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船橋 “街ガチャ”の発想で変わる 観光 地元民しか“知らない”“買えない”だから良い

 これが「さざんかさっちゃん」か…。庶民の待ち合わせ場所 船橋駅の改札口前で、僕はキーホルダーを持ってたたずむ。手にしているキーホルダーが「さざんかさっちゃん」のイラストが入ったもの。その名も「街ガチャ in 船橋」。船橋に設置されたガチャでしか手に入らない。そして、船橋の人しか分からないモチーフを中身に詰め込んだプロジェクト商品。船橋は“街ガチャ”の発想で新たな 観光を模索する。

街を巻き込み 船橋 “街ガチャ”で 観光 に光を

1.地元民しか分からないから面白い

 勿論「さざんかさっちゃん」など僕は知らない。でも敢えてそうやって地元でしか知らないモチーフを、その場所のガチャでしか手に入らないようにする。それが「街ガチャ」の発想で、シュールである。

 実は、ここに関わっているのが日本ガチャガチャ協会の小野尾勝彦さん。「ガチャの商品で驚かせることも得意だけど、こうやってガチャそのものを題材に面白いことを考えるのも、好きなんだよね」。そう言う通り、街を巻き込み、ガチャを楽しみながら、この街の魅力へと誘おうのが彼らしい。

2.会見場は案外本気で驚く

 それで、「来てみる?」呼び出されて行った先には、船橋市観光協会の人達がいて、これから記者会見をやろうというところであった。地元船橋在住のクリエイターの本間泰雄さん、同じく船橋住民のTechガチャ研究所の坂本慶一さんと小野尾さんを交えて、このプロジェクトの説明が始まった。

 ゆるい企画ながら本気度が高くて驚いた。

 早速、やや緊張気味に、小野尾さんが会見の口火を切った。

 振り返ること、ガチャメーカーに入社して以来、社会人生活の殆どをガチャに捧げた。最近独立して日本ガチャガチャ協会を立ち上げた。今も多くのメーカーの商品開発のアドバイスをしている。

 そして、記者からの「日本ガチャガチャ協会とは何?」。そんな疑問に答えるように自分の経歴に触れたのである。さらには、自らの地元が船橋。船橋市観光協会の人達と出会ったことをキッカケにこの提案に至ったことを明らかにした。

3.ガチャを武器に、観光協会を巻き込み作家を勇気づけ船橋が開花する

 つまり、彼の強みはガチャによる繋がりだ。それを武器に、地元の活性化を担おうと考えた次第。

 配られた資料には「ジモト愛をガチャに込めて、街を盛り上げるプロジェクト」と書かれている。小野尾さんはガチャメーカーと密な連携をして全体をプロデュース。

 一方、観光協会は地元民にとってゆかりの地に交渉。その名所をグッズのモチーフにしてもらえるよう、許可を取った。

 そして、並行して、地元出身のクリエイター本間さんらは仲間のイラストレーターと共にその許可が取れた名所をイラストで描くことでグッズ化。かくして「街ガチャ in 船橋」の実現となった。

4.地元にとっては馴染み深い10種

 さて、出来上がった商品を見てみよう。名所などは合計10種類。その一つが冒頭に話した「さざんかさっちゃん」である。知る人ぞ知るサブカルチャー的なノリは船橋を知らない人にも楽しめそうに思えた。

 実は、この構想を小野尾さんから聞いていた僕。そこで「珈琲モナリザ」の商品があることを知っていた。だから、この記者会見の前、わざわざ現地を覗いてみた。下写真がそうだ。

 「昭和の香りがして、まさに純喫茶という感じなんですよね」。行けばこそわかるトークである。

 ゆえに、僕が話すと船橋市観光協会の粟田文彦さんは顔が緩む。

 「そうなんです、哀愁が漂っています」。そう答えたその表情に地元愛がうかがえる。初対面ながら打ち解けてしまった。それは、まさに地元の魔力である。この企画の可能性を想ったのである。

“スマホ決済”でガチャを楽しむ 

1.アナログ的で新しい?

