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ふるさと納税 その後 制度改正に伴い転換期に自治体はどう動いたのか 「さとふる」に学ぶ

  「ふるさと納税」も随分、多くの人に定着した分、時代に合わせて変化を余儀なくされている。特に大きいのは、2023年10月に制度改正を行ったこと。さとふるは、会見を開き、それによって自治体がどう動いたのかを説明。また、それに関連して、改正を知った寄付者の行動などに関しても、詳らかにすることで、ふるさと納税の今を知ることができたので、シェアしたいと思う。

・ふるさと納税受入額は2023年で1兆円の予想

 そもそも「ふるさと納税」のマーケットは拡大の一途を辿り、受入額は令和4(2022)年で9645億円にものぼる。「さとふる」の分析からすれば2023年における受入額は1兆円になりそうだというのだ。これは大きな節目だと言って良い。

 それだけの規模だからこそ、改正に伴う影響も大きい。また、プラットフォーマーとしては、その影響を少しでも軽減できるよう、動かねばならない。その実態把握にとどまらず、彼らの責任感は以前にも増して、その役目も徐々に変わっていくのではないか。それを含めて、彼らの説明に耳を傾けてみたいと思う。

 改正に関していえば、大きく二つの変更がある。具体的には「募集適性基準」と「地場産業品基準」の2つの改正。

 一つ目は、もともとふるさと納税に関連する経費は、50%に収めなければならない。だが、その経費に含まれる対象が増えた。もう一つは、原材料も同じ道府県でなければならなくなった。なので、「地元産である」ことの基準が厳しくなったわけである。

・返礼品の寄付額の値上げ

 では、自治体はそれを受けて動いたのか。それが顕著にデータに現れる。面白いのは、7割の自治体が改正に伴う対応をしているのに、7割の事業者が対応をしていない。

 つまり、ことの本質は、自治体におけるオペレーションなど、経費に関する部分に概ね、集約されそうだ。続いて、明らかにしたのは、制度改正を受けてというよりは、ここ最近、自治体が行った施策は何かを調査したデータ。

 興味深いのは、7割近くが、寄付金の値上げを行なっていることだ。改正だけでなく、昨今の物価高などもその要因と思われるが、制度改正の影響をダイレクトに受けているのは自治体だと言って良い。

・プラットフォーマーとして自治体に何ができるか

 だから、「さとふる」としては、このデータが示すように、主に自治体への配慮を優先させようとするわけだ。その一つが、「まとめて割」の新設。これまでも、さとふるは寄付の「受付後の業務」を一括集約・代行するサービスを行っていた。それが「おまとめらくらくサービス」。

 つまり、インフラ周りの強みを活かして、他のプラットフォームの部分も彼らがまとめて行う。それを「サービスとして」提供し、委託料を徴収していた。だけど、「まとめて割」はその委託料を無料にしたものであり、彼らにとっては身を削る決断である。

 でも、それが何を意味しているかを考えることの方が大事。それだけ経費に含まれる額を減らすことが、今、「ふるさと納税」全体で求められる最優先事項だからだ。これにより、極力、今までと変わりないラインナップで、かつそれが対価に見合った寄付額で、今と同じ品質を高く保ち続ける可能性を残した。

・駆け込み需要的に寄付者が増加

 実際、それらが多くに浸透したかどうか。彼らのサービスも10月からなので、その判断を今するのは早計だ。ただ、茨城県ひたちなか市は「値上げせずに済ませることができた」と歓迎する向きも見られて、出だしはまずまずと言ったところ。

 今後は、導入したのがどれだけの数でどれだけの成果が出たのか。それを今後、進捗を提示していくことは必要だ。改正に対しての解決策が、安易に「値上げ一辺倒にならない」ことを祈りたい。

 また、この改正に関しては各所で報道がなされた。それに伴い、駆け込み需要的に、9月の寄付金額が急上昇した。これ最近の動きでは特筆すべき点だろう。「さとふる」単体で見ても今年の9月の寄付は、前年対比で4.5倍以上。

 当然ながら、彼らの調べで、自治体9割が「9月の寄付が増えた」と答えている。言い換えれば、それだけ一般の消費者に「ふるさと納税」は関心が高いものだと言える。

・まだまだ変化の最中

 これをさらに、自治体の事情などを合わせて考えれば、「返礼品」の中身すら変容しそう。経費の占める割合が極力、膨れ上がらないようにという意味で、増加傾向にあるのは「体験型」の返礼品である。生産や物流にかかるコストを、軽減できるからだ。

 勿論、それだけでなく、本来の目的である地元に来てもらえる。その意味合いでの価値があるから、そこに拍車がかかる。それは自治体への調査でも顕著に見られる。

だから、これもトレンドとして実際の登録数で数字が表れている。

 また、マーケットとして定着したからこそ、その時々の時代背景を踏まえた、あの手この手の工夫が見られるわけだ。それ以外でも、一部で、日本の水産物の輸入が停止されるなどの動きが見られた際、魚介・海産物カテゴリーの登録数は約7倍増加、帆立カテゴリーのそれでは9.3倍増まで増えた。

 なぜだろう。それは、ふるさと納税を通して、水産事業者を支援する動きがあったと推測されるからだ。単純にあるものを出すだけではない。時代を読むマーケティング力が求められ始めているのかもしれない。

・時代背景やニーズに合わせて変貌していく

 地道なことであるが、レビューなどの評価が高まるための工夫など、徹底している自治体の返礼品は、例年上位に来る。1位の北海道登別市の「オホーツク産ホタテ玉冷」、2位の福岡県飯塚市の「鉄板焼きハンバーグ」は毎年の常連となっている。

 だから、思うのだ。「さとふる」などプラットフォーム側が役目はさらに増えていくと。上位に来るための自治体や事業者の工夫を自治体同士でシェアする必要性も出てくるだろう。

 また、確かに成長は素晴らしい。けれど、実際、大都市圏においてはそもそもの税収が減るなどの傾向が見られているのも事実。「ふるさと納税」の制度上、やむを得ない。けれど、日本全国がバランスを保ちながら、そちらにも配慮していって欲しい。

 これだけ市場が拡大すれば、その分、軋轢は増えるだろうから。

 思えば「配送」における負担軽減では「事業者」を想い、「まとめて割」では「自治体」を想ってきた。それが「さとふる」の変わらぬ姿勢である。だからこそ、全ての国民と自治体が納得する、完成された「ふるさと納税」を実現させてほしい。これまでの努力を踏まえて、期待をしたいのだ。

 今日はこの辺で。

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