1. HOME
  2. News
  3. 店談
  4. 通販/eコマース
  5. 必要なのは“最小公倍数”の経営 CRM研究家 西野博道さん 「チームメイト」オフ会(前)

必要なのは“最小公倍数”の経営 CRM研究家 西野博道さん 「チームメイト」オフ会(前)

 必要なのは“最小公倍数”の経営。やずやの大番頭として、通販業界を引っ張ってきた西野博道さん。彼はまた、そんなユニークな表現で、企業の本質を説明した。そして、その年商が今、幾らであれ、年商100億円企業と、その伸び“続ける”企業との間には、そこでのマインドに大きな違いがない。そのことを強調して、このメディアのコミュニティ、チームメイトのオフ会に集まる人に、発破をかけたのである。

関わる人、全てがハッピーと感じることを。

 そもそも、彼がやずやに入ったときは社員は自分と女性のパートタイム労働者しかいなかった。年商も3億円。しかし、13年後には年商470億円まで伸びることになった。

 果たして、やずやの何が変わったのだろう。

 いや、年商3億円の頃も、15億円の頃も、470億円を達成した時も、全く変わらなかった。結局、年商100億円を達成するマインドとしてあったのはシンプル。社員、家族、取引先、関係する全ての人がハッピーと感じることをコツコツ、続けていく。ただそれだけだったのだ。今、年商が幾らであっても、その100億円を達成するマインドが、必ずや、その企業にとっての明るい未来を指し示す。

 だから、今日、この日、集まる皆に当てはまることだと熱っぽく説くわけである。

 では、100億円を達成できる企業と、そうではない企業。その二つは一体何が違うのだろう。それは、「売上が積み上がっている」ことである。

 例えば、4年前、3年前、2年前と、「長く付き合っているお客様の方が売上が高くなっている」。一方でそこに満たない年商50億円〜60億円くらいの企業の多くは「最近のお客様の売上が多い」のである。

年商100億円になる鍵は何か?

 では、そうだとして、年商100億円になるための鍵は一体何なのか。

 一つ目が「年商」に比例する指数を使うかどうかということだ。大抵の企業は、「今日」の売上、「今月」の売上を追いがち。だが「年商」に比例する指数を用いて、会社の業績を判断しなければいけない。これに築いては少し、後述する。

 二番目が、現場と経営者が同じPDCAでまわっているかどうか。経営者がやっていることと、現場スタッフがやっていることが、食い違っている事が少なくない。上記で明確となった指標に沿って、うまく歯車が噛み合うように、施策が循環していなければ、これがまたうまくいかない。

 三つ目は、お客様のことが見えているのか。最終的には「お客様が満足しているのか」。それが見えていることで、初めて上記の検証ができるというわけである。

 今、上記の通り、大きく3つに分けたけど、一つ一つ、少し掘り下げて考えていこう。

LTVと売上の相関関係

 一つ目の「指数」に関して言えば、ことの本質を見つめることが大事だ。

 例えば、「LTV(ライフ・タイム・バリュー)」は実は売上とは相関しない。「LTV」が上がると売上が上がることが多いように見受けられる。けれど、だからと言って「LTV」を上げようとすると、実は、売上が下がることも少なくない。

 そのほか、受注件数などを追うのもそう。これらがいけないのは、なぜか。それは、それらの行動が必ずしも「年商」を増やすことにはならないからである。年商は「今月」「来月」の売上を足しただけの単純な話ではないからだ。

 改めて「年商」を方程式で言い表すなら・・・

 年商=年間LTV×稼働顧客

 こう書くと、年商をあげようと年間LTVをあげようとする。しかし、上記にも書いた通り、年間LTVはそう簡単には上がらないのだ。西野さん曰く、LTVは10年でせいぜい20%くらいしか上がらない。

 つまり、5000万円の会社が1億の会社になろうと考えたとしよう。その時に、年間LTVを上げようとしても、それは無理なのだ。なぜなら年間LTVは10年で20%程度。計算すればわかるが、5000万円で20%アップしても、だから1億円はには到達しない。ではどうするんだ。血虚期、もう一方の「稼働顧客」を増やすしかないのである。

稼働顧客とは?

 この「年商」の方程式における「稼働顧客」というのは、何か。稼働しているお客様で『一年以上で過去一回、買ってくれた人は何人いるの?』ということになる。例えば顧客リストに3万人のお客様がいたとして、一年以内で購入した人が5000人だとすれば、年商に影響を与えるのはこの5000人だけなのだ。

 あとの2万5000人は年商に関係がないのである。

 だから、それを稼働顧客にしていくか。この議論になってくる。とはいえ、それほど難しいことはなくて、稼働顧客は三つしかない。

 具体的には・・・

  • 1)今年の購入だけではなく、その前の年から購入を「維持」してくれているお客様。
  • 2)今年の購入はあるけど去年はなくて、その前の年に買ってくれていた「復活」のお客様。
  • 3)「新規」で今年獲得したお客様。

