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接客によるAI革命──スタッフスタート「オムニチャネル接客」が変えるリアルとECの未来

 僕なりに言えば、それはまさに接客によるAI革命であると感じた。先ほど、バニッシュスタンダードの記者会見にて、「スタッフスタート」の新サービス「オムニチャネル接客」について説明を受けたのだが、その内容を聞きながら強くそう思ったのである。

  では、それはいったいどういうことなのか。

1.スタッフスタートが示す“人に光を当てる仕組み”

 そもそも「スタッフスタート」とは、リアル店舗で働くスタッフ一人ひとりに光を当てる仕組みである。現場で培った接客の知見をウェブ上のお客様にも活かすことができるようにしたものであり、いまや全国で27万人ものスタッフが活用している。

 さらに驚くべきは、同サービスを通じた流通総額が2091億円にも達しているという事実である。

 ただ重要なのは、単に売上をつくることではない。

 スタッフを通じて全国のお客様に価値が届けられ、その過程で一人ひとりの才能が最大化され、インセンティブとしてきちんと給与に還元される点にこそ意義がある。スタッフスタートはオンライン接客として脚光を浴びてきたが、いま小野里社長が描いているのは、それをさらに発展させ、リアルの売上にも波及させようという構想なのである。

 つまり、これこそが「オムニチャネル」と呼ぶ所以である。

 では、その仕組みはいかにして機能するのか。結局のところ、リアルとオンライン双方の価値を結びつけている要因は“人”に起因する。スタッフスタートによって蓄積されてきた顧客とのやり取りは、基幹システムのデータと統合され、店舗を訪れるお客様への接客に直接活かされていくのである。

2.リアル店舗の価値を問い直す時代背景

 小野里社長の話を聞いていて、なるほどと思わされたのは、確かにリアル店舗で培われた接客の知見をオンラインに活かすことで、スタッフ個人の才能を伸ばすことはできても、それだけでは直接的にリアル店舗の売上向上には結びつかないという点である。

 そこでバニッシュスタンダードが新たに踏み出した意味は、これまで「スタッフスタート」で積み上げてきた仕組みを逆方向に活かし、リアル店舗の価値を底上げしようという逆転の発想にある。

 そして、その両者をつなぐ要となるのがAIなのである。

 そしてAIが力を発揮するための基盤となるのがCRM的な発想である。

 スタッフスタートがウェブ上で築き上げてきた顧客との関係性は、単なる購買行動の記録ではなく、その後のリピーターを生み出すほど深い絆へと発展しているからである。

 つまり、スタッフスタートは、まるでリアル店舗で接客しているかのように、きめ細やかでパーソナルな関係性を築くからこそ、顧客は愛着を抱き、やがてファンへと育っていく。

 その延長線上に、「この仕組みをリアルの現場にも持ち込めないか」という発想が生まれるのである。

3.オムニチャネル接客がもたらす体験

 そこでAIが機能する理由は明快である。

 デジタルならではの強みとして、パーソナルなデータを瞬時に呼び出し、最適な提案をスタッフに指南できるからだ。

 ここで重要になるのが彼らのいう「AI顧客カルテ」である。

 かつて販売員は紙の顧客カルテに手書きで情報を残していたが、PCに移行しても入力や管理の煩雑さから、リアルタイムの接客には活かしきれないという課題があった。AI顧客カルテはそれを一新し、スマホを通じて接客の記録を即時に蓄積し、次回以降の接客に活用できるようにする。

 顧客がQRコードで自身を示せば、その瞬間に過去の接客履歴や購買データが整理され、AIが最適な提案のヒントをスタッフに提示する。紙からPCへ、そしてAIへ──カルテの進化が、スタッフの力を後押しする新しい仕組みとなる。

4.CRM的発想が支える関係性の深化

 スタッフはスマホを手に取り、その場で顧客の痒いところに手が届く対応ができれば、自然と購買へとつながり、リアルの売上となる。ここでAIが果たす役割は大きい。単なるレコメンドではなく、顧客を特定し、その人にふさわしい提案の仕方を提示してくれる。

 だからこそ、優れたスタッフの知見が共通化され、個々の才能と組み合わさって化学反応を起こし、応用の効く高次の提案が可能になるのである。AIが提案の“70点”を保証し、人間が残りの“30点”を感性で補う。この協働こそが新しい顧客体験をつくる。さらに、接客の経験値がAIを通じて共有されれば、スタッフ全体の力量は底上げされ、組織全体の付加価値が高まっていく。

 ゆえに、彼らの言う「オムニチャネル接客」とは、まさに「スタッフスタート」なりのAI革命だと私は感じた。

 そもそも小野里社長がここまでリアルにこだわる理由には、真に顧客体験を向上させたいという思いがある。結局のところ、ECは便利ではあっても自動販売機に近い存在であり、その中でどれだけリアルに近づけられるかという問いに対する答えが、これまでのスタッフスタートによるオンライン接客だったのである。

5.才能を共通化し、接客力を底上げする

 しかし、その本質はあくまでリアルの接客にある。それが現場でタイムリーに共有されれば、リアルの顧客体験は従来を超え、より人間本位で豊かなものへと進化していくのである。

 実際、コロナ禍でECが広がったとはいえ、現状ではリアル店舗が売上の9割を占め、ECは1割に過ぎないケースも少なくない。とはいえリアル店舗は生産性の課題を抱え、縮小傾向にある。だからこそ、ECの価値をリアルに取り込み、リアル店舗の新しいあるべき姿を確立していこうという発想が求められているのだ。

 スタッフスタートの知見を拡張し、AIによって誰もが使いやすい汎用性ある仕組みへと進化させ、リアルで活用することで“リアル復権”を目指す。その挑戦があるからこそ、未来を考える上で実に面白い展開だと言える。

 今日の話を聞きながら改めて思ったのは、私たちを取り巻く環境はデジタルを取り込みながら、こうして新しい景色を次々と見せてくれるようになっているということだ。その変化を肌で感じ、未来への可能性を強く痛感した次第である。

 今日はこの辺で。

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