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ネコもぶっ飛ぶ型破り人生、でも成立するのは保護猫への愛があるから。ネコリパブリック河瀬麻花さん

 何もかもが型破りで、熱量がほとばしる。これこそがネコリパブリック代表取締役、河瀬麻花さんだ。元はベーグル屋を営んでいた彼女が、店を閉じるという大きな決断を経てゼロから保護猫事業に挑んだのは、ただの転身ではない。「誰かがやらなきゃいけないなら、自分がやる!」という情熱がすべての始まりだった。堅調に成長したその事業は、単なる活動にとどまらず、保護猫文化そのものを創り上げた。そして先日、クラウドファンディングで3900万円を集めたというニュースが舞い込んできたが、これが特別なことだとは思わない。むしろ、ここに至るまでの彼女の挑戦そのものが、すべてを語っている。

1章:感性だからこそ予測できない価値を生む

 彼女は、家業がパン屋さんであり、生粋の職人肌の父が不器用にそれを切り盛りしていた。だが、その事業も時を経るほど、順風満帆とは言えない状況へと陥るように。

 一方、麻花さんは、というと、仕事での偉業とは裏腹に社会人デビューは可能性を感じさせるものではなかった(失礼!)。美術映像系の学校だったものの、そうした力を活かす企業の入り口は、就職氷河期ゆえに狭き門。彼女自身、そこまで働くということに執着しておらず、派遣OLで過ごす日々であった。

 ただ、その家業がかなり経営的に厳しいこともあり、彼女が戻ってくる。それで、彼女の人生が大きくひらけていくのだからわからないものだ。最初のきっかけは、彼女が海外に留学しているときに、出会ったベーグル。まだ日本には馴染みのないものだったが、これを日本流にアレンジすることで、ブレイクすると直感した。実家はパン屋であるから、そのリソースを使って、ベーグルを作ろうと提案した。

 彼女の着眼点が良かったのは、インターネットに目を向けたことにある。それこそ、最初はメールでのやり取りを通して、簡易的なカートシステムを取り入れた。

 また、楽天市場の出店費用に関しても、実に強か。当時、父が地元のスポーツチームへ少額で、スポンサードして、応援をしていたことがあった。ただ、その数十万円が、まだ振り込まれていないことを麻花さんは知るなり、その予算をその楽天市場の出店費用に充ててしまう(笑)。でも、これらベーグル事業こそが、軌道に乗って、パン屋を救う材料になる。わからないものだ。

2章:ベーグルから保護猫へ

 思うに、彼女の実家は岐阜県で、ベーグルという感度の高いアイテムをまだ受け入れられづらいというハードルもあったろう。ただ、それも、ネットの力を借りて乗り切ったということなのだ。

 ベーグルのセンスが、特に都会の人に受け入れられるようになったわけだ。驚きなのは、そのパン屋の売上の8割を占めるほどになったこと。これには父も驚いたことだろう。

 ・・・とここまで書いてきて、一度も猫の話が出てこないではないか。そう思う人もいるだろう。実は、このパン屋をやりながら、新規事業として立ち上げたのが、保護猫事業であったのだ。

 そもそも「保護猫」って何?そういう声も聞こえてきそうだから説明しておこう。

 かくいう僕も猫を飼ったことがないから、知らなかった。要するに、「保護猫」とは、飼い主がいない、または劣悪な飼育環境から保護された猫のことを指している。余談ではあるけど、僕自身、身近な問題として考えていなかったのだが、知り合いの「オキエイコ」さんというクリエイターからこんな事を言われて、ハッとした。

参考:「もしも私が帰れなくなったら…?」猫と人をつなぐ“もしも猫”物語と、ねこヘルプ手帳が生まれるまで

 「猫を飼っていても、飼い主の身に何が起こるかわからないですよね」。

3章:保護猫カフェの始まり――家業から独立した新たな挑戦

 つまり、突如として、飼い主は交通事故に遭い入院する、あるいは命を失う。その時に家にいる猫はどうなるだろう。僕が知るそのクリエイターは飼い猫に関する手帳を、自身で手がけ、持ち主に持ち歩いてもらうよう啓蒙している。

