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躍動するAKIRAの文化 SHIBUYA TSUTAYA ポップアップショップとDJイベントで“感じる”世界

 もはや、マンガやアニメという範疇を超えて、文化である。この日、僕は、SHIBUYA TSUTAYAにいた。というのも、大友克洋プロデュースのリミックスアルバム『AKIRA REMIX』と書籍『OTOMO THE COMPLETE WORKS』の第二期発売を記念して、『POP UP STORE』と『DJイベント』が開催されたからである。

大友克洋プロデュースのリミックスアルバムと書籍の発売記念

 このイベントは、二つの側面がある。一つは、ポップアップショップ。一ヶ月に渡り行われ、このイベント限定の商品もある。そして、もう一つは「DJイベント」。そちらは1日限定。事前予約をした人にのみ、その鑑賞が約束されている。

 僕が行ったその日は、DJイベントも開催される日。ゆえに、AKIRAの威力を目の当たりにすることになったのだ。

 そもそも『AKIRA』(アキラ)とは、何か。一言で言えば、大友克洋さんによるSF漫画。1982年から1990年にかけて連載された。第三次世界大戦後の荒廃したネオ東京を舞台に、超能力を持つ少年アキラを巡る争いを描いている。アキラは、政府の秘密実験によって生まれた存在であり、その力が暴走した結果、東京は壊滅的な被害を受けた、、、という具合。その後、劇場アニメ化され、それらもブレイクすることになる。

 作品の内容もさることながら、そのアニメーションにおける技術や読み手を惹きつけるその手法。それが革新的なので、今に語り継がれる。だから、冒頭に書いた。文化であり、アートに近いのだと。

 また、作中で流れる無国籍を思わせる音楽もまた、格別。そのアニメの印象を強く焼き付けるのに大きく寄与した。

音楽シーンにも影響を及ぼすAKIRA

 その音楽を手掛けたのが「芸能山城組」。そこを起点に作品として、CDなどで世に送り出したのが「Symphonic Suite AKIRA」である。

 更に、昨年の池袋ミクサライブ、大阪パルコギャラリーでの「AKIRAセル画展」を契機に、リミックス制作が始まったわけである。

 そして、リミックスにあたり、大友さんが選出したのは、久保田麻琴さん、小西康陽さん、蓜島邦明さん。それによって産声を上げた作品が『AKIRA REMIX』である。AKIRAという作品の持つポテンシャルは、令和の時代でもまだまだ、掘り起こされて、影響を及ぼすわけである。

 そんなこともあり、DJイベントに華やかに登場したのは、久保田麻琴さん、小西康陽さん、蓜島邦明さん。一方で、日本を代表する著名な音楽家であるからこそ、聞けばわかる圧巻のライブ。会場内の人たちは、自然と体を小刻みに動かし始める。とにかく、そこはすごい熱狂である。

AKIRAが引き寄せた豪華な顔ぶれDJイベント

 下記写真の奥にいるのが、蓜島邦明さん。彼の音楽キャリアは多岐にわたる。例えば、テレビドラマ、映画、アニメ、CMなどで楽曲を提供し、その数は数千に及ぶ。特に『世にも奇妙な物語』シリーズのテーマ曲「ガラモン・ソング」で知られていて、同イベントでも、それが流れるパフォーマンスも。そりゃ、沸くに決まっている。

 この奥にいるのが、小西康陽さん。1985年に結成されたバンド「ピチカート・ファイヴ」での活動で知られ、独特なサウンドとスタイルが特徴。渋谷系の音楽シーンでも知られる、著名な人物。近年はリミックスなどの音楽の活動のほか、映画評論、コラム執筆など多彩に活躍の場を広げている。

 こちらが、久保田麻琴さん。サイケデリックなトリップ感を醸し出すフォーク・ミュージックを得意とする。彼らしい一面としては、沖縄や徳島など日本各地の伝承歌や伝承芸能の記録を続けていて、活動は多岐に及ぶ。

SHIBUYA TSUTAYAがその空間の演出を力強く後押し

 この豪華なメンツを後ろからバックアップしたのが、SHIBUYA TSUTAYAの存在。

 このライブはSHIBUYA TSUTAYAの1階SHIBUYA IP SQUARE (SIPS) Aエリアを利用。つまり、スクランブル交差点に直結する一等地である。ここには元から巨大ビジョンが用意されている。だから、それを活かすべく、この日のために大友さんが用意したというAKIRAの特別映像を映して、来場者を圧倒したのだ。