 続いて、 「このガチャマシン自体も工夫されていて、キャッシュレスです」。

 そう話してくれたのがTechガチャ研究所の坂本さんだ。ちなみに、彼はこの筐体の手配から商品モチーフの選定、制作に至るまで携わった。聞けば、このガチャは「ピピットガチャ」と呼ばれているそうだ。

 例えば、PayPayなどのQRコードを写真のように読み込ませるとピッと読み込み決済完了する。それを完了させた後で、ハンドルを回せるようになるのだ。すると、中からカプセルが出てくる。よく考えたら、Techガチャ研究所というネーミングは、デジタルとガチャの融合を意図しているのか。

 「実はこのカプセルが植物由来の樹脂カプセルになっていて、エコを意識している」。

 彼ら曰く、使用後に微生物によって分解されて、植物の栄養となって、それが循環していくとか。地元密着だからこそ、地元が汚れぬよう。やっぱり地元愛である。愛ゆえのサスティナブル。本来の姿勢とも繋がり、今の時代ともマッチしている。考えられてのことか、偶然なのかは分からないが、よくできている。

2.それぞれの持ち味が光るプロジェクト

 実は驚くほど、早いペースで実行された。

 観光協会 粟田さんに聞くとスタートは2021年6月である。え?最近じゃん。

 「小野尾さんのリーダーシップのおかげで進行も早かった」と笑う。グッズの素材となるお店の交渉以外にも、設置場所に関しても奔走し、船橋市内の21箇所には設置が確約が取れた。クリエイターの本間さんだって、同じく船橋在住のイラストレーターの浜田琴さん、小倉正巳さん、中村頼子さんらに絵の作成を依頼して地元ならではの見事なチームワーク。見事な連携で、サクサクと事が進んだ。

 地元愛はリーフレットにも。イラスト制作の人たちの名前とブログ、会社などをQRコードで紹介して、アクセスを促す。地元だけではなく、その作家活動への応援も兼ねている。勿論、下の写真の通り、モチーフとなったお店などもマップとともにQRコードで詳細が記載されている。

 これは探索したくなる。

3.共感が拡散を生み、新しい活気を生み、全てに力を

 本間さんはできるまでのこんな裏話を聞かせてくれた。

 一緒に手がけたイラストレーター達にこう伝えたのだそうだ。

「一発でちゃんとしたものを寄越そうとしなくていい。ラフで良い。だからこれらの名所からインスピレーションを受けるまま、それを自由に落とし込んで、どんどん送ってほしい」と。それらの名所などは地元のアイコンでもらって、何かしら地元民であれば、思い入れがある場所。だから、そうやって共感を集めやすい工夫も惜しまなかったという事なのだ。

 ガチャガチャ協会の小野尾さんはこう語る。

 「ガチャって切り口が斬新。だからSNSで商品が拡散されることも多い。その影響力の大きさを痛感している。それだけに、商品を出すにとどまらない波及効果がきっとある」と。共感が生まれるそのイラストにも期待をかけた。

4.縁もゆかりも無い僕ですら集めたくなる

 僕は正直、船橋には縁もゆかりもない。しかし商品のモチーフになった船橋の名所などを見ているうちに、愛着が湧いてきていた次第。「珈琲モナリザ」にはもう行きたい気持ちで満々だ。商品がこの場所の魅力を伝えるメディアになっているわけである。

 ガチャはいつもその商品企画で、僕らの予想を超えた楽しい演出を数多く見せてきた。

 今度はそのガチャ自体が、その遊び心と人懐っこさで、地元の活性化を担う。楽しさって大事。人と人との距離を縮めて、賑やかにして、笑顔を作る。

 そんなガチャの持つ個性を武器に、船橋はその地元民の愛着を深める。それとともに、他の住民すらも関心を惹いて、観光へと繋げるのである。素敵なプロジェクトじゃん、小野尾さん。誘ってくれて、サンクス!

 今日はこの辺で。

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