 保護されるべき猫は、上記のように、劣悪という括りでは括れない、実は、身近に存在しうる問題であることを痛感したのである。このことを知っていたから、麻花さんの気持ちに共感できたのもある。

 話を戻そう。彼女にとって大きかったのは岐阜の「女性若者支援プログラム」である。

 彼女はベーグル屋さんなので、EC仲間と連れ立って、ぎふネットショップマスターズ倶楽部にも通っていた。そこで、その話を耳にするとともに、事業者同士で、それぞれどんな事業をやってみたいかを発表していたのだ。そこで麻花さんが発表したのが、保護猫の事業。彼女はベーグル屋をやる一方で、ボランティアとして、保護猫の活動をやっていた。

 ただ、その時、その関わる人の多くが手弁当で、やっていた側面もあり、疲弊していた。つまり、持続可能な保護猫活動は株式会社化する事で具現化されると考えたところに彼女のセンスがある。事業内容を切々と説くと、事業化できる可能性は高い。そう言われ、申請したところ承認され、本当に着手し始めたというのが始まりだ。

4章:営利でやるから持続可能で猫を救える

 普段、ほんわかしてる麻花さんだが、突如として、彼女のひらめきが、停滞していた道を切り開くことがある。彼女が事業を進める上で、キーワードとなったのは、「多頭飼育崩壊」。

 とある猫好きの人の家へ訪問した際に、ピンときた。それこそが彼女の師匠なのだが、そこで耳にした一言が、具現化へと至る。その女性は、自宅でたくさんの猫を飼っていた。その方が預かる理由はまさに「多頭飼育崩壊」によるもの。

 実は、猫というのは極めて繁殖率が高い。オスとメスが自由に繁殖し合える環境があるとしよう。たった二匹が一年後、何匹になっているだろうか?

 その答えは、100匹を超えるレベルになる。

 ええ?だから、そこまでいかなくても、手に負えなくて、手放しをする人間も多い。だから、誰かが保護しなければならない。そこで、引き取り人として名乗り出たのが、その女性。面倒が見れなくなった猫たちは皆、処分されるからそれは忍びない。

  手放された猫を引き取り、欲しいという人に譲ろう。そう考えていたが、個人でやるには限界がある。

 猫は家では寛いでいても、一度、外に出れば、皆、緊張して、らしさを失う。だから、それをなかなか譲る機会が生まれない。そう“師匠”が嘆いているのを聞いて、河瀬さんは閃いた。

5章:外で触れ合い、譲り渡せる土壌があればいい

 ならば、猫を譲れる場所を外に作ればいい。それが保護猫カフェの発想の原点である。猫カフェがあるのだから、それを保護猫と兼ねれば良い。当初はパン屋の一部門として始まったこの事業。ただ、当然ながら、場所代などの固定費がかかるなどの問題がある。

 ここで「女性若者支援プログラム」の意義は大きい。

 実は、この内容は、事業を立ち上げた人の2年間の人件費と事業費も出る。ゆえに、一番最初の最も固定費がかかり、利益が出づらい部分でコストを徹底的に抑えることができた。だから、その事業は3年以内で黒字化を達成して、その後の展開に道筋を作った。

 また、時を同じくして、父の死によってパン屋を閉店せざるを得ない状況に直面した。実は、その閉店の前から、銀行の提案で保護猫事業を独立させていた。それによって、ネコリパブリックの動きは当初からスムーズに進めることができたという幸運もある。

 保護猫カフェは単なるカフェではなく、保護猫活動を広げるためのハブとなった。それだけではない。当然、その譲り渡す過程で、育てるために必要なものを販売した。ここでECが機能する。

 何より大きいのは、その後の関係性だ。保護猫を譲り渡した後でも、その猫は嫁に出すような感じである。

 “実家”としてもその後が気になる。「その後の様子をInstagramでアップしてくださいね」などと呼びかけると、ネコリパブリックと飼い主との関係性は途絶えることなく、続いていった。

