Kuradashiのユーザーに届け!エイビーシースタイルとPB商品開発 フードロスが食の楽しみに変わる
ネットは、共通した価値観で人と人とをダイレクトに繋げて、ビジネスにする力がある。だから、人と人との間に生まれる共感は大事。クラダシは、フードロスという観点で、消費者との共感を生み出し、見落とされている価値を拾い上げた。そして、そんな彼らの発表会で次なる挑戦を耳にした。そこでは、PB商品「つくってKuradashi」の予約販売を、今日から始めて、新しい視点で勝負をしていくことを宣言。今回は、エービーシースタイルの見事な着想に基づく、レシピをテコに、素敵な食卓をフードロスで提供する。
今の時代と流通構造。クラダシの着眼点に学ぶ
1.廃棄が生まれてしまうには理由がある
本来なら、「つくってKuradashi」の話からすべきところだが、ここは、クラダシのビジネスモデルから話をさせてもらおうと思う。それは、このPB商品の意義を考える上でも、大事なことだからだ。僕が一番感じたのは、日本に古くから定着する小売の流通構造ゆえに、引き立つビジネスモデルであるということだ。
通常、日本のメーカーは、自ら作った商品を問屋、小売店へと流通させて、消費者に対して、販売する。これらの流通構造が定着し、機能している。ただその一方で、それでも、果たせないことというのはどうしてもある。それがフードロスの問題である。
日本では、年間523万トンにも及ぶフードロスが発生しているのだ。この数字は、アジアワースト1位(世界で見ても6位)である。その内訳を見ると、実は、事業系フードロスが279万トンである。
では、企業側が廃棄にする理由として、まず挙げられるのが、商品の割れ、少しの傷があるというようなもの。そして、何より大きいのは「1/3ルール」。製造日から賞味期限を3等分して、納品・販売期間を設ける商習慣がある。つまり、1/3を超えると賞味期限が残っていても廃棄される可能性がある。それが、フードロス全体の数を相対的に押し上げていそうに思う。
2.クラダシは消費者との繋がりを活かして課題を解決
だから、メーカーは問屋や小売店の事情によって販売されない事態が起こるわけだ。そこで、クラダシの出番であり、彼らはそれを自ら在庫を抱えて買い取る。
時期がずれているのでその分、仕入れ値を抑えることができる。なので、これを販売することで粗利は出るが、メーカーも手離れを良くするために、買取を求める。だから、その分、kuradashiも在庫リスクを抱えることになるわけだ。
それで、その分、在庫のサイクルを良くするために、消費者には、それをまとまった単位で買ってもらうことにする。それを踏まえて、比較的、安く売るので、それを購入後、日にちを置かずに、食べるということするという文化を、消費者との間で作り上げていった。これは、ECという手段を通して、ダイレクトにお客様と繋がれることによる功績である。だから、40〜50代で、家庭を持つ女性がその価値に理解を示して、購入するという流れも生まれ、それも自然である。
かつ、彼らは、そのダイレクトにつながっていることを活かし、受注予測を立てることで、メーカーとの間でも必要な数量を手に入れることができるということになる。話を聞いて、なるほどと思った。
今こそ、別の企業を巻き込み、新しい文化を
1.コロナ禍で躍進したからこそ、それをテコに次なる挑戦
思うに、メーカーが直接、お客様に販売する機能を持っていないところに着目して仕組みを作ったところに、価値がある。日本の流通の構造が、彼らの存在意義を高めると考える所以である。
実は、少し意地悪だが、リユースと比較して、同社の徳山耕平さんに聞いたわけだ。「アパレルはリセールバリューをして、自らブランド自身がリユースを回収する動きがありますよね?」と。そして、フードロスもメーカー自身ができないものだろうかと。
そこで、彼も言ったのは、メーカー自身が消費者との直接の売り先を持たない。改めて彼らの存在意義を思うわけである。
さて、そんな彼らが創業から10年ほどで転機を迎えたのが、コロナ禍だ。ネットが定着し、生活変容が起こって、追い風が吹いた。昨今、経済産業省が発表する食品・飲料のEC化率の増減率が伸びていることからもわかる。つまり、食とネットの距離が近づいている。
参考記事:成熟“ネット通販”に見る 頭打ちへのカウントダウン 今何をするべきか 経産省調査を本谷さんと紐解く
そういう様々な要因が寄与して、売上規模が拡大。そこで彼らの強み、消費者と事業者との繋がりをフックに、PB商品を製造していく。
また、東京都が「フードテックを活用した食品ロス削減事業」を推進している事も彼らを後押し。彼らはそれを活用して、世の中の要請と自らの飛躍の可能性を掛け合わせて、このPB商品へと繋げていく。
