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グローバル市場の扉を開け!本谷知彦さんが明かす越境EC成功の秘訣

 まだ多くの日本企業にとって、越境EC(電子商取引)は遠い存在なのだろうか。越境EC市場の急拡大と縮小傾向に入っている国内市場をあわせて考えると、もう本腰を入れなければいけない。一歩踏み出せない理由は、数字として、受け入れられていないから。十分に実態が理解されていないからではないだろうか。そこで、BEENOSが開催したセミナーで、デジタルコマース総合研究所 代表取締役の本谷知彦さんが語った内容を僕なりにまとめてみた。越境ECの現状と未来を俯瞰し、企業が採るべき戦略について解説したいと思う。

1. 越境ECの成長背景:なぜ今注目されるのか

 必要な理由で、よく言われるのは、円安だから?インバウンドの増加だから?そんなところだろう。

 しかし、そんな問題ではない。もう越境ECをなくして、日本企業の成長はみられないから、避けては通れない議論なのである。

 Googleトレンドによれば、越境ECは2015年頃から急速に検索数が増加。その後、一旦は低下して、コロナ禍でさらに拡大した。実際、EC業界で言えば、下降ラインに入った時に離れた企業も少なくない。

 でも、結局、必要なのである。それは、その後需要が高まり、しかもそれが今にまで続いていることからも、証明されている。

 本谷さんは「越境ECはオワコンではない」と強調し、その理由を次のように語るのだ。繰り返しになるが、日本国内市場の停滞である。日本の小売市場は150〜160兆円規模で30年間横ばい。

 当然ながら、個人消費も、この30年間で横ばいである。

 これは、世界で見ても同じことなのだろうか。いやいや、とんでもない。対照的に、アメリカの個人消費は過去20年間で2倍に拡大している。アジア、アフリカを含む新興市場の成長も著しい。

 それに加えて、日本は、人口減少が進んでいる。特に本谷さんが強調するのは、生産年齢人口。15歳から64歳を指す。つまり、自ら働き、消費する世代である。そこでの20年間での減少が、20%にも及び、国内市場の限界を物語っているのだ。

2. データで見る越境ECの実態と市場動向

 次に、本谷さんは、越境EC市場のデータを分析して、いくつかの興味深い特徴を挙げてくれた。

 人気が高いカテゴリーはアパレルである。中国、アメリカ、ヨーロッパなどで安定した需要があり、他にもコスメや電子機器、趣味用品が上位にランクイン。

 そして、忘れてはならないのが、このマーケットの拡大に伴って席巻しているのは、中国であるということ。下記の資料を見てもらうとわかるが、越境ECに関して流通の取引の上位に、中国が来ている。逆に言えば、この国は越境ECを味方につけることで、躍進していると言っても過言ではない。

 考えれば、確かに人気が高いアパレルという意味では、SHEINが思い浮かぶわけで、納得である。

 そして、越境ECにおける平均消費額は約8,000円以下が主流。コストパフォーマンスの高さが、越境ECの利用を促進しているようであるから、尚更だ。

 実際にどのプラットフォームを活用しているかと言えば、AmazonやAlibabaが市場をリードしていて、ここにSHIEN、Temuが猛追しているものと思われる。だから、中国に先を行かれる今のままで、日本企業はそれでいいの?そう本谷さんが熱っぽく語るわけである。

3. 日本企業にとっての越境EC成功の鍵

 越境ECを味方につけずして、企業の成長はあり得ない。では、日本企業が越境ECで成功するために必要なポイントはなんだろうか。

 それを考える上では、越境ECというビジネスモデルを理解するべきだ。大きく分けて、直送モデルか、一般貿易モデルのどちらか。これを一緒くたで解釈すると本質が見えてこない。

直送モデル

日本国内で在庫を持ち、海外からの注文に対応する形態。フィギュアなどの特殊商品に適している。

一般貿易モデル

海外のプラットフォームやリアル店舗向けに在庫を配置する形態。中国のTmallなどの活用が有効である。

 一般貿易のモデルは現地に倉庫を構えて、そこから出荷するから、規模感は大きい。だから、必然的に中小企業は直送モデルとなる。在庫リスクを抑えながら、まずは小規模な出荷から開始し、需要に応じて拡大する「直送モデル」が有効である。しかも、日本の存在感はまだないから、伸び代はある。

 それは、一般貿易のデータを見れば見えてくる。大きな枠組みと傾向は変わらないから、一般貿易のうち鉱物などは除いて、敢えてそのデータを紐解く。

 ご覧の通り、米国と中国が2強の状態となっているわけで、続いて、中華圏、東アジアと続く。

 ということは、直送モデルも似たような傾向が見られると推測できる。つまり、伸び代である、この部分に然るべき資本を投入して、縮小する国内需要の分を取り返すことは急務であると考えられる。

4.成功するためのポイント

 そもそも、日本の存在感は小さい。だが、世界的に見て、それだけ魅力のない商品群なのだろうかと考えてみると、そんなことはない。こちらを見て欲しい。

 日本のコンテンツ輸出(ゲームやアニメ)は2022年時点で約4.6兆円に達し、家電量販店の総売上と匹敵する規模である。このデータは、日本企業が越境ECに参入する意義を示している。特に、ホビー系商材などでは相性が良く、たとえば、高品質のフィギュアやアニメ関連商品が海外で人気を博している。

 しかも、マーケットの広がりは、越境ECの拡大とともにある。海外向けが急拡大しているのだ。

 何もコンテンツをやれと言っているわけではない。日本製品の特徴を活かし、ピンポイントでニッチなニーズに応えることが重要である。等しく、日本の商材にはそういうストーリーが秘められており、最初から海外を念頭に置いて、ビジネス設計することのほうが、大事なのである。

 その際には、繰り返しになるが、在庫リスクを抑えながら、まずは小規模な出荷から開始し、需要に応じて拡大する「直送モデル」が有効である。そして、消費者が求めるスピード感やコスト感覚に応じた柔軟なビジネス展開が鍵となる。「直送モデル」でも通用する粘着性が大事なのだ。つまり、時間などの利便性を超えてでも、欲しいと思える商材というのは何か。それを考えて、越境ECを戦略的に取り組む。

5. 越境ECが描く未来の可能性

 越境ECは、国内市場の限界を打破し、成長する海外市場を取り込む鍵となる。それを踏まえて、本谷さんの分析から得られる教訓は次のとおりとなる。

•日本企業は、自社製品の強みを活かし、海外市場に適したアプローチを取るべき。

•越境ECの成長は一過性のものではなく、継続的な戦略が求められる。

 本谷さんはいつだって現実的だからこそ、ある意味、未来に関して情緒的である。僕は、彼に対してそう想いを抱く。なぜなら、新しいビジネスの可能性を華麗に数字で指し示して、企業の背中を後押しするのだから。

 そりゃそうだ。夢や理想を語ったところで、そこにマーケットとしてのポテンシャルがなければ、水の泡になる。数字によってどの市場が明るいかを照らしてくれている。だから、僕らは安心して、未来を見通せるのだ。

 その意味で、彼が明かすその数字からは、越境ECの明るい可能性が見えてきた。この波に乗るために、データに基づいた計画的な挑戦を始めるべき時期に来ている。

 今日はこの辺で。

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