 この三つ以外は存在しないのだから、マーケティングもシンプルに三つしかない。

 ただ、考えればわかる通り、「新規」は新たにお金を要する。だから、大事なのは、減らさないということになる。一年前のお客様はもうすでに確定しているので、その数字から「減る」しかない。その減少する度合いを、西野さんは「顧客維持率」という言い方で表現しているのだ。

 これがいかに大事かというと、幾ら顧客が1万人いたとして、顧客維持率が10%だったとすると、1000人しか残らない。だから、新規を取るしかない。多くの会社はここを新規で補おうとしてるというわけなのだ。

顧客維持率が高ければ利益も増える

 実際に、通販の世界で説明するなら、40回以上、購入しているお客様が、何十万人といる。だから、実は、その新規獲得の数の蓋を開けてみると、年商30億円くらいの会社と、十数億の会社で変わらなかったりする。

 これは、別に通販に限らず、全ての業種で考えるべきこと。

 これらは、どれだけ利益が残るかという話に直結するから大事なのである。会社にとってキャッシュがなくなったら、全てが終わりだから。だから、通販で培った指標が応用されることで、業種問わず、企業そのものの体力が向上すると考えるわけである。

 これらをひっくるめて、考えていく発想。それが年商100億円企業には見られるから、100億円を目指す、目指さないに関係なく、そのマインドが大事だと説く。

 話を戻せば、結局、「顧客維持率」が大事になるという話になる。西野さん曰く、それを向上させるというのが「CRM(Customer Relationship Management)」という活動だというわけだ。

 そことの関係で、顧客維持率を見ていく。なぜなら、繰り返しになるが、10%だったとすると、1000人しか残らない。だから、新規を取るしかない。

CRMで大事なのは関係性を築くこと

 それでいつしか、CRMの「R」の部分を間違えてしまう。本来は、「Relationship」であり、新規を追うと、ここをresponsiveになってしまうのだ。売り込み、反応を見て、成果を上げるのではない。関係を築いて、実績を作る。だとすれば、CRMとは、極論、「ありがとう」を言い合える活動であると彼は強調するのだ。

 実は、極めて人間的な側面が強い事がわかる。

 お客様がお金を払ってくれているのに「ありがとう」と言ってくれる。そのためには、各々の業務の中で、何をすればいいのか。それを考えていくことこそが、一つの答えだと説くわけである。

 ただ、長年、西野さんはCRM活動をしているけど、問題点があって、それは三つある。

 一つは「成果が見えにくい」。もう一つは「時間がかかる」。三つ目は「やることがたくさんある」。

 だから、彼は数字をてこにして、成果をみえるようにしていき、時間がかかるけれど、そこに耐えて、乗り切った企業を多く見てきたわけだ。

参考:顧客の離脱の予兆に気づく「通販理論2.0」通販以外にも通用する「100億PDCAマニュアル」

 いずれの問題に関しても、先回りして予測していくことの大事さを思う。今を起点に過去を見るのではなく、過去から今を見て、それをヒントに未来を見ることである。

多くの企業は“最大公約数”の方に捉われがち

 彼は、chatGPTを例に挙げて、公約数、公倍数というユニークな形でそれを説明してくれた。

 現状、chatGPTの主たる使い道は、過去の事実から絞り出して、そこから共通項を見出し、判断するという部分にある。例えば、「こうすればCPO(広告宣伝費)が取れるよ」という具合。要するに、これらは「今を起点に」して、「過去の共通項」を導き出しているわけである。

 これらって、“最大公約数”で導き出したものだというのだ。(最大公約数の出し方は教科書を見てね)。

 例えば、24と32の最大公約数って何か?約数は「1」「2」「4」「8」である。だから、最大公約数は8ということになる。多くの企業がその「8」を追い求めようとする。

 他の例に置き換えてみよう。

Aさんは「カレー」が食べたい。

Bさんは「カツ丼」が食べたい。

 そう言ったときに“最大公約数”はなんだろう。その答えは「ご飯」である。彼はこの比喩で何が言いたいのか。このことは“最小公倍数”と比較してみることで、本質的に理解ができる。

最小公倍数の経営が必要な理由

 “最大公約数”は確かに必要なこと。だが、ここまで大事だとしている「年商」の議論では、それを用いるだけではダメなのだ。なぜなら年商の議論は、未来を語ることだから。先を予測するのが難しいという経営者も少なくない。しかし、だからこそ、そこでは“最大公約数”ではなく“最小公倍数”の経営が大事になる。

 “最大公約数”と“最小公倍数”の違いは何か。“最大公約数”は「今を起点」としていて、“最小公倍数”の経営は「過去を起点に」したものである。

 実は、事実は少し前に起きている。だから過去を起点にして、今を見て、そこで出てくる指標をそのまま、未来に当てはめて考えられるというわけである。

 例えば、2024年4月15日だとすれば、これを一年前に戻す。なぜなら、2023年4月15日までの過去でやったことは「事実」なのである。事実は変わらない。事実を活用すれば、それを未来にも応用できる。

