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今“共創”が必要で“オムニチャネル”的発想が大事な理由。企業、地域、性別、各々の垣根を越えて。

 正直、最初、共創という今回のテーマが結びつかなかった。オムニチャネルDayに参加しての最初の印象がそれだった。だが、 そのセミナーを幾つか聞くうち、そういうことかと思った。僕の方が実は、オムニチャネルという言葉の固定概念にとらわれていたのかも知れない。主催する、オムニチャネル協会の意図するところは、違うところにあったのだ。

オムニチャネルって?

 そもそも、「オムニチャネル」とは何か。リアルとネットの垣根を超えて、お客様と向き合い、関係性を築くことを意味する。結局、向き合う相手はどこを介しても、同じ一人。だから、同じ温度感で接するというのが、より深く繋がる上での肝になる。

 わかりやすい例を言えば、データを連携して、垣根を超えて、お客様の今を捉える。ただ、それはあくまでインフラであり、例えば、それを最大化するために、データを元に接客に繋げるなどして、本領発揮となる。ゆえに、リアル店舗も細かく情報を吸収しやすいネットを無視できなくなって、ECはその意味で、存在感を増している。ECで蓄積されたデータの力が発揮されることで、最大化されると言っても過言ではないから。

 ただ、それこそがオムニチャネルの真骨頂であるけど、今日の話はどうやらそこではないらしい。もっと広義に捉えたもので、企業対企業という部分でも、当てはまるのだ。それが彼らのいう「共創」であり、その裏側で機能するのがオムニチャネル。それは、フラクタの創業者、河野貴伸さんと丸井グループ常務執行役員 相田昭一さんの話を聞きながら、ハッとしたわけだ。

デジタルの時代こそ誰でもブランディングできる

 そのヒントは、河野さんが「フラクタをなぜ立ち上げたのか」というところにヒントがある。彼が重んじるのは、ブランディング。とは言え、それは一朝一夕でできるものではない。ただ、そこで、デジタルを用いれば、もっと身近に、生産性高く、より多くの企業のブランディングが行える。そう考えたのが創業に至る経緯だったからだ。

 ブランディングが重要なのは、昨今のD2Cの台頭を見てもわかる。個々の企業が、事業を続けるうち、自分たちの立ち位置を理解して、顧客と共に関係性を築いている。そのことからも分かる通り、ブランディングはデジタルによって、身近なものに変わったのである。彼は考える。この時代にあって、デジタルを通して、それを生産性高く、ブランディングするとは何かと。だから、彼はデジタルの意味を語り、自らの個性を発揮することで、もっと、飛躍が可能になると説くわけだ。

 それゆえ、河野さんとの接点は自ずと、スタートアップの企業が多くなる。そして、そのスタートアップの企業との接点に着目したのが丸井グループである。彼らは「OMEMIE(おめみえ)」というサービスを通して、スタートアップとの接点を作った。それはなぜだろう。

個々の尊重をするためのプラットフォーム

 丸井は元を辿れば金融であり、百貨店を築き、両輪で機能させることで、拡大してきた。だから発想が柔軟なのか。昨今、他の百貨店に先駆けて「売らない店」という視点を持っている。それまで「売り場」と言われたその場所の活用を、変貌させた。

 例えば、普段リアルで接点を持てない、ネット通販系の企業に臨機応変に提供する。

 すると、どうだろう。実物を手に、臨場感を持って世界観を伝える場所となる。長年培ってきたスタッフの接客はそこにリソースとして提供すれば、互いの価値を活かせる。極論、世界観が伝わったものがその“売り場”ではなく、個々のネットストアで売れてくれてもいい。期間や条件などを柔軟にしていくことで、連携する企業が変貌して、それらを全く違う場として活用したのである。

 それを触発させるために、生み出したプラットフォームが「OMEMIE(おめみえ)」なのだ。

 その設計で協力したのが、河野さん率いるフラクタ。なぜなら、河野さんたちは、スタートアップなどの気持ちに近いところにあるからだ。必要とされる要素が何か。それを、助言することで、スタートアップ企業の使いやすいサービスとなることができると考えたからである。

 つまり、これこそが「共創」なのだ。何より、それが必要な理由が、僕にとっては気づきであった。それは、今躍進する企業の多くは、小粒だからである。

 小粒であるがゆえに、共創は避けて通れないのである。

多様性ゆえの小粒。小粒ゆえ集合して価値を生む発想

 そもそも、今の時代は、多様性が重んじられる。

 小さな価値観も見逃さず、一つ一つは小粒であるけど、輝きを放ち、ビジネスになり得ている。とは言え、彼らも成長が必要だ。だから、河野さんが強調したのは、各々の強みを手を取り合う中で発揮して、互いの価値を倍加させること。

 丸井は小粒ではない。だが、そのフロアに集まるスタートアップ同士が、コラボをする。そうすれば、単体では得られない価値を手にできる。それはマルイの持つ価値を活かすことでもある。

 まるでギルドのようだ。考え方を共にする人たちで“集落”を作っていく。小粒であるがゆえに、共創することで、単体では手にできない価値を手にするのである。そしてその原点は個々のブランディングにある。

 それを頭に入れておくと、その後、講演をしたイオン北海道の代表取締役青柳英樹さんの言葉もしっくりくる。イオンにはWAONがあり、それが共創の土台を作っている。兎角、経済圏と称されることが多いが、彼らの場合は、それを北海道の中で、完結させることで、生活圏を作り上げている。

