Pay ID 決済で解説 BASEの真実 鶴岡社長の想い

昨今は誰もがECサイトを運営できる時代。そんななか、多くの人が知っているサービスといえば「BASE」ではないだろうか。僕は、このBASEを運営する鶴岡裕太社長は“信念の人”だと思っている。その証拠に、最近「BASEアプリ」が「Pay IDアプリ」に名称変更した。
なぜ、このタイミングであえて名称を変えたのか。それはBASE社が持つ「ECを変えたい」という想いがより強く表れた結果だと思う。ここでは、その背景や鶴岡社長の想い、そしてBASE社の真実を少し掘り下げてみたい。(※一部アプリとしてのBASEと分けるべく、BASE社と表記している。)
BASE は Pay ID の力でその価値を発揮
1.BASEとは
そもそも「BASE」とは、誰でも数分でネットショップを作れるサービスだ。その手軽さから“インスタントEC”などとも呼ばれる。ほんの数分あれば、初心者でも自分のECサイトを立ち上げられるほど簡単。今ではその“手軽さ”が世間に広く浸透している。
実際にBASEを通じて誕生したお店は、すでに160万店を超える。これだけの数が増えた要因には、もちろん「無料で誰でも始められる」という大きな魅力があるわけだが、もう一つ見逃せない要素がある。
それが、後述する「Pay ID」だ。その価値に気づいていない人が多いので、敢えて書く。
2.Pay IDとは
BASEの大きな革命は、この「Pay ID」を“標準で”搭載したところにある。
つまり、ユーザー(購入者)はPay IDのアカウントでクレジットカードなどを登録すれば、対応する店舗ならどこでも簡単に決済できるようになる。これを常時、BASE開設時、セットで導入できるようにした。ここがBASEアプリの真骨頂だ。
だから、変な言い方かもしれないけど、BASEはECサイト構築の会社というより、決済の会社なのだ。
つまり、BASEで作ったお店にとっては、「どうやって決済を導入するか」というハードルが最初から下がっているのだ。なぜ、決済をECサイト構築アプリに最初から実装する必要があったのか。
・ECによって決済の重要性を知らしめた
というのも、従来のECサイト構築では「サイトを立ち上げる契約」と「決済サービスとの契約」は別々。決済導入には厳しい審査が必要だった。
そのため、信用や実績のない個人がネットショップを始めるのは難しい。途中でつまずいて断念するケースも多かった。
しかしBASEは、サイト作りの手軽さとともに、決済の導入を一括でサポートした。ECサイトを作れば、彼らの場合、一緒に決済の環境も整ってしまう。僕はクリエイターとの繋がりもあるから、どれだけありがたいかわかる。良くも悪しくも、商売っけがない。繰り返すが、この決済の環境の壁で、諦めてしまうのである。
それがBASEなら必要ないのだ。いうまでもなく、これによって、ECを始めるハードルが一気に下がった。いきなり商売ができるのだから。コロナ禍でネットショップの需要が急増したのも、この仕組みによるところが大きい。
3. なぜアプリ名を「Pay ID」に変えたのか
そんなわけで、これまでBASEは、ショップのオーナー側と購入者側、両方を「BASEアプリ」としてカバーしていた。しかし今後、「購入する人」が使うアプリは「Pay ID」という名称に一元化される。
“なぜ今、名前を変えるのか?” 。ここには鶴岡社長の変わらぬ想いが隠れているのだ。
BASE社は「売り手」と「買い手」をわかりやすく分け、「お店を作る人=BASE」「購入者=Pay ID」という関係をはっきりと示そうとしているからだ。
その裏には、「光を当てるべきはBASEの“出店者”であり、それぞれの店の個性である」という考えがある。
彼がBASEをやろうとしている真意は?
