世界の小売業ランキング 2021 Amazonが世界第2位に ネットシフト顕著
毎年、世界の小売の実態を知る上で、判断材料となる「 世界の小売業ランキング2021 」がデロイト トーマツグループによって発表された。これは、2020年6月30日までの会計年度(2019年度)において世界の小売企業上位250社を調査し、同社がそれらの企業に対して地域および商品セクターの観点から分析を行い、現時点の小売を把握し、次の時代を予測するヒントとするものである。
世界の小売業ランキング 2021 Amazonの成長率
まず最初に、2019年度(2020年6月30日までの会計年度)での上位200社の傾向を見てみることにしよう。注目すべきは、遂にAmazonが世界の小売業ランキングの第2位となったのである。
Amazonの2019年度小売の売上高は1584億3900万米ドルで、その躍進ぶりは2019年度の小売りの売上高成長率が見れば一目瞭然。例えばウォルマートが1.9%増、コストコが7.9%増というところでAmazonは13.0%増である。トップ10の企業名に変化はなく、順位が変わったのはこのAmazonのみである。なお、Amazonがランキングに登場したのは、2015年で毎年順位を上げてきた。
上位3社に対しての分析
さて、デロイト トーマツグループがこれらの上位の企業を洗い出したところでそれぞれの企業の最近の推移に関して分析したものが下記である。
一位のウォルマートはオムニチャネル戦略を拡充し、米国、カナダ、メキシコ、中国で、配送や店舗受け取りのプロジェクトを立ち上げている。2020年9月にはメンバーシッププログラムとして、ウォルマート・プラスを開始して、無制限の無料配達、アプリでバーコードをスキャンすることで、レジを利用せずに買い物ができる「スキャン&ゴー」などの提供をしてその裾野を広げようとしている。
Amazon 会員サービスをフックに食料品も強化
そして第二位のAmazonは前年度に続き、2019年度も上位10社の中で最も高い13%の小売売上高成長率を記録し、これによりコストコを追い抜く格好となった。小売売上高の伸びは、商品の配送料の値下げ努力、有効在庫の充実と、品揃えの拡充とが後押ししたものと思われる。なお、この数字はマーケットプレイスおよび、物流にかかる料金、その他小売以外の売り上げを小売売上高から除外したものである。
小売企業の買収などを行わなかった分だけ、テクノロジーやノウハウの取得に充てられた。その純利益率は昨年度よりも若干下がったものの、上位10社の中で二番目に高い4.1%という内容である。
なんといっても、プライム会員サービスと配送サービスに投資をしており、今年度の有料プライム会員数は全世界で1億5000万人あまりとなっており、特にブラジルで2019年9月からそれを開始して、急速にその勢いを伸ばしたとしている。
なお、Amazon freshとwhole food Marketの食品配達注文は、第4四半期に対前年同期比の2倍以上の伸びを見せていて、限りなくAmazonがそのプライム会員の制度を背景に、普通に人々の日常に浸透していると言って良い。ちなみに、Amazon freshを利用した配送サービスは以前、1ヶ月14.99米ドルの有料だったが、現在はプライム会員の特典として無料になっているのだ。
リアルをネットに活かす動きが成長に
3位はコストコであり、Amazonに抜かれはしたものの彼ら自体は健闘している。というのも、小売売上高成長率は上位10社の中で三番目に高い7.9%の伸びである。既存店売上高は6%増であり、米国に16カ所、初上陸した中国を含め、国外に4箇所倉庫型店舗を新設したことが、成長に寄与したという。また、既存店売上高には、購買頻度と客単価の増加のほか、既存のECの売上高が23.1%増加したことも注目に値する。
これを見ても分かる通り、世界的に見れば、小売において今やネット通販での販売にとどまることなく、その売り方(会員制など)とインフラづくりまでトータルで考えていかずして、売上増は見込めなくなっている。
ちなみに、日本企業でトップ250入りした企業数は昨年より1社減の28社。最上位は14位にランクインしたイオンであり、また今回、株式会社ヤオコーが初めて249位にランクインを果たしている。
コロナ禍でECの伸びが際立つ
分析は最近のものまで及んで説明しているものの、数値に関しては2020年6月30日までの会計年度なので、来年のランキングにおける数値では新型コロナウイルス感染症の影響がもっと強く反映されているものと思われる。
ただ、同社がこのランキングの発表に準じて、下記のようなデータを明らかにしていて、いずれもECの伸び具合が尋常ではない。例えば、英国ではオンライン小売売上高2020年1月の19.5%から2021年1月には35.2%増に急増。ドイツでは、2020年下期の食料品のECの売上高が前年同期を約90%増加。
米国では小売売上高に占めるECの割合が2020年第1四半期の11.8%から第2四半期には16.1%に拡大。中国では小売売上高に占めるECの割合が2019年8月の19.4%から2020年8月には24.6%に拡大。
新型コロナウイルスの感染拡大が起こる前から、世界の小売トップ企業においてはネット通販の強化していたことがわかる結果であり、その準備は感染拡大とともに、彼らにとっても利する結果になったのではないか。
ただ、逆に言うと、それら以外はネットへの対応が徹底されていたとは言いがたく、サービス業など、大きくダメージを受けたものと言え、トップはトップたる所以、先を見越した投資をしていることがわかった次第である。
今日はこの辺で。