 結果、人の圧巻のリミックスとその映像の妙に、観客は酔いしれる。同時に、AKIRAの価値を噛み締める。そしてAKIRAの凄さは、一級のリミックスミュージックが、見事に調和していること。

 文化だと評した所以である。

 要するに、あらゆる価値観を吸引していくのが、AKIRAなのだ。思えば、作家、大友克洋さんが監督をして、劇場版のアニメーションが公開されたのは1988年。今から35年も前の話。なのに、AKIRAは少しも色褪せる気配がない。それはこのような部分に起因するところにありそうだ。 

 さて、ここまで書くと、AKIRAの持つポテンシャルがどれほどか。もう、お分かりいただけるだろう。それを踏まえて、ポップアップショップを見ると一つ一つの光景とその現象が納得できるはずだ。

ファンの熱量が伝わるポップアップショップ

 ショップがあるのは、SHIBUYA TSUTAYAの地下1階。

 SHIBUYA IP SQUARE (SIPS) Bエリアと呼ばれる箇所。エスカレーターを降りて、目に入ってくるのは、壁づたいに描かれたファンの直筆のメッセージである。

 社会に問いかける強い主張が、漫画にも、映画にも、「AKIRA」には存在する。だから、自由に描かれた“壁画”は、その作品のイメージによく合致しており、違和感はない。

 ファンはとにかく絵が上手く、それは、描き慣れていることの裏返し。きっと“擦り切れるほど”読み、観たに違いない。また、そこで添えられた言葉を通して、ファン同士のコミュニケーションが生まれている。何もかも愛なしには語れない。

 最初、真っ白だった“キャンバス”は、わずか4日ほどで、AKIRA色へと塗り変わった。それだけでも、AKIRAのファンの並ならぬ熱量を感じるだろう。

 ショップでは、リミックスアルバム『AKIRA REMIX』や、書籍『OTOMO THE COMPLETE WORKS』のほか、昨年の「大友克洋全集AKIRAセル画展」で販売されたグッズも取り揃えられている。また、特別にデザインを施したオリジナルポスターの販売もあった。この流れで、没入すれば、それは手にとって深掘りしたくなるのも自然だろう。

作品の世界観ゆえ、アティスティックでもある

 グッズ売り場というより、ミュージアムのよう。

 例えば、映画『AKIRA』の中では、鉄雄が夢の中でナイトベアに襲われるシーンがある。このシーンは、鉄雄の精神的な不安定さと彼の力の暴走を象徴している。ファンの中でも印象に残っている名場面である。

 だからこそ、ここには、そのナイトベアを模した巨大なディスプレイがある。

 パッと目を引く、この演出。その足元には、この作品の貴重なセル画が並んでいる。

 買う買わないに関係なく、作品に浸れる箇所が用意されている。作品のリアリティとファンの熱量。それらが混在して、自らの気持ちの高まりと共に、グッズの購入へと誘うわけだ。

 そうなると、グッズもアーティスティックになる。ご覧の通り、クリアファイルもミュージアムグッズのようだ。

 言うなれば、収納して使うというより手軽に飾れるインテリア。そう言っても良い仕上がりだ。

ファッション、音楽あらゆる価値を吸引し、なおも輝き続ける

 当然、先進的なイメージは、服飾系アイテムとも相性が良い。

 アパレルブランドnana-nanaとのコラボレーションを果たした。特にトートバッグは早い者勝ちになっている。Tシャツについても、会場でサイズ確認後に受注予約できるようになっている。つまり、限定感が高まったグッズもまた、この熱狂に花を添えるわけである。

 そして、『AKIRA REMIX』のCDを購入したお客様には、先着順で特別なジャケットステッカーがプレゼントされた。購入して良かったと思わせる演出も巧みである。全てが連携し合い、その世界観を“感じて”浸れる工夫がなされているのである。

 改めて、マンガやアニメという範疇を超えて、文化であると思う。

 かくして感じて、手にとって、足を踏み入れた人を満足へと至らせる。まさに、エンターテイメントの真骨頂だ。

 あらゆる価値を吸引し、AKIRAのフィルターを通して、さらに魅力的に引き立てる。そして、関わる人の心に刺激を与え続けていく。まさに、この『AKIRA REMIX』イベントは、大友克洋さんの作品を愛するファンのみならず、一人一人が輝く最高のステージである。何年経っても、新しいAKIRAの世界は、令和の時代にも燦然と輝き、人を魅了し続けているのである。

 今日はこの辺で。

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