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「ワーク」でも「マン」でもない ワークマンの進化と真価

 もはや「ワーク」でも「マン」でもないな。良い意味で、新しい顧客を掴んで、その幅を広げて進化している。ただ一方で、そのカラーは泥臭いイメージが抜け、「らしさ」を失いつつあるから、その折り合いをどこでつけるかが、肝になりそうにも思う。ワークマンが、開催した「新商品発表会」で実感したことだ。

生産工程で転換しSHEINモデル取り入れる

1.ワークマンcolorで見せた多様性

 全体を振り返れば、要所要所で、トレンドを取り入れながら、土台にある機能性の高いものづくりを最大化させる動きを徹底している。彼らの強さは、実店舗であり、そこで実際に顧客体験をしてもらうことで、全く違った提案をすることができる点にある。

 以前から書いている通り、#ワークマン女子は、それ用に特別に用意したわけではない。すでにあるものを、女性がイメージしやすいように売り場を再構成して、成功を掴んだ。そこから派生して、彼らは「ワークマンcolor」という新たな実店舗を展開。その第一弾が2023年9月1日からオープンする「イグジットメルサ銀座店」。実際に行ってみたが、下記の写真の通り。

 つまり、成功を掴んだ彼らは、「女子」という括りも一つではないと判断。多様性を考慮し、さらに4ラインに分けて提案している。マネキンの背後には、そのコーディネイトをイメージしたラインごとの棚が用意されている。直感的な購入を促すスタイルで、尖っているから、拠点も拡大しない。

 だから、この銀座の他でも「新宿」「渋谷」「梅田」などで検討中で、限定的。10店舗ほどに絞っていくので、アンテナショップとしての意味合いが強いだろう。

2.SHEINの手法を取り入れる為の「ワークマンcolor」

 なるほどと思ったのは、これを機に新しいチャレンジをするのだ。それは、SHEINの手法を取り入れたものである。つまり、アンテナショップとしての意味合いと、数を絞り込んだ戦略をテコに、それらの店舗を中心に、小ロットで短納期の商品を用意。より、トレンドに合わせた品揃えを実現していくのだ。

 ただ、それは同時に、従来、彼らがこだわり続けた、ものづくりのあり方を見直す事でもある。

 彼らの安さの理由は「一年前に」発注することにある。繁忙期を避けて、大量に生産をかければ、コストのかかる機能性の材料も、安く仕入れて、商品を作れるからである。

 その代わり、#ワークマン女子は、その部分においてはブレることなく、コーディネイトの提案という発想で、女性というマーケットを開拓してきたわけだ。結果的に、ワークマンにおける「安さ」とそれに見合った「機能性」に、女性が気づいた格好で、売り上げが伸びた。

3.SHEINの手法は回転率の高さをフックに安さを実現

 さて、一方で、「SHEIN」の手法は「回転率」にある。つまり、複数のインフルエンサーにより細かな商圏が形成されていることを背景に、その商圏ごとに少量多品種で展開したことに利点がある。

 本来ならば、少量多品種、短納期は工場にとって割に合わないことだ。しかし、「SHEIN」は、売り場を持ち、プロモーションとしての、インフルエンサーの数を増やした。そして、個々の発信のその時のトレンドを反映できるように、提携工場と組んで、すぐに生産をかけるようにしたのだ。自ずと、その回転率は上がるから、利益が生まれ、そしてさらにトレンドが反映されやすくなって、人気が加熱したのである。その手法は見事だといって良い。

 ワークマンとしてはそれまでの取り組みで、トレンドに敏感な層が、集客できている。それらの集客の源は、YouTuberなどのインフルエンサーだ。だから、同じように、その手法を取り入れても、それに見合った回転率を作り出せると考えたのだろう。

 実際、銀座の店舗の内覧会にでも、そのコーディネイト提案に混じって、それらの商品があった。通常商品に、自然と、小ロット生産をなじませている。恐らく、今後は、徐々に短納期・小ロット生産の存在感を増して、店の付加価値を高めるのだろう。

4.ワークマンcolorで新たな生産工程を確立

 具体的には、日本に近い「上海地区」で、ほぼ同条件で生産できる体制を構築したと説明する。その上で、試作をしないで、直接生産に入る。

 ポイントは、大きく3つ。一つは短納期で発注後、4週間で店頭に陳列できる。二つ目に小ロットで低価格。500着からの生産が可能で、8割が従来価格のままだ。

 最後に、海外にある、長期取引をしている工場が率先して、協力。なので、それが継続的で盤石な生産過程を支える。うまくいけば、事業拡大の足がかりにしたいところだろう。

 その規模は小さくとも、彼らには生産工程を見直す、大転換。だから、アンテナショップである「ワークマンcolor」で個性を伸ばす一環として具現化させる。それが定着していくけば、その後の動きを模索するのだろう。

 かくして、「ワークマンcolor」は他の店舗とは違う役目を担っている。多様性に応えるコーディネイト提案をする。それをしながら、会社としては新たな生産工程を持ち込む。これまでにない商品ラインナップを提案していき、事業として拡大できるかどうか。それを検証する大事な要素を持っている。

海外もインフルエンサー活用で活路を見出す

1.海外進出の土台で沖縄店舗OPEN?