2.料理の力で際立つエービーシースタイルの専門性
いうまでもなく、彼らは生産に関しては素人なので、エービーシースタイルの力を借りることになる。エービーシースタイルといえば、「ABCクッキングスタジオ」でお馴染み。ただ、この日の同社 上村碧さんの説明に気づきを得た。同社の核となっているのは「人材サービス」事業なのである。
人材?そう思った。僕らはABCと聞くと、料理教室のイメージが先行しがち。だが、何よりそこには先生が存在する。そこから派生して、食のクリエイター、インフルエンサーなど食にまつわる人材を世間に行き来させる。そうすることで、企業価値を上げていたわけだ。
自ずとそこにはレシピも集まる。多くの人材の価値を通して、新しい商品開発の方向へと駆り立てる流れになっていく。だからこの過程で、フードロスを考慮した商品開発を彼らも着想。実は彼ら自身も、こんなサスティナ缶を手がけている。
だから、Kuradashiとの出会いは自然な流れ。クラダシは、先ほどの東京都の事業支援の動きに呼応する形で、エービーシースタイルと、このプライベートブランド商品の作成に着手。手を組むのは言うまでもない、エービーシースタイルのレシピ開発力に着目したわけだ。
3.おいしく届ける縁の下の力持ちTokyo Bento Labo
KuradashiのECサイトで販売するためのPB商品を、エイビーシースタイルと一緒に、手がける。物事、ゼロから生み出すのは簡単ではなく、試行錯誤を続ける。
ここで忘れてはならないのは、Tokyo Bento Laboの存在。クラダシは、エービーシースタイルから紹介を受ける形で、彼らとも連携していった。両社がTokyo Bento Laboに期待したのは、弁当における冷凍技術。話を聞いて、これまた、発見だった。同社は、思うに、ご飯をプラットフォームに見立て、フードロス対応商品を手掛けているのだ。
要するに、ご飯の部分は固定させて、上に乗せる具材のほうを、フードロスの実態に合わせて、変幻自在に組み合わせて、弁当に仕上げる。それをおいしく、少しでもそれを維持するべく、冷凍にして提供している。
つまり、ここで使われる上に乗せる具材こそが、繊細なフードロスによって生まれたもの。だから、数多くの生産物の加工と、冷凍の相性が誰よりも詳しかったのである。
具材によっては、冷凍でも解凍した時にぐちゃぐちゃになる。そのくらい繊細だと、同社の関さんは言う。そのベースができた上に、レシピ開発の専門家、エービーシースタイルの力を結集したから、あとは、売るだけ。Kuradashiを通して、必要な数量、適正な価格で、お客様に届ける。かくして、それぞれの強みを活かし、チャレンジできるようになったというわけなのだ。
試行錯誤の末にできたPB商品
1.敬遠されていたコノシロ
そこで出来上がったのが、「つくってKuradashi」であり、3種類のパックを3個ずつ。合計9セットで用意して、4980円(税込)。この日、僕は3種のうち2種いただいたが、コノシロボールカレーが印象的。
コノシロは扱いの難しい魚で、小骨が多い。だから比較的、メーカーにも敬遠される具材であり、それゆえフードロスが生まれやすい。それを、ツミレ風にして、野菜などの旨みがあるカレーの中に入れることで、コクがあって、臭みがなく、おいしく味わうことができた。
そしてベーコントマトスープは、トマトが程よく味を引き締め、ベーコンの旨味と調和している。正直、言うと、トマトが苦手な僕すら完食。エイビーシーの調理のコツは苦手を克服するほどなのかと感心しながら食べていた。
2.食の楽しさの幅が広がる「フードロス」
改めて思うのは、こういうことを言っては元も子もないが、「自然に優しく」なんて言わなくてもいいということだ。そもそも、僕らが美味しいと思えるものは大体、知っているではないか。
それを求めていくのも大事。けれど、見落とされている具材が存在し、それを料理の専門家により例えば、このスープのように、全く新しい価値観を持ち込んで作れば、食としての楽しみ方の広がりが生まれる。
そう考えた方が、きっと、ターゲットとしている女性に響くのではないか。豊かな生活をもたらすきっかけとして、フードロスを提案していく。その意味で、エービーシステムの発想はクリエイティブで素敵だし、それをビジネスに変えて、お客様に新たな価値提案をしていくクラダシも見事である。縁の下の力持ちである、Tokyo Bento Laboもね。
三位一体で、素敵に世の中を変えてくれる一歩。彼らによって、説教じみることなく、ただ純粋に、フードロスが心穏やかに、食の幅を広げるきっかけになることを切に祈りたい。
今日はこの辺で。