時代を読む 特集
【特集】「伝統と革新が交差する─ててて商談会で出会う未来のものづくり」
ててて商談会は、ただの展示会ではありません。それは、全国各地から集まった多種多様な価値観と文化が融合する場。そして、そこに並ぶのは、地域の自然や伝統から育まれた商品たち。それぞれに秘められたストーリーを通じて、新たな発想や気づきを私たちに届けてくれます。これを主催するのは、“作り手”、“伝え手”、“使い手”を繋ぐ活動を行う「ててて協働組合」。今回は、彼らの活動にスポットを当て、その知恵と魅力を探ります。
伝統工芸がジュエリーへ――yuki onizukaの挑戦
(2025年春)
伝統工芸の「横振り刺繍」を受け継ぎ、新たなジュエリーの形へと昇華させたブランド「yuki onizuka」。デザイナーの鬼塚友紀さんは、京都で仏具や祇園祭の山鉾の修復を手がけながら、長年の刺繍技術を学んできた。
「いびつだけれど持ち主の想いがこもった、替えのきかない一着に触れてきた経験。それが、自分自身でも特別な一点を生み出したいという思いにつながりました」。
鬼塚さんのジュエリーは、伝統技法を活かしながらも、立体的で繊細なデザインが特徴。通常、平面的な装飾とされる刺繍を、糸の重なりや透け感を活かして立体的なジュエリーへと進化させた。その美しさは、まるで植物が風にそよぐような躍動感を持つ。
関連記事:伝統×革新──鬼塚友紀が創る、新時代の刺繍ジュエリー yuki onizuka
日本の伝統ワークウェアを未来へ――石徹白洋品店の挑戦
(2025年春)
岐阜県郡上市の山奥にある石徹白(いとしろ)集落。そこに息づくのは、かつて日本全国で当たり前のように使われていた「たつけ」という作業着だ。石徹白洋品店は、この伝統的なワークウェアを掘り起こし、現代のライフスタイルに合う形で再提案するブランドである。
「和裁の集大成とも言える服なんです。」
たつけは、ゆったりとしたシルエットで動きやすく、布を無駄なく使う合理的な設計が特徴。もともと田植えや農作業のために作られたこの服は、日本の湿気の多い気候にも適応した実用的な衣服として、今、新たな価値を持ち始めている。
関連記事:たつけとは?石徹白洋品店が守る、日本の伝統ワークウェア
仏具から日常へ――CASTIN’の挑戦
(2022年冬)
高岡銅器の伝統を活かした「CASTIN’」のブランドが仏具の枠を超え、現代生活へと浸透するまでの物語。
関連記事:高岡銅器 の伝統技術が光る「CASTIN」 その製法の歴史を背負って未来へ羽ばたく
再生紙の力を一般向けに――crepの挑戦
(2021年秋)
山陽製紙が業務用から一般向け商品へと挑戦する中で見出した、デザインと価値のバランス。
関連記事:山陽製紙 業務用からの脱皮 crep (クレプ)商品 企画 の裏側
鹿児島からお茶の魅力を再発見――すすむ茶店の挑戦
(2021年秋)
鹿児島の地元産のお茶にスポットライトを当てたブランドのユニークな取り組み。
関連記事:鹿児島 は “お茶”の産地? だから伝える価値がある すすむ茶店
和三盆――伝統とデザインが織りなすHIYORI WASANBON
(2021年秋)
瀬戸内地方の伝統的な和菓子『和三盆』に、新たなデザインを取り入れた『HIYORI WASANBON』。日和制作所が手掛けるこの取り組みは、職人技とアイデアを融合させ、伝統の新たな可能性を切り拓いています。」
関連記事:和三盆 職人技とデザインの先には HIYORI WASANBON
SOUKIの挑戦
――靴下に込めた愛と体験型ものづくり(2021年秋)
奈良県の伝統的な靴下産業を支えるSOUKI。彼らが取り組むのは、ローゲージという製法へのこだわりと、体験型ワークショップ『チャリックス』による靴下作りの楽しさの提供です。1927年創業の歴史を持ちながら、現代の消費者に寄り添う新しい価値を追求しています。
関連記事:SOUKI 1927年からの想い “靴下”愛 自転車で 靴下編む チャリックス 等工夫して
有田焼に新しい息吹を――もぐとごくの挑戦
(2021年春)
働く女性の隙間時間に寄り添う器として、有田焼を再解釈する活動。
関連記事:もぐとごく 有田焼 を背負って 未来へ
京土鈴に込められたユーモアと敬意
(2021年春)
京ことばを土鈴に落とし込む遊び心あふれる「torinoko」のデザイン。

京土鈴 京ことば へ敬意を込め ものづくり
さらしが台所を彩る――さささ 和晒ロールの挑戦
(2021年春)
台所での活用に新たな可能性を見出した武田晒工場の挑戦。
関連記事:さらし の伝統が 台所 に新風を(Clickで飛べます)
イグサがアクセサリーに進化――igusaの挑戦
(2021年春)
熊本のイグサをファッションとして生まれ変わらせたアーティストの情熱。
関連記事:畳の素材は アクセ に進化した igusa(Clickで飛べます)
九谷焼の粘土から新ブランドへ――HANASAKAの挑戦
(2021年春)
捨てられていた陶石を活用し、新たな商品群を生み出す谷口粘土所の取り組み。
関連記事:九谷焼 の裏で HANASAKA の 粘土 愛(Clickで飛べます)
人づくり、文化づくり
それぞれの商品には、地域性や伝統を活かしながら、新しい価値を見出そうとする人々の思いが詰まっています。この「ててて展示会」を通じて感じるのは、ただのものづくりではなく、“人づくり”や“文化づくり”への深い愛情。次回の展示会では、さらに進化したものづくりに出会えるはずです。その新たなストーリーを、また一緒に紐解いていきましょう。
今日はこの辺で。