 もう一つの大きな変化は、インフルエンサーとの距離感である。トレンドを取り入れ、それをフックに、自分たちの成長絵図を描こうとしており、近年、商品企画にも彼らを呼び込む。社外取締役に、サリーさんというYouTuberを起用するほどである。

 実際、このサリーさんのYouTubeがきっかけで、カジュアルなキャンプ市場のマーケットを開いた。商品力はプロモーションを伴って成長するもの。彼女の説明はこれまでのワークマンではプロモーションしていない部分だから、それがそのまま、伸び代となった。殊更、近年、その価値を重んじた彼らは、それを商品企画と一体で、行うことで価値を見出した。

 この日も、専務の土屋さんは「消費者へのリサーチよりも、インフルエンサーの方々の声を取り入れた方が、商品がヒットする」とまで言及している所以だ。

 それを未来に繋げる動きとして、顕著に示すのが、海外進出に向けた備えの部分である。

 実は、この日、#ワークマン女子が沖縄に進出することを明らかにし、東アジア旗艦店として位置付けた。「なぜ?」と思われがちだが、沖縄と台湾との親和性の高さを強調する。

 実は沖縄が、台湾や韓国からのインバウンド客が多いことから、それに向けてこの場所を拡大する。台湾、韓国に影響のあるインフルエンサーに取り上げてもらうことで、その土台を作る。

2.インフルエンサーを活用しつつ土地柄に応える

 つまり、いきなり台湾に進出するのではない。その準備をするのがこの拠点。まずは、親和性の高い沖縄での品揃えで仮説と検証を行う。そこで、売れ筋が固まったところで、海外進出を果たす。全く未開の地でありながら、自信を見せるのは、インフルエンサーの存在が背景にあるからだ。

 それは、考え方としては、作業着がキャンプにふさわしいと提案されたのと同じ。沖縄という場所で、台湾、韓国のインバウンド客に彼らの商品力が発揮されるようにしていく。要となるのは、韓国、台湾で影響のあるインフルエンサー。彼らと共に考えて、仕掛けもあわせてしていくわけだ。

 だから新規加入でありながら、自信を見せる。それは、先ほどのサリーさんの実績をもとに、インフルエンサーの発信力と、その影響力を背景にしたトレンドニーズの反映。

 消費者リサーチではなく、インフルエンサーに直接、商品開発に関わってもらう。同時に仕掛けも一緒に担う。これが先ほどの言葉の意図するところだろう。

 敷地面積には、220坪で本腰を入れて、初年度の売上目標は国内最高の6億200万円。

 インフルエンサーの声を取り入れてヒットを掴む手法を、自らの海外事業の足がかりにする。作業着に徹してきたことでトレンドで実力を発揮しずらいウィークポイントを、乗り越えていくわけだ。

新規拡大と強みのバランス

1.ジャンルもさらに拡大

 その一方で、商品ジャンルの拡大を目指す。驚いたのは、インナーにも進出するのだそうで、そこでも発揮するのは機能性。そのベクトルで追求した先にたどり着いたのは、ファンケルの素材。

 ファンケル独自の技術で、美容に使われた成分「セラミドヴェール」を応用した。インナーでは、そこでの保湿成分が要となって、乾燥肌に悩む女性のニーズに応える。乾燥肌に限らず、今後も、彼ららしく花粉など「悩みに答えるインナー」として、その存在感を示していきたいとしている。

 以上のように、冒頭に書いた通りだ。もはや「ワーク」でも「マン」でもないなと。それは、いうまでもなく、ここ最近の「ワークマン」の躍進によって手にした新しいフィールドであり、それをテコに、さらなるチャレンジを続けているというわけだ。

2.差別化要因があっての企業価値

 まるでその会社のイメージは変わったとも言えよう。しかも、彼らの礎に、純粋な作業着の「ワークマン」があるからできるチャレンジであり、手堅い。一方で、拡大にはそれとは違った手法が求められるから、そこからかけ離れた戦法になっていく。違った戦い方は彼らの成長の証でもある。

 ただ、業務範囲が拡大するほど、かけ離れた手法の割合が増える。そうなれば、彼らが追求してきた強みの存在感は薄れていく。例えば、繁忙期を避けた安価な大量生産、これまで長年支えてきた、機能性を活かす専門家としての企画者の存在。

 それが気になる。しかも自然体でファンに受け入れられているインフルエンサーを社外取締役にしてしまっては、企業のカラーがついてしまって、お互いにとって利点があると言えるのか、という疑問もある。

 そう考えると、必ずしも拡大することが正解なのか。そのような気もしてくる。ワークマンはワークマンで十分に支持者はいる。しかるべきブランドのサイズを考慮して、それを認識しながら、向き合うべき顧客を見定めて、そこの価値を向上させるべきではないかとも思える。

 とはいえ、何事も挑戦あるのみだ。その答えは、まさにこれからの彼らの業績で見えてくるだろう。これからの手腕に期待したい。

 今日はこの辺で。

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