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受賞までの地道な道のり Rakuten Shop of the year 2022

 互いの労をねぎらい、そして讃えあう。一人一人の頑張りに目を向ける一年の大事な節目として、価値のあるイベントなのだろう。「楽天ショップ・オブ・ザ・イヤー2022」に潜入して、それを痛感した。同賞では、総合賞10店舗、ジャンル賞132店舗(42ジャンル)、サービス賞21店舗、特別賞11店舗の計174店舗(注2)が受賞し、スポーツ用品を販売する「アルペン楽天市場店」が初の総合グランプリを獲得した。

 臨場感を肌で感じながら、生の声を聞きたく、3店舗ほど、話を聞いてみた。三者三様であり、それぞれにそれぞれのやり方があって、想いがある。語弊を恐れず言えば、泥臭くて、素敵だ。感慨に耽りながら、取材をしたのである。

釣具も認められる時代になれたかな?釣具のキャスティング

1.リアルの価値を活かすための「楽天市場」出店

 「今回、初めてこの場に来ました」。

 そう嬉しそうに語ってくれたのが、釣具のキャスティングだ。釣り好きな人の間では、知る人ぞ知る名店。全国にリアル店がある。とは言え、ネット通販は後発である。

 彼らはいう。ネットが浸透して、買い物がシームレスになった。だからこそ、一念発起して「楽天市場」に出店を決めたのが、今から9年前で、「スポーツジャンル賞」に輝き、やっとこの場所にたどり着いた。

2.多種多様なラインナップで商品登録に苦戦

 聞いて驚いたが、釣具というのは、多種多様な商材を組み合わせて、楽しむものなのだ。一つの魚で、針の大きさが小さくて済むところと、大きくなくてはならないところがあって、一つの針でも8、9種類くらい揃えておかないと、こと足りないのだという。

 え?そうなんですか?と驚く僕は、「全商材でどのくらいあるのですか?」とたずねた。

 「そうですね、、10万SKUですかね」。え?それでは登録も大変じゃないですか。そう語りかけると、「ほんっとうに、そうでしたね」と苦笑い。9年前、これらの商品を一つ一つ、登録するところから始めたというのだから、気が遠くなる作業である。

 ただ、登録すれば売れるわけでもない。それとこれとは別である。

3.商品を整理することで実力発揮

 どんな工夫をしたのだろうか。照れくさそうに、「本当に初歩的な話だけど、検索の大事さを痛感しています」。そう語ってくれた。

 例えば、検索した時に、どうすれば、釣具のキャスティングの商品が出てくるのか。カテゴリーやメーカー名を改めて整理し直した。また、商品名一つとっても、カタカナ表記がいいのか、アルファベット表記がいいのか、議論を重ねた。

 その正解はわからない。だから、常にトライアンドエラーを繰り返す日々だったという。

 でも、この話、初歩的な話と言いつつ、非常に重要なことだと僕は受け止めた。

 思うに、リアルというのは商品管理が杜撰になりがち。だが、それを登録していく過程で、彼らはその整理をすることに価値を見出したのだと思う。なぜなら、カテゴリーなど「楽天市場」内でのSEO効果を考えると、商品を整理して的確に配置し、そして的確な商品名をつけなければならないからだ。

 それはお客様から自分がどうみられたいのかを“整理”することになる。

 だから、聞いていて思ったのは、そうすることで各々の商品の役目が明確になったのだと思うのだ。結果、自らの付加価値を「楽天市場」内で発揮したのだというわけだ。 

4.シームレスにお客様対応を

 そして、大変な作業を精神面で支えていたのが、お客様への想いである。

 さきほど、「シームレスに」と書いた通り、リアルとネットの相互の利用で、お客様の満足度を高める工夫に尽くしてきた。もっと使いやすいお店であろうと。

 それゆえ、彼らはメール対応一つでもその姿勢が見られる。竿が折れた、リールの交換など、多種多様な問い合わせに対しては、実店舗でのやりとりを思い返した。それと変わらぬ、丁寧な説明を心掛けた。

