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中学生起業家・近藤にこるが語る「AIと教育と、わたし」──誰もが“自分らしく挑戦できる時代”の歩き方

 中学生で起業──そう聞けば、誰しも華やかなイメージを抱くかもしれない。AIを駆使し、教育に革新をもたらそうとするその肩書きは、時代の寵児のように映る。だが、EdFusion代表・近藤にこるさんと話して思ったのは、ことの本質は、そこではない。年齢に似合わぬ場数を踏んできた彼女は、驚くほど人間的である。だからこそ、彼女の語るAIは、単なる技術論ではなく、「自己を表現する手段」としての意味を持つ。また、教育について語るとき、彼女はそれを「誰かの背中をそっと押すこと」と表現する。

 彼女の存在を「特別な例外」として見てしまえば、見落とすものがある。重要なのは、こうした人材が“育っている”という事実であり、それは決して手の届かないものではないという文脈で捉えるべき。ゼロから始めた彼女だからこそ、AIの本質を直感的に掴んでおり、その視点は、むしろ大人にとって大きな気づきをもたらす可能性があるのだ。

I. 「特別」ではない人が、“始めてしまった”物語

1-1. 特別じゃない、でも確かに違った「心の反応」

 語弊を恐れずに言えば、彼女は“特別な存在”ではない。ごくごく普通の中学生である。だからこそ、そこには──多くの人が変わりうる夢の可能性があると言いたいのだ。

 もっとも、誰もが彼女と同じようになれるわけではない。そこには確かに“何か”が違っている。しかし、その違いとは、どこにあるのか。

 本稿ではあえて、起業やAIといったテーマからは距離のある地点から、彼女の輪郭を掘り下げていく。企業人でもなく、専門家でもない。ただ一人の中学生として彼女が何を感じ、どう動いてきたのかを見つめ直すことによって、読者と彼女の間に通う何か──“変わっていける可能性”のヒントが、きっと浮かび上がってくるはずである。

 では、その原点はどこにあるのか。辿っていくと、そこにあったのは、AIでも、起業でもなく──クライミングという、一見無関係に思えるスポーツであった。小学一年生のとき、偶然その存在に出会い、夢中になった。やがて父の後押しで、スクールへ行き、技術を磨いていく。今では大会にも出場するほどの実力を備えている。

 この経験の何が本質を形づくったのか。

 それは、マイナースポーツという環境にあった。競技者の多くが大人であるがゆえに、幼いころから年上との対話が日常となり、臆することなくコミュニケーションを取る力が自然と身についていた。そして、競技である以上、常に「目的」が存在し、それに向かって努力を積み重ねる姿勢が、早くから身体に刻まれていたのである。

1-2. 起業は“授業”から始まった──共感が扉を開く

 さて、起業というテーマがどこから登場するのか。それは学校で行われた授業である。学校側が用意した起業プログラムに参加する中で、彼女はその世界に強く惹かれていった。

 話を聞くうち、それがクライミングと繋がってくることに気づいた。起業もまた、同様に、そこには明確な「目的」が存在し、しかもその達成のために仲間と協力して挑むという構造があった。彼女は、そのプロセスに胸が高鳴ったという。

 企業経営者の一人として、僕自身も共感を覚える。何か新しいものを生み出し、それを誰かとともに形にしていく過程には、確かな喜びがある。そして、その達成がもたらす充実感は、言葉にしがたいほどである。

 こうして、起業の魅力に出会った彼女は、学校の枠を越え、さらに外の世界へと関心を広げていく。

 企業という存在に興味を抱き、実際にその現場に足を踏み入れるようになった。その背中をそっと押したのは、学校の先生方であった。内に芽生えた好奇心を尊重し、彼女を外へと導いたその環境もまた、彼女の成長に大きな影響を与えたと言えるだろう。

II. 起業とAI、その二つが自然に重なっていくまで

2-1. 起業とAI、自然に生まれたふたつの軸

 学校の外へと一歩を踏み出した彼女は、起業家たちの集まりに参加し、やがてイベントのモデレーターなどを務めるようになる。その過程で出会ったのが、AIという存在である。

 ここまでの流れからも明らかなように、彼女の中では「起業」という興味の軸がすでに回転を始めており、その中にごく自然な形で「AI」が入り込んだ。以降、彼女にとっての起業とAIは、両輪となって動き出すことになる。

