にした。かかる時間は、10分以内という調査データも出ている。こちらは、「さとふるアプリdeワンストップ申請」での実際のデータである。利用者のかかった時間に関して円グラフになっているが、いかに早くできるかが理解できるだろう。
スマホの利便性に加え、マイナンバーカードひとつあれば事足りてしまう。これはやってしまう。
利用者が増えれば返礼品も多様化
「ふるさと納税」のハードルが低くなれば、利用者は更に増える。すると、当然、その利用者のニーズは徐々に多様化が進んで、かつての「ふるさと納税」の印象から変容しつつある。それが、どう変容するかというと、冒頭にも書いた通り、世相を反映するという点である。
例えば、昨今、原材料費の高騰に伴い、物価が軒並み上昇しているのは実感済みだろう。故に、寄付行為の中でも、返礼品に日用品を選ぶ割合が増えているわけである。こちらもさとふるが教えてくれたデータが示している。こちらは、2022年のふるさと納税で選んだ返礼品のジャンルである。
「雑貨・日用品」が15.2%まで伸びている。当然、トイレットペーパーなども含まれる。いわば、地域の特産品などのイメージだけではなくなっている。六人に一人がそのような「雑貨・日用品」を選んでいる計算になるのだから。
「返礼品の選択にあたって物価上昇の影響があった」。そう回答する人の数も増加している。それは、下記の通り、全体の4割を超えているのだ。
寄付を通して地域を助け家計を助ける
ふるさと納税がその裾野を広がって身近なものになる程、自分たちの家計を助ける手段にもなっている。そうとも受け止められる現象が起こっているのが面白い。だから、下の返礼品を見てほしい。
銀鮭の切り身ではあるけど、B級品をまとめたものだ。ワケアリのお礼品を出す事で、寄付者がそれをお得に取り寄せて、地域に還元しつつ、自らの家計も助ける。なぜなら、ここ最近、物価の高騰で鮭も高くなっているからだ。要は、今までは普段、手にできないものを「ふるさと納税」で手に入れて、付加価値を享受していたのが、少し変化している。
自治体自身が工夫して種類豊富に提案
すると、さとふるも場所としてだけではなく、メディアとしての意味も強くなりそう。つまり、返礼品の内容も、多種多様なアプローチが必要である。そして、実態に合わせたラインナップが求められ、今までにない寄付の提案が生まれ、使い道が創造され、新たな文化を作る。
新たな寄付の提案といえば、「クラウドファンディング」もそのひとつだ。
一例を挙げるなら、東京都日野市の動き。「新撰組の原点『日野宿本陣』を未来に残すプロジェクト」といって、その使い道を示して、寄付をしてもらう。495,000円の額が集まった。つまり、ふるさと納税のプラットフォームとして定着した今。それを目的にユーザーは集まってくる土壌はある。
そこで、新しい視点で、寄付を呼びかける。すると、それ自体が伸び代になっていく。
だから、静岡市などではそれらの事業数自体が多く、その背景に「仕組み化」ができていることがありそう。静岡県では、子ども食堂やフードバンクといった食糧支援や高齢者、障がい者、子ども患者、犯罪被害者の支援など、主に住民に対する支援の寄付を募集している。
ふるさと納税の関係部署が他の部署と密に連携。ふるさと納税に関するアイデアを収集して、返礼品に反映していく。だから、返礼品のタイプも数も増えていく。通り一辺倒な考え方にとらわれず、積極的な姿勢を見せている自治体ほど、成果が出る傾向にある。
従来の「ふるさと納税」からの脱皮
だから、恐らく「ふるさと納税」の環境はこれから多様化する。ゆえに、返礼品のバリエーションは豊富になるだろう。更に、アプリでの申請などで、利用のしやすさが、種類豊富な返礼品を様々寄付することを後押しすれば、掛け算的にマーケットは膨れ上がるというわけだ。
ここからは知恵が必要なフェーズに入るだろう。現状、「さとふる」としても需要が増えつつある中、撮影の仕方など、事業者に向けてそのパワーアップを意図したイベントの開催なども行っていて、バックアップする体制を強化している。
その一方で、今求められているのは、今の時代を踏まえたお客様に響く切り口の考察ではないかと思う。例えば、事業者同士が、意見を交わして、取り入れて成長し合える環境を作り出せるか。また、自治体と連携して、魅力的な切り口で惹きつけられるか。さとふるのようなプラットフォームが率先して、事業者と自治体双方に、気づきの機会を作ることが必要になってくるだろう。
今日はこの辺で。