6章:保護猫カフェから広がる未来

 さらに、麻花さんは猫に絡む作家や企業と連携し、イベントを開催。その名も「ネコ市ネコ座」。

 出店料や入場料で収益が生まれる。ただ、ここで稼いでいるのも、結果、それを保護猫の活動資金に充てるためであるということだ。営利でありながら、営利っぽくない要素が、保護猫カフェを中心に強力なコミュニティを形成する要因になるわけだ。

 この辺が独創的で素晴らしいと思う。保護猫カフェの運営が順調に進む中、麻花さんはその枠を超えて、あらゆる価値を飲み込む。

 その他、ネコリパブリックのファッションブランドも手がけた。大手の小売兼メーカーにいたデザイナーとの出会いで、着想したのだ。猫のアイコン入りで、本格志向のファッション系のアイテムを発売した。

 ここまでの話を踏まえれば、そのブランドが受け入れられる理由はわかるだろう。どうせおしゃれするなら、その支払ったお金が猫を救う活動に繋がっていてほしい。そんな想いが集まるところにこのファッションブランドの価値がある。

 いきなり、猫のブランドを始めても、うまくはいかないだろう。けれど、彼女の場合は違う。

 そこまでの活動で、保護猫カフェを起点として、行動をしている事で信頼が得られている。だから、その中で、興味を示してもらえて、買ってもらえる素地がある。関わる人たちは猫たちの生活を支える一員であることを実感し、それがさらなる共感の輪を広げていくのである。

7章:そして、保護猫シェルター へと続く

 これにより、「猫好きの集まる場」が収益を生み出すだけでなく、保護猫活動の認知をさらに広げるメディアとして機能するようになった。思うに、目先でお金を稼ぐのではなく、未来に必要な価値を唱えたときの強さである。事業の構想は自然と広がり、他者の想像の及ばないところで、素敵に道が切り拓かれていく。

 そして、現在、麻花さんが注力しているのが「保護猫シェルター」の運営である。これが最初に話した現在進行形での彼女の“型破り”とも思える大胆な行動。

 このシェルターは、病気や障害を抱えた猫たちが安心して暮らせる場所として設計されている。ここで猫たちは健康を取り戻し、再び保護猫カフェで新しい飼い主と出会いを果たしたり、穏やかな環境で寿命を全うすることができる。この部分だけは非営利で運営しているのだ。

 そして、冒頭に話した3800万円のクラウドファンディングはこれに関するものである。実は、当初、シェルター用に借りていた物件を、手放さざるを得ない状況に直面したのである。

 もうすでに多くの猫がこの中にいる。この困難に対し、麻花さんは「自分たちの拠点を持つ」という決断を下す。そして高円寺近くに新しい家を購入。それをシェルターとして活用するという大きな挑戦に踏み切ったのだ。

8章:共感が生んだ3000万円の支援 未来へのヒントを紡ぐ物語

 それにあたって、購入資金の一部をクラウドファンディングで募った。そうやって「保護猫のための新たな拠点を共に作りたい」という熱い想いを支援者たちに訴えたのである。

 目標は、なんと3000万円。果たしてそんなことが可能なのかと思われた、この挑戦。見事それを達成したどころか、ネクストチャレンジとして修正して「3800万円」を目指した。

 そして、その3800万円も達成して、3900万円で有終の美を終えた。

 しかし、ここまでの話を読んできたあなたであれば、集まる理由も理解できるだろう。何もないところに風呂敷を広げているのではない。これまでの行動で積み上げてきた信頼のもとに、この実績があるのだと思う。

 河瀬麻花さんが築いた保護猫活動の文化は、株式会社にすることで、収益を生む仕組みとして持続可能性を確立。さらに多くの人々に「自分にも何かできる」という希望を与えている。長年の活動で築いた共感の輪は、クラウドファンディングの成功や、全国に広がる保護猫の拠点という形で確かな成果を残している。

 そして、その先に見据える物語は、まだ続く。

 彼女の行動を見て、これからの事業において「持続可能」の大事さを思う。それは決して、お金儲けが先行していては想像し得ない世界だ。次にどのような未来を描いていくのか。その背中を追い続けることで、私たちも新たな一歩を踏み出す勇気を得られるだろう。

 今日はこの辺で。

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