 その上、現代において、AIはまだビジネスの現場で“手付かず”の部分が多いだからこそ、その未知の領域に対して、彼女の抱く起業への関心は、極めて親和性が高かった。ある意味で、それは“運命的”な出会いであったとも言える。

 彼女は学校内でも起業部を立ち上げ、AIをきっかけにさまざまな場に呼ばれるようになっていく。そして、自然な流れの中でAIを自らの手で扱い、自在に活用するまでに至る。

 ただし、誤解してはならないのは、彼女がはじめから「崇高な志」や「ビジョン」を掲げていたわけではないという点である。目の前にあることに懸命に取り組む中で、AIと起業という二つの要素が、結果として結びついていったに過ぎない。

2-2. 教える経験が、教育の意味を変えた

 彼女の語るテーマは、さらに本質的な領域へと踏み込んでいく。それが「教育」なのだ。

 一見つながらないように見えても、彼女の過去と自然に結びついている。かつてクライミングに打ち込んでいた彼女は、上達するにつれて“教える側”に立つようになった。その経験から、伝える技術や接し方がいかに重要かを、肌で理解していたのである。

 だからこそ、彼女が今語る「教育」とは、単なる知識の受け渡しではない。世の中のさまざまな分野において、きちんと“教えることができる環境”さえ整えば、人はそれを通じて自己表現ができるようになる──そうした構造を彼女は直感的に捉えている。

 そのようにいうと、「教育」と「自己表現」は、一見すると無関係に思えるかもしれない。だが、そうではないのは、ここまでの話を深掘りすれば、わかる。あらゆる手段がAIによって可能となった時代において、AIをどう活かすかによって、個人の表現の幅は大きく異なってくる。だから、それを身につけることを、「教育」と言っているのである。

 「AI」という言葉を耳にする機会は多いが、実際には使いこなせていない場面が多い。多くの場面では検索や要約といった単純な活用にとどまりがち。

 彼女が示すのは、その一歩先である。AIを当たり前のように日常生活に取り入れ、時間や労力の壁を超えていくことで、人はより自由に、より自分らしい表現を実現することが可能になる。

III. AIと教育、その“使い方”の先にある本質

3-1. AIが導くのは、“やりたいこと”への近道である

 今では、ホームページを作成するのに、もはやプログラミングの知識は不要。そう彼女は僕に教えてくれた。AIを活用すれば、対話のやり取りだけで、十分に完成度の高いサイトを構築できる。実際、彼女自身もその仕組みを用いてホームページを制作しており、僕もそれを見せてもらったが、その完成度には目を見張った。

 僕がそこで気づいたのは、AIという存在が、目的を設定することで初めて力を発揮するという事実にある。

 たとえば、ホームページ作成ツールを使って、ただ対話するだけでサイトが完成することに、多くの人は驚くだろう。だが、それが可能なのは、「ホームページを作りたい」という目的に特化して、AIが裏側で最適に働くよう設計されているからである。

 だからこそ、専門知識がなくても、誰でも直感的に使いやすい仕組みになっているのだ。まさにここがAIの真骨頂だ。

 そして、それを受けて、肝心なのは、「何をしたいから、ホームページを作るのか」という、人間本意の目的であるという点。

 たとえば、にこるさんはそこで「Englishわーど」を作っていた。世の中の多くの人は、「中学生で起業家で、しかも英語のゲームを作っているなんてすごい!」と捉えがちである。しかし、本質はそこではない。

 彼女の取り組みには、きちんと筋道があり、それは目的があるからだ。だからこそ、彼女は「教育の意味」を自ら語り始める。AIが何を可能にするかではなく、人が何をしたいか──その動機に寄り添うのが教育である。そう気づかされる一場面であった。

3-2. 教育とは、“可能性への接点”をつくること

 つまり、これまでであれば、同じ水準のものを形にするには、相応の技術的知識や時間が必要であった。だが、今は違う。本質的には、生産性そのものよりも、「そのサイトを通じて自分が何をしたいのか」という問いに、より早く辿り着けることに価値があるのである。

 それこそが、彼女の言う「教育によって個性が発揮される社会」に通じる発想である。

 そうなると、すべての始まりは、シンプルに「知ること」と「一歩を踏み出すこと」である。だからこそ、彼女が魅了された「起業」という世界そのものを人々に知らせることもまた、教育の一部であると言える。