1.クリエイターが誰でもECでその才能を発揮
それを紐解くには、鶴岡社長の“想い”を知るべし。少し寄り道をして話をしたい。
僕が鶴岡さんに興味を持ったのは、以前「rooms」という新進気鋭のブランド・アーティストが集うイベントで、思いがけず彼に出会ったのがきっかけだ。
「rooms」はデザイナーやアーティストが作品を展示。セレクトショップや百貨店のバイヤーとマッチングする場。才能があればメジャーな流通に乗るきっかけにもなる。例を挙げれば、『Q-pot.』などもここから大きく羽ばたいた。僕はそんな「才能の原石を発掘する」姿勢が好きで足を運んでいたのだ。
けれど、その場に“ネット系起業家”が来るイメージはない。だから、鶴岡さんがいたことに意外に感じた。
実際に話をしてみると、「BASEは、一人ひとりが持つ才能を応援するためにやっているんです」という言葉に強く共感した。彼は「rooms」の精神を深く理解し、“個”の才能を尊重しようとスポンサーとしても関わっていたのだ。
だから、僕はその姿勢に共感していた。そこでバイヤーなどが才能を発掘し、仕入れて、お店に並べば、そのブランドは活路を見出せるからだ。
素晴らしい才能はここから巣立っていった。まさに、そこに鶴岡さんがいたのである。姿勢としてはBASE社と同じではないか。
2.才能を活かし羽ばたく為に
それで彼と話して、彼の事業に対する真意が垣間見えた。驚いたし、心底共感した。一番印象に残っているのは「一人一人が持つ才能を応援する為にBASEをやっている」という事だった。
「rooms」が大切にしていたアーティストの才能を大事にしようという想い。そんな彼だから当然、そのポリシーに深く共感していたのだ。彼はその想いが真意であるかのように行動で示し「rooms」自体へのスポンサードをしていたのだった。
こうした想いは、今もまったくブレていないのだろう。BASEという会社は「売り手」=店長が主役。だからこそ、購入者が使うアプリの名称を「Pay ID」に変え、「販売者が目立つ舞台をBASEが提供する」というスタンスを再確認したわけだ。
今「Pay ID」アプリになる意味をかんがえてみよう。
もし“モール化”してしまえば、「BASEで買った」ことが主役になり、個々のオーナーやクリエイターよりも「BASE」というプラットフォームばかりが目立ってしまう。鶴岡さんはそれを望んでいない。あくまでも「あなたのショップ」が輝くことを優先させたい。そのためのアプリ名称変更だと言える。
販売者と購入者の利点を明確に分ける
1.ショッピングモール型“経済圏”との対比
他社が築いてきた“経済圏”は、「大規模モールで集客 → グループ内の決済サービスで購入 → ポイント還元でさらなる利用促進」という流れを作る。楽天なら「楽天カード」、ヤフーやソフトバンクなら「PayPay」といった形だ。これらは経済圏を広げるうえで非常に有効で、結果として両者にとってプラスになる。
しかしBASEは、そのようなモール型のアプローチはとらない。「BASEポイント」などをつけて、ユーザーに“BASE”としてのブランドを認知させる道もあったはずだが、それをしない。
2.経済圏との明確な違い
理由は明快だ。「モール」としてブランドを押し出すと、どうしても“個店”よりもBASEが目立ってしまうから。BASEが重視したいのは、まさに“個々のショップ”や“オーナーの個性”であり、それらが主役であるべきだと考えている。
だから、「BASE」はあくまで「ショップを立ち上げたい販売者向けのサービス」として。対して、「Pay ID」は「購入者のためのプラットフォーム」として切り分ける。そんな風にサービスを明確化していくことで、BASEの本質的な役割が揺らがないようにしているのだ。
光を当てるべきは個々の店長
1.だからBASEはオーナー第一主義と謳う
鶴岡社長が「rooms」の時、示した姿勢に象徴されるとおりだ。BASEが目指すのは、一人ひとりの才能を埋もれさせないこと。そのために「個店」を前面に押し出したい。
そこで考えたのは「BASE」はあくまで販売者向けのサービスである。そう宣言することだった。なぜならそれは個々のお店の個性を重んじる為で、極論、BASEというサービスは購入者側には認識されなくていい。
つまり「BASE」自体はあくまでショップ開設という“入口”を提供する役目に徹する。そして、購入者は「Pay ID」という別の名前で支援していく。
だからこそ、利用者としては「BASEで買う」というよりも「〇〇さんのお店で買う」という認識のほうが自然だ。BASEはその裏方としての機能に注力し、もっと言えば購入者側に“BASEの存在”を意識させなくてもいいという考え方なのだ。
2. 「Pay ID」は購入者のメリットを創出する
一方で「Pay ID」は、クーポンやCRM施策など、