 イオン北海道は、北海道と包括連携協定を行い、紋太ポイント付与WAONカードを発行した。それまで独自のポイントが貯まる「たまるんカード」が利用されていた。だが、それは商店街内で完結していた。それを道内で、紋太ポイント加盟店になることを推奨して、それと合わせて、さきほどのWAONカードを使えるようにしたのである。

地域という集まりを最大化する

 そもそも、WAONカードは電子マネーも実装されているし、それ以前に、広く、道内には、イオングループのお店が存在している。だから、WAONの利用者は多いから、そこに、これらの紋太ポイントを付与すれば、イオングループのお店、および、商店街が相乗りして、回遊していく土台ができる。

 これもまた、企業の垣根を超えた“共創”である。

 一人一人のお客様が、北海道というインフラを満喫するために、そのカードで利用機会を増やせば、各々、お店などの価値が最大化できるわけだ。彼らが行き着く先はどこかというと、健康、ウェルビーイングだという。より生活に密着するところへと直結して、お互いに利点があれば、そこに投資価値も生まれやすい。

 しかも、イオン北海道では多様性の尊重を謳っており、社内でもそういうことに意欲を持つ人材が集まっている。だから、そこを最大化し、そういう場の模索を地域と一体でするわけだ。

 先程の丸井に通じるところがある。資本を持つ企業と、それとは別に個々で輝きを放つ企業が手を取り合う。そうすることで、その健康ジャンルでも、これまでと違った人と企業により、価値を創出することができるだろう。

女性もまた多様性の中で一層羽ばたく

 そして、それには会社自体も変わらないといけないということでもあると思う。この共創というテーマは、実に深くて、それが性別を超えて、手を取り合うという文脈にも着地する。それが、村山らむねさんら女性陣によるトークで気付かされたこと。パネリストはパルコの安藤彩子さん、えづるの小金悦美さん、Reproの千田侑実さん。

 改めて驚くのはわずか30年ほどで、女性の扱いが変貌していること。以前は当然に、会社の根幹を担う「総合職」とそれをサポートする「一般職」という枠組みがあった。暗に女性が「一般職」に就くというイメージもなくはなかった。

 しかし、昨今においては、女性の働き方が多様化している。出産後、仕事復帰して、育児と共に、どうやって共存させるかを考えるようになった。

 それに伴い男性の意識も変容していく。妻と共に一緒に育児に向き合えるかという視点。女性に任せるきりではなくなったのだ。千田さんの話によれば、Reproはそれを受け入れてくれる企業。だからこそ、自分が価値を発揮できていると説き、つまり、一般職という考えが、過去のものになっている。

多様性もまた今過渡期

 また、それらを後押ししたのは、デジタルかもしれない。今や会社で仕事をしなくても良い雰囲気が醸成されたのは、デジタルの功績。iPhoneの登場以来、まるで変わった。だから、どうDXを取り入れながら、それを競争しやすい環境を作るかが肝である。そう小金さんは語る。

 特に、Apple VisionProのようなインフラが出てくれば、生活そのものも変貌する。その時、必ず、iPhoneの登場と同様に働き方に始まり、女性の生き方も変わる。デジタルが進化するほど、女性の働き方はもっと変わることは明白である。

 女性の躍進はその多様性を受け入れることで手にしたもの。でも、どこまで尊重するのかという話が女性の側から出たのが興味深い。

 安藤さんは「色々な色が存在し、それが互いに高め合うことは素晴らしい」としながらも、一方で、多様性といって、なんでも受け入れすぎるわけにはいかないと説く。

 なぜなら、それは組織だからだ。皆、「共通の目的」を定めて、そこに向かって動いている。

 つまり、組織という枠組みにある以上、見極めの大事さを述べていた。尊重しつつも、企業の方向性を逸脱しない関係性のあり方とは。それは、上記のように型にはまっていないからこそ、難しい。組織ごとに、それが必要な尊重なのか、ともすれば、個々人のわがままでしかないかの判断が必要。まさに、過渡期にあるからこそ、企業が向き合わなければいけない部分なのだとわかった。

今までにない価値を生み、共創を生むための土壌

 女性が現場にいて、そして、小粒でも価値観の多様性が受け入れられることで、新しいビジネスが生まれたのも確かだ。僕が思い当たるところでも、ユニ・チャームが『ソフィ』で「妊活タイミングをチェックできるおりものシート」を出しているのは、必要な変化だと思う。価値観を取り入れた好例である。

 だから、組織自体も、働き方を含め、旧態依然から脱却していかなければならない。上記に記した多様性はともすれば、プラスにもマイナスにもなる。それができてこその価値創造だからである。これからの会社が、未来を創るのに、必要なこと。不思議な話、ここまで話したことが全て相関関係を持って繋がっている。

 ここまで「企業」と「地域」と「性別」を引き合いに出して、「共創」という部分で書いてみた。それを果たすには、“縦割り構造”を転換していかなければならない。悲しいかな、今までの日本は、縦割りの仕組みの中で、成長してきた。それに慣れきっている。

 だから、その殻を破るのは簡単ではない。そこで、DXということになる。デジタルを取り入れながら、効率よく、各々の価値を尊重するべきなのである。そこで機能するのは、不思議な話だけど、これは、オムニチャネルを土台とした根本的発想なのかもしれない。

 かくして、オムニチャネルが共創につながる理由も納得できたわけである。

 今日はこの辺で。

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