“平成レトロ”再燃!想いをつなぐファッションブランドの新たな可能性

想いのこもったファッションブランドは、不思議といつまでも人の心に焼きついている。トレンドが移り変わっても根強いファンが存在し、時代を超えて愛され、発展を続けることも少なくない。実は、こうしたブランドが持つ“世代を超える力”に、大きなビジネスチャンスが潜んでいる。特に、30代以上の女性にとってなじみ深いブランドは、若い世代から上の世代まで一貫して支持を得やすい傾向にある。
たとえば「ANAP」というブランドをご存知だろうか。
ANAP――今も昔も変わらず愛されるブランド
1992年に創業したANAPは、もともとガーリーな雰囲気のレディースブランドとしてスタートした。

しかし、そこから姉妹ブランドの「ANAP GiRL」を誕生させるなど、世代の広がりに合わせて柔軟に進化。現在のANAP本体は大人びた洗練されたテイストを展開。さらに母親世代となったファンを意識して「ANAP KIDS」も展開するなど、ブランドの世界観を幅広く展開しているのだ。
実際に利用者の年齢分布を見ても、25〜29歳が17.3%、30〜34歳が23.1%、35〜39歳が22.9%と非常にバランスが良いことがわかる。
これはターゲットをしっかりと見据えながら、上手に進化してきた証拠と言えそうである。
さらに同社はリアルショップに加えてオンラインストアの展開にも注力。
ファンの裾野を広げると同時に、ブランドの認知度を高めています。ファッションブランドとして息が長く、売り場もしっかり確保できている。だからこそ、メーカーに対してライセンシーの獲得を呼びかけるなど、新たなビジネスモデルにもチャレンジできるのである。
売り場が確実に存在することは、メーカーにとってリスクの軽減につながるのもポイントである。
BETTY’S BLUEは2021年に復活
こうしたブランドの“世代を超える力”は、近年SNSの普及によってさらに加速している。
大々的なマスマーケティングを行わなくても、熱い思いを持つファンがSNSで拡散し、ファッションシーンを再び盛り上げるケースが増えているのである。
実際、一時代を築いたブランドの中には休止から復活を果たすところも出てきている。
たとえば2021年に復活を遂げた「BETTY’S BLUE」も、もともとは1985年にスタート。“キュート&ラブリー”をキーワードに平成ファッションを牽引した代表的なブランドでした。
2009年に惜しまれつつブランドは休止していたが、コロナ禍で「いまできることは何か?」を模索したアパレル企業・株式会社キャンが、このブランドの再始動を決断。

オンラインストアを中心に展開を開始し、昔からのファンだけでなく新しい世代からも注目を集めている。
キュートで愛らしいデザインは、洋服だけでなく雑貨としても映える魅力があり、いま大人になった“かつてのファン”の心をもう一度掴むことを意図した戦略がうまくいっているようである。
オンラインストアの台頭が生む“再ブレイク”の可能性
思うに、かつてファッションブランドが大きく成長するには、テレビCMや雑誌広告などを使ったマスマーケティングが欠かせなかった。
しかし、近年ではオンラインストアを中心に、小規模でも“熱量”の高いファンに商品を届けられる仕組みが整ってきていること。それもプラス要因ではないか。
特に、過去に人気を博したデザインやブランドは、当時を知るファンの記憶と、SNSで拡散される「レトロ可愛い」などの新たな評価が相まって、再び注目を浴びる傾向が見られる。
オンラインストアを活用すれば、大量生産や大規模な在庫リスクを抱える必要がない。
限定数のアイテムからテスト的に販売を始め、ファンの反応を見ながらスケールアップできる点は、かつての大掛かりな店舗展開とはまったく異なるメリット。さらに、SNSを通じてファン同士が交流しやすくなったことで、ブランドに対する“思い入れ”が自然発生的に広がりやすくなっている。
このように、オンラインとSNSが普及した今の時代だからこそ、昔ながらのデザインやブランド価値が新鮮に映り、もう一度スポットライトを浴びる土壌ができあがっている。一見ニッチな層に向けた展開であっても、そこに確かな熱意とコミュニティが存在するならば、十分にビジネスとして成立し得るだろう。
まとめ:懐かしさを超えたビジネスチャンス
世代を超えて愛されるブランドは、もはや懐かしさだけにとどまらず、新たな価値を生み出す原動力となっている。SNSの進化により、一度は歴史の中に埋もれかけたブランドが再評価され、“復刻ブーム”としてマーケットを再びにぎわせているのである。
とはいえ、ただ懐かしさを前面に押し出すだけでなく、現代の消費者ニーズに合ったアップデートやSNSを活用した情報発信など、戦略的な取り組みが不可欠。そこにこそ新しいビジネスチャンスが潜んでいる。
ファンの熱意とブランド側の柔軟な発想がかみ合えば、世代を超えた“ファッションの物語”は今後も広がり続けるだろう。
今日はこの辺で。