 「顧客維持率」がそうなのだが、一年前(2023/04/15)から今日(2024/04/15)の数字でみる。この「稼働顧客」は数字が確定している。だから、初めてさらにその前(2022/04/15)の一年前の稼働顧客を見ることで「顧客維持率」を出せる。上の図であれば数字が顧客番号で、()の中身がお客様の購買回数だ。誰が維持しているかが明白で、人数も出せる。

 その維持率は今の会社の力を示す指数。その力がこれから、続いたらどうだろう。「年商」の議論はそれを考える事ができるから、先の未来を予測できる手掛かりとなる。

年商100億円につながるマインドが企業を健全に成長させる

 さて「24」と「32」の“最小公倍数”とは何か。その答えは、96である。「32」の3倍が96、「24」の4倍が96である。わかるだろうか。“最大公約数”の場合は8である。遡った過去にしか答えが見出せないのに対して、“最小公倍数”は手元の数字を手がかりに、先の数字を割り出している。

 この考え方からすれば、先ほどの・・・

Aさんは「カレー」が食べたい。

Bさんは「カツ丼」が食べたい。

これで、“最小公倍数”はなんだと思いますか?

 そう言って、西野さんはニヤッとする。

「答えはカツカレーです」

 僕らが年商を意識して、導き出すのは「ご飯」ではなく「カツカレー」というまだ見ぬ、未来の設計の方なのだ。つまり、年商100億円のマインドは、ここにある。

 年商が何億円であれ、今を起点に過去を分析するのではなく、過去を起点に今を見る事で、未来を考える事なのだ。企業の成長に欠かせないのは、この年商100億円につながるマインドの問題。今、年商が幾らで、100億円が達成できるかどうかではない。この“カツカレー”を導き出そうとする視点にこそ、企業の真に強い成長がある。

 今日はこの辺で。※そしてライブコマースの実演へ。

関連記事

145が自らの考えを大事に、わかりやすく想いを持ってビジネスの本質に迫るメディアです。主に小売業、ものづくりとキャラクターライセンスを追っています。
詳しくはこちら

【license】ウォルト・ディズニー 【license】サンリオ 【license】作家プロデュース 【license】漫画・アニメ・映画 【Product】アクセ・ジュエリー 【Product】アパレル 【Product】インテリア 【Product】コスメ・健康 【Product】スイーツ 【Product】ホーム・台所 【Product】文具 【Product】玩具・ガチャ 【Product】雑貨・小物 【Product】食品 【Product】飲料・酒 【Retail】CRM 【Retail】D2C 【Retail】OEM 【Retail】OMO 【Retail】ふるさと納税 【Retail】オンラインショッピングモール 【Retail】コンサルタント 【Retail】コールセンター 【Retail】サイト制作 【Retail】チャット 【Retail】フードテック 【Retail】マーケティングオートメーション(MA)・メール配信 【Retail】マーチャンダイジング(MD) 【Retail】リユース・フリマ 【Retail】レンタル 【Retail】受注管理 【Retail】広告・販売促進 【Retail】接客 【Retail】決済代行 【Retail】物流・バックヤード 【Retail】自社EC/ASPカート 【Retail】自社EC/フルスクラッチ 【Retail】越境EC カルチャー/新進気鋭デザイナー コンテンツ/スポーツブランド コンテンツ/歌手・タレント デジタル/AI デジタル/CX デジタル/IOT デジタル/NFT デジタル/Web3 デジタル/アプリ デジタル/フィンテック デジタル/製造業テック デジタル・トレンド トレンド/SDGs トレンド/ミュージック トレンド/ランキング トレンド/動画配信 トレンド/美術展 トレンド/調査・データ ファンシー/Curious George ファンシー/ミッキーマウス ブランド/コンテンツ モール/Amazon モール/au PAY マーケット モール/Yahoo!ショッピング モール/楽天ファッション モール/楽天市場 ユニクロ/ブランド リテール・トレンド 小売店/ウォルマート 接客/やずや 接客/ライブコマース 接客・販促/Instagram 接客・販促/LINE 接客・販促/TikTok 接客・販促/YouTube 業態/SPA 業態/コンビニ 業態/スーパーマーケット 業態/卸売 業態/専門店 業態/百貨店・商業施設 業態/飲食店 物流・バックヤード/日本郵便 玩具/バンダイ 経営・マネージメント(事業と事象) 自社EC/BASE 自社EC/GMOクラウドEC 自社EC/Shopify 自社EC/カラーミーショップ 自社EC/フューチャーショップ 自社EC/メイクショップ 解説/ありがとう店の舞台裏 解説/ものづくりのセオリー 解説/アーティストの感性に触れる 解説/ハロートークショー 解説/ヒーローインタビュー 解説/初心者の方、どーぞ 解説/奥深きキャラクターの背景 解説/潜入イベントレポ 解説/社長の真意 解説/視点をかえてみると? 解説/賢くなろう-商売の教科書

最近の記事