 わざわざ実店舗に通うことなく、それができることの利点こそ、ネットにあると思ったからだ。

 時に、住所を調べて、近くの実店舗を案内して、そこと連動して、そのケアに当たったこともあると。その積み重ねが、ひとつ,また一つと成果につながって、この日、初めての舞台にたどり着いた。「釣具ってニッチなカテゴリーですよね、だから、認められるところまでこれたのかな」。そんな風に本当に、嬉しそうな顔つきをして語るのである。

ネットだから気づけた古本の価値 VALUE BOOKS

1.就職できないと嘆く創業者の運命的なスタート

 ニッチといえば、確かにネットは小さな可能性を見逃さない。

 VALUE BOOKSという店舗こそ、ネットならではの躍進の仕方である。元々、創業者は「自分は就職など向かない。」そう嘆く中で、偶然、自宅にあった書籍を売って、思いがけず、売れたところから、この商売が始まった。つまり、古本を販売したのである。

 その創業時の話にリアリティがある。そうやって自分の本が売れたのを見て、自ら街のリユースショップに行ったのである。何をするかって?勿論、そこで本を買い集めて、売るために。それがまさか当たった。売っているうちに、それがビジネスとなり、それが会社となって、今に至るのである。

 だから、今は楽天ブックスのチラシで買取などを呼びかけるなどして、本を集めてそれを販売するというサイクルが生まれている。わからないものだ。

2.流されることなく自分たちに必要なことを

 今やそれは現場の手に任されており、そこでも色々試行錯誤を続けたという。最初のうちは、楽天市場の他の店舗のように、トレンドに乗って、バナーなどでアクセントをつけていた。でも、それが、自分たちのポリシーとは違うような気がして、変えていくことになる。

 むしろ逆で、シンプルな作りにして、商品を探しやすくしていくことの方が大事だと思い始めて、今に至るという。何気なく、見えるその顧客への配慮は、会社の姿勢もあるのだろう。彼らは、ブックバスという企画をやり続けている。本屋のない地域に自らバスを走らせ、その地方で本を手に取ってもらい、買ってもらうというものである。あらゆる人に、本を身近に感じてもらうための気持ちが溢れている。

 そういう姿勢の一つ一つが店への信頼へとつながっているのだろう。古本というジャンルゆえの利点もありながら、リピート率は40%を超えるという。思えば、よくできた仕組みだと思う。というのも、古本を売るというよりは、本を読むというサイクルを作り出しているわけである。

 だから、恐らく古本を買って、本を読み、読み終えたらそこで買取をしてもらい、また古本を買って、という循環を生み出しているのだろう。だから、その生活習慣に溶け込めば、そのリピート率もうなづける。

 そして、今日のこの舞台である。彼らは「CD・DVD・本ジャンル賞」を受賞したのであって、お見事。どこにビジネスがあるか、本当にわからない。

人の顔が見えるお店であるために 靴のニシムラ

1.家業は厳しさを増していた

 様々な試行錯誤と苦労の上に、結果が伴ってくるものだ。一つ一つ積み上げてここまできたのが「靴のニシムラ」だ。彼らは街の小さな靴屋である。そもそも家業が靴屋であったけど、状況は厳しく、このままでは、店は立ち行かなくなる。そんな危機的な状況が漂う中で、「楽天市場」に出店をしたのである。

 ただ、変な言い方だが、窮地だったことが奏功した部分もある。代表取締役の西村拓朗さんは、だからこそ、「好きなようにやらせてもらえた」と。やるだけやったらいい。それでダメなら仕方ないと。それが今から15年前。拓朗さんはなんと二十歳の時であった。

2.嵐のスタート クレームも少なくなかった

 それこそ最初はクレームの嵐。「サイズが合わないとかですか?」。僕がそう聞くと、「いやいや、そんな程度ではありません」と。

 手で出品管理をしていたので、商品管理が徹底できていなかったのだ。いざ「出荷しよう」とした時に、、、、、靴がない。そんなことは少なくなかった。

 そして、時代もネット通販に対しての理解が少ない時であった。彼がお客様に謝るその言葉にも、辛辣な言葉が飛ぶ。「お前の店舗は詐欺店舗か?」と。

 それも仕方ない。恐る恐るお客様がネット通販を利用して、そのようなことが起これば、「やっぱり!そら見たことか」となる心理も理解できる。

 でも、お客様に罪はない。その原因は自分にあるのだから。当時は、誠心誠意謝った。それでもその一方で深夜、寝る間を惜しんで商品登録をし続けた。何が心の支えになったのか。そう僕がきくと、こう答えた。

「楽しかったんです」

 勿論、苦しいこともあった。けれど、それ以上に楽しかった。家業のお店が厳しかったのに、それがネット通販をやるほど、右肩上がりの売上が築かれていく。自分の切り開いた道が広がって、もしかしたら、家族皆のご飯をこれで食べさせていけるのかもしれない。そう思えたことが何より嬉しかったのだ。

3.できることは人間味のある人の顔が見える接客

 とはいえ、簡単なことではなかった。なぜなら、彼らが扱う靴にはナショナルブランドが基本、存在しない。敢えて、中小企業が手がける靴に焦点を当てて、商売を組み立てていた。そこには近隣の地元へものづくりへの愛もあった。だから、一体となって靴を通して、笑顔を届ける努力を重ねてきた。

 その愛は、認知に優る信頼を獲得していくことになる。近隣だけではなく、全国のユーザーに。

 彼らのお客様とのやりとりには繰り返すが、愛がある。同梱物には、チラシを入れることにしているそうだが、そのチラシに少しもセールス的な要素はない。

 むしろ、社員の様子や地元の行事の内容、そういうその地方に集まる全ての魅力を詰め込んだのである。恐らくお客様とは靴でつながっているのだけど、それだけではなく、地元の人の温もりと一緒に受け止めたことで、多分、ナショナルブランドに匹敵する価値を感じているのだろう。

4.今この15年で受賞して、だから原点に立ち返る

 そして、同時に靴のサイズ交換なども無料で行うなどの配慮も忘れない。「だって、僕も買う時に、それは機になるから。そういうことで不安な気持ちにさせたくない」と。

 そういう一つ一つの積み重ねなのだろう。いつしかそれは社員とお客様との距離を近づけた。何より、リピート率の向上へと繋がって、継続顧客が店の屋台骨を支えるようになってきた。

 そして、ここ最近はその生産性の向上に努めて、それにより生産管理を徹底し、配送面に至るまで配慮することを惜しまなかった。逆に言えば、商品管理が徹底できていなかった時代を知っているからこそだ。それが繋がる上での最低限の礼儀だと。だから届ける為の当たり前の工夫と、気持ちのこもったアプローチは、セットとなって、お客様からの信頼となった。

 そして、彼らは今年、「靴ジャンル賞」に選ばれた。だけど、彼らはなお一層のお客様との触れ合いを大事にしたいとこれからの抱負を語る。なぜなら、それがこの店を支えてきたことを15年経って、改めて思うからである。改めて、その受賞は、彼らスタッフ一同の想いと努力と、お客様とで育んできた軌跡によるものだと痛感したのである。

 たった3店舗でもこれだけの想いと実績がある。恐らく全ての店舗にそれらはあるだろう。そして、それぞれの物語は、これからの未来へと続く。

  改めて、ここに書ききれなかった全ての店舗にも、お祝いの言葉を述べたい。本当に、おめでとうございます。2023年も晴れやかな結果につながりますように。

 今日はこの辺で。

◆総合賞

 

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