 知ることによって、救われる人がきっといる。彼女自身がまさにその体現者であるからこそ、その言葉には説得力がある。だからこそ、彼女が語る「教育」とは、人の可能性に選択肢を与えることなのだ──そう思わされた。

3-3. AIは、人の表現を支える日常の道具である

 その考え方の延長線上として、彼女は2025年7月下旬から、新たなスクールをスタートさせる。

 テーマは、「AIを日常的に使いこなすための入り口」である。ノーコードによるウェブ制作をはじめ、画像や映像といった分野を中心に、AIをツールとして活用する力を育む内容となっている。対象は小中学生。受講生たちは、その学びの成果を、2025年10月、大阪・関西万博において発表する予定であり、彼女自身もまた、開幕時と同じ舞台に登壇する。

 ここで重要なのは、AIの知識や操作方法ではない。「接点」を作ること──つまり、自分にもできるかもしれないという体験の入口を提供することにある。そして、それが“広がり”を生むことに価値があるのだ。

 また、彼女のこうした活動は、誤解を正すことにもつながっている。先にも述べたように、実際には大人ですら、AIを単なる検索ツールとしてしか捉えておらず、その可能性や構造を十分に理解しているとは言い難い。すると、「教育が必要なのは子どもだけではない」のかもしれない。

 こうして彼女の取り組みは、世代や地域、あらゆる格差を越えて、「教育が人を救う手段である」という本質を体現し始めている。その延長線上で、彼女が今関心を寄せているのがメタバースである。

 これは単なる“新しい技術”ではない。地方に住む彼女自身が感じてきた、東京や大阪に集中する教育機会や情報格差。その現実に対して、地理に縛られず誰もが接点を持てる空間として、メタバースは“新しいリアル”となりうるのだ。

IV. デジタルとアナログ、その先で見据えるもの

4-1. リアルで響くものが、AIによって広がる

 テクノロジーの進化によって、教育も社会もフラットになりつつある。場所や世代を越えて、人と人が接点を持てるようになった時──では、その先にある“人間の役割”とは何だろうか。

 そこで重要になるのは、人間一人ひとりが何を吸収し、どんな視点や感性を持ってAIと向き合うかということである。むしろ今後は、すべてをAIに任せるのではなく、AIというツールをどう活かすかを決める人間の想像力や判断力こそが問われる時代になる。

 そう考えると、、、それぞれの強みを持ち寄り、共創するためには──リアルで「どんな体験や感情を吸収してきたか」が、価値の源泉になるのではないか。

 だからこそ僕は、彼女に尋ねてみた。

「AIがここまで進化している時代において、逆に“人間にとって大切なアナログ”とは何だと思う?」と。

 返ってきた答えは、やはり本質的なものであった。「表面的ではない価値を追い求めること」──彼女はそう答えた。

 つまり、人の心に深く響くものを、リアルな生活の中で探し続けること。それこそが“アナログ”の本質であり、そこから見つけた思いや感覚を、AIによって拡張し、自分の表現へと昇華させる。表層的な演出や即席の流行とは違う、人間の奥底にある“本当の感情”を起点としたアウトプットこそが、彼女にとっての価値ある自己表現なのだ。

4-2. 特別でなくていい。誰もが、自分を表現できる

 そう捉えたとき、彼女は決して“特別な存在”ではないと気づかされる。むしろ、誰もが彼女のようになれる──そう思わせてくれる存在である。

 究極的には、クライミングと何ら変わらない。自身の成長とともに、次の誰かにその知見を伝えていく。彼女にとっての「起業」とは、教える手段であり、「AI」とは、その伝達力を最大化する“てこ”としての存在である。そして、彼女が見据えるのは、その教えによって開花する“他者の才能”こそ、自身が打ち込む意味なのだ。

 僕は彼女にこう伝えた。「結局、目指すところは『なりたい自分は何なのか』を探すことだよね」と。すると彼女は、静かに、けれど確かな笑みを浮かべた。

 AIが人の仕事を奪うかどうか──そんな議論を越えて、リアルな生活に深く根を張り、そこで育まれた想いや願いが、テクノロジーの力によって“その人らしさ”として最大化されていく。そんな未来を、彼女はまっすぐに見つめている。

 教育、AI、そしてそれをスケールさせる起業──。どれもが、誰かの「なりたい自分」を後押しする装置なのだ。楽しみではないか。これからの世界が。

今日はこの辺で。

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