ラクマと楽天市場 仕様と施策で連携強化 買い物上手が消費に活気を
買い物上手は、実は販売上手。そうリユース関連の人から聞いたことがある。海外では、企業も新品とリユースを同列で見る動きが広がっているほどだ。だから、楽天グループの発表にはうなづけた。同じ経済圏に「楽天市場」と「楽天ラクマ」を抱えることから、親和性の高さをフックに、連携を密にすることを明らかにするもの。ネットが日常の購入シーンをまたひとつ、変える気がしている。
中古品は購入を生み出すきっかけ
少し前の価値観では考えられなかった動きではないかと思う。でも、これはデジタルの進化によるところが大きく、当然ながら、消費者だって、買うだけではお金がいくらあっても追いつかない。最近は、買い物上手は、購買意欲の高さゆえに、上手に購入した商品を販売するのに長けており、新しい文化の創造に、寄与している。
では、楽天市場が基本、新品を扱うプラットフォームである(一部中古品あり)なかで、どんな変化があるのか。まず、2022年10月から「楽天市場」の検索画面で、楽天ラクマの商品の表示を開始した。
つまり、新品と同様に中古品が同列で出ることで、比較検討を行える。そうすることで、お客様の状況に合わせて、購入できるようになったわけだ。
新品への影響は?
こういう話をすると、新品への影響が気になるところだが、それが先ほどの話に直結するのではないかと思う。つまり、新たな購入を創出するために、リユースを販売しているのであり、結果的には、リユースの利用者の方が、購買率が高くなっている。
彼らのデータを見ても分かるとおりで、「楽天ラクマ」を利用した人は、非利用者よりも、年間の購入金額が8%、高い。
そうなると、彼らも変な話だけど、新品を売れるようにするために、中古品を売りやすく、買いやすい環境を作り出せるように徹底し始める。「サーキュレーション・ストラテジー」といって、楽天経済圏内で、購入して、売って、また、購入機会を作り出す取り組みに本腰を入れ始めた。具体的には下記の三つの視点で語られる。
ヘビーユーザーにもその文化を促す
だから随時、細かな仕様変更が行われているのだ。先日も、僕は「楽天市場」アプリを見て「おっ?」と思ったところであった。
何気なく、購入履歴を見ると、その商品が『「楽天ラクマ」であれば、平均、幾らで売れるか』をAIなどで示してくれていたわけである。
この日の発表によれば、この機能自体も8月下旬に、実装されたばかり。それでフリマアプリに出品することの判断を促すだけではなく、実際に、そこから、出品するまでの手間も大幅に削減している。だから、ヘビーユーザーであればあるほど、それに気づくだろう。それは、いうまでもなく、利用機会の増加に一役買うことになるだろう。
大きなキャンペーンに合わせて訴求
ここまで土台を整えつつ、それを今後は、本格的にアピールしていき、消費者のマインドを変えていく考えだ。
具体的には、「楽天スーパーSALE」「お買い物マラソン」というより消費が動きやすいタイミングで仕掛ける。それらの期間中に、楽天ラクマで1000円以上、購入すると、楽天市場、楽天ラクマのポイント付与が、通常のショップの買いまわりに加えて、+1倍になる。こういう仕掛けを後押しするために、「ラクマ」のテレビCMでもアピールするわけだ。
先ほど、担当者にも確認したが、思うに、中古品といっても2種類あるように思う。どこでも流通しているものを安く売る。それと「ニッチな商材を高く売る」。この二つだ。その意味で言うと、楽天はクーポンがある関係上、他のフリマよりも、比較的単価の高い商材も多いらしい。
そうだとすれば、このようなキャンペーンに、リユース品が入ることに対して、ポジティブに捉える消費者も多いだろう。
時代の流れに適応できる店舗に
昨今の「ラクマ」の動きを見ていると、1店舗あたりのYOYの平均成長率は約1.6倍にまで広がっており、時代の流れも感じる。また、特に若年層においては、まずフリマアプリでチェックしてから、購入を考えるというデータもある。楽天にとってはその層を取り込むという狙いも見える。
プラットフォーマー側のUI、UXに配慮した仕様変更や、働きかけは、また、消費の現場に多様化をもたらすことだろう。冒頭話したとおり、そういう賢い消費術を多くの人が、デジタルをテコに身につけることで、消費が活性化される。この動きはプラスに考えるべきだと思う。
確かに、通常の出店店舗においては競合店舗が増えた印象を抱く人もいるだろう。しかし、寧ろ、この流れに逆らって、このような対応をしないことのほうが既得権益にしがみついているようなもの。
まずは、この文化を受け入れること。
ただ、個人的な思いとしては、楽天がそれをやってもいいけど、ここの店舗やブランドがそれを実践してもいいと思う。選択肢は色々あって然るべき。
ただ、その分、同列に扱われる側の店舗は、「その新品を買うに値する価値はどこにあるのか」。その点を改めて考慮しながら、ブランド価値の訴求や、店舗と顧客の距離感を縮める働きなど、していくべきだろう。
時代の変化を見据えて、感度を高く、俯瞰的に見て、あらゆる備えは必要なのだ。
今日はこの辺で。