富士ロジテックが挑む「医薬品通販」物流支援──デジタル時代の新たな風を起こせ

昨今、社会全体で「デジタルシフト」が進み、ネット通販の世界もますます拡大・多様化している。その中でいま注目されるのが「医薬品通販」である。一般消費財などと異なり、薬機法(旧薬事法)による規制が厳格。そのため、これまで参入障壁が高いとされてきた。しかし、そうした環境を打破すべく、株式会社 富士ロジテックが新たな一手を打ち出している。
富士ロジテックは、創業以来100年以上にわたる。だからこそその倉庫事業の知見を活かし、「医薬品通販の発送代行サービス」を本格的にスタートしたのだ。それにあたり、複雑な法規制や物流体制の整備を一括で支援する。そうすることで、企業が医薬品通販事業を展開しやすくする仕組みを整えた格好だ。いわば、医薬品通販のハードルを大きく下げる可能性を秘めたサービス。だから、着目したのだ。
医薬品通販と物流アウトソーシングの課題
改めて、医薬品の通販を行うにあたり、最大のネックとなるのは何か。薬機法をはじめとする厳格な規制である。
とくに外部に物流をアウトソーシングする場合、倉庫業者が必要な各種許認可を取得しているかが重要なポイントとなる。
一般用医薬品の中でもリスク分類の高い医薬品は、薬剤師による販売管理が必須。そうした特殊要件から、「医薬品の通販は自社管理で対応しなければならない」という印象が強かったのだ。
富士ロジテックが示す解決策
ところが、富士ロジテックは以下の特徴的な取り組みで、この常識を変えようとしている。
1. 医薬品通販に特化した専用出荷センター
• 今年度、医薬品店舗販売業許可を取得した専用出荷センターを開設。空調完備と高いセキュリティを備えた施設で医薬品を保管し、発送代行業務を実施している。
2. 医薬品店舗販売業許可を所持
• アウトソーシング先の倉庫にも薬機法に基づく業許可が求められる中、富士ロジテックは「医薬品店舗販売業許可」を取得。さらに「特定販売申請」も行うことで、一般用医薬品通販の発送代行を実現した。
3. 出荷センターに専任の薬剤師が常駐
• 第1類医薬品のように、薬剤師による管理が必要な商品も扱える体制を構築。登録販売者では対応が難しい医薬品までカバーし、より幅広い医薬品通販ビジネスを可能にしている。
4. 創業以来の物流知見をフルフィルメントに投入
• 受注・決済・ピッキング・配送・カスタマーサポートなどのフルフィルメントは、もともと富士ロジテックが得意とする倉庫業務の強み。加えて、医薬品特有の扱い方や規制への対応が融合することで、安心かつ効率的なサービスが提供される。
5. 防火・安全対策を徹底した信頼の環境
• 倉庫管理主任者を選任し、防火・安全体制の確立が義務化。リスクに対して盤石の備えを整え、顧客企業だけでなく消費者も安心できる環境を築いている。

物流インフラがもたらす「新しい市場」への扉
従来、医薬品通販は規制の厳しさから、企業にとって踏み込みにくい分野だった。しかし、こうした物流インフラの整備によって、「自ら物流機能を持たない企業でも医薬品通販を始められる」道が開けることがどれだけ大きいか。
ネット通販が健康用品や医薬品といった“命や健康に関わる”商品も扱うようになれば、その利便性は大幅に向上するだろう。
実際、デジタルシフトによる生活様式の変化を考えると、通院や薬局への往復が困難な方々にとっては大きな助けとなる可能性があるのだ。
デジタル化と規制のはざまをどう乗り越えるか
医療や医薬品の分野は、消費者の安全と直結する。それだけに、法規制が厳しく、なかなかデジタル化が進みにくいのが現状である。
しかし、ルールの範囲内で利便性を追求することは十分に可能。そのためにはインフラの整備と企業のチャレンジ精神が欠かせないのである。例えば、処方せん薬の自宅配送など、より高度なサービスの展開にはさらにハードルがある。だが、今回の富士ロジテックのように、まずは「一般用医薬品通販」の物流アウトソースを可能にすることが大きな第一歩と言えよう。
今後に期待したい「信頼される医薬品通販」市場の拡大
これまで嗜好品や日用品が中心だったネット通販。だが、医薬品などの健康に関わる分野でも利用できるようになれば、消費者にとっては選択肢が増え、日常の利便性も向上するはず。
さらには、オンライン診療や処方せん薬の流通など、医療の世界にも新たな可能性が生まれてくるだろう。
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富士ロジテックが切り開いた医薬品通販の発送代行サービスは、まさにデジタル時代のニーズを受け止めるための起爆剤になるかもしれない。
今後、こうした試みによって「医薬品通販」が社会に広く受け入れられ、“安心・安全”と“利便性”を両立する新たなマーケットとして確立していくことを期待したいところである。
今日はこの辺で。