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楽天×日本郵便─宅配クライシスを超えた“第3の物流時代”への必然的連携

楽天と日本郵便

 ネット通販市場の拡大に伴い、ここ数年「宅配クライシス」とも呼ばれる深刻な問題が浮上している。2017年時点で配送荷物の総量は42億個、10年で10億個も増加。ドライバー不足や配送料高騰が顕在化している。とりわけ、楽天市場のような大規模ショッピングモールにとっては、出店店舗や顧客への影響が大きい。売上が伸びたとしても配送網が支えきれない事態が起こり得るのだ。

  そこで、楽天はかねてから「自分たちである程度、物流インフラを担う」構想を打ち出してきた。

実際、、、、

  • • 倉庫の自動化
  • • 新たな配送拠点の開設
  • • ドライバー確保や“送料無料ライン”の導入

 などに大規模な投資(総額2000億円規模)を行い、宅配クライシスを打開しようとしてきたのである。

関連記事:楽天 “物流”への考え方 彼らが取り組む 利点 とは?

 しかし、すべてを自社単体でまかなうにはリスクも大きい。配送網の確立だけでなく、ドライバーの手配や配送料金の折衝。さらに店舗・顧客のニーズを最適化するには、相当なスケールの設備投資とノウハウが求められる。

 そこで、楽天は「出店店舗の受注予測」を活かし、外部の専門家、つまりプロの配送会社と連携するという選択肢に活路を見出したのだろう。

日本郵便との事業提携発表──“必然”だったのか

 2020年12月24日、楽天株式会社と日本郵便は記者会見を行い、戦略的な事業提携を発表した。日本郵便と言えば、全国津々浦々に郵便局というリアル拠点をもち、長年培った配送網やノウハウを持つ“配送のプロ”である。

 楽天が掲げる「第3の物流の時代(企業から人)」において、両社の協業は大きな転機となるだろう。

1. データ連携による効率アップ

 「宅配クライシス」で問題視されていたのは、誰が・いつ・どれくらいの商品を注文するのかを、配送業者が十分につかめないまま対応している点である。

 一方、楽天は各店舗の受注データをまとめて把握し、販売予測を立てることができる。たとえば話題の新刊本が爆発的に売れそうだ。そう分かった時点で、在庫をどこにどう振り分けるか、配送網をどう準備するか。それを物流サイドに共有できるのである。

 そこに日本郵便の全国配送ネットワークが組み合わさる。そうすれば、需要のピークを先回りして配送体制を整備し、効率的に届けることが期待できる。

 両社がデータをシェアする。そうすることで、無駄のないスムーズなサービス提供を実現。結果的にドライバーの負担軽減や顧客満足度の向上にもつながるのである。

2. 楽天“ワンデリバリー構想”と省人化への布石

 楽天は「ワンデリバリー構想」を掲げている。それは、倉庫からの出荷・配送を一元的に管理し、省人化や自動化を推進する動きを示す。ドローンなど新たなテクノロジーも研究中で、物流の先端領域へと踏み込む計画。

 一方、日本郵便は全国に張り巡らせた拠点やスタッフを活かして地域密着のサービスを展開している。だから、莫大な物量にも対応できる体制がある。これらを組み合わせれば、ネット通販の急拡大に合わせて処理力と品質を両立させる土台が整う。

3. 郵便局×楽天モバイルなど、リアル店舗での連携

 日本郵便を傘下に持つ日本郵政株式会社の取締役代表執行役・増田寛也氏は、こう語る。

 「今後この連携をさまざまな企業に開放していく」と。たとえば、郵便局を楽天モバイルの販売拠点にすることなどもその一例。

 OMO(Online Merges with Offline)の潮流が強まっている。その中で、「リアルとネット」が融合した店舗形態は今後さらに加速するだろう。店頭在庫をネット受注に活かす。店員が物流の最適化を意識する。そんな“配達の効率化”を軸とした新しい流通モデルが浸透していく可能性が高まる。

なぜ“必然”だったのか──両社の狙い

• 楽天側の狙い

  • ・自社だけで構築するには大きな負担がかかる配送網を“配送のプロ”と組むことで効率化。
  • ・受注データを活かして予測的に倉庫・配送を最適化し、宅配クライシスを克服。
  • ・日本郵便の全国拠点を通じて、リアル販路やサービス拠点を確保し、OMO時代に備える。

• 日本郵便側の狙い

  • ・楽天市場の巨大な受注データや物量を取り込むことで、配送の生産性と利益率を向上。
  • ・通販需要の増大に伴い、従来の「人から人」「企業から企業」を超える“企業から人”領域でも存在感を高める。
  • ・郵便局網を活用した新ビジネスモデル(楽天モバイルの販売など)で、収益源を多角化。

 宅配クライシスの流れから見ても、双方が足りないピースを補完し合う形になっており、まさに「必然的なアライアンス」とも言えるでしょう。

これからの“第3の物流時代”に向けて

 コロナ禍で「企業から人(通販とお客様)」への物流需要が急増している。そんな今だから、リアルとネットの融合(OMO)はさらに進む。

 店舗にとっては在庫管理・出荷体制の最適化。配送業者にとってはドライバー確保とネット需要対応。それらが必須課題となるだろう。その中で、楽天と日本郵便のように垣根を越えて連携する動きである。それは、単なる提携を超えた“次世代インフラ”の変革を意味している。

 日本郵便にとっては、全国の郵便局をローカルの物流拠点として活性化させ、地域住民に役立つサービスを再整備する好機でもある。一方、楽天は「ワンデリバリー構想」やドローン配送、さらには店舗融合を視野に入れ、自前+連携の二刀流で宅配クライシスを超えようとしている。

 これまでの「既存の価値」を今一度見直し、テクノロジーやデータ連携を活かして組み合わせる。これが“第3の物流時代”を支える鍵となるのではないだろうか。

 デジタルを起点とした日常の変化は、今後さらに加速するだろう。まさに、今からこのインフラを盤石にしておくこと。それが、両社をはじめとする企業にとっての急務なのである。

 今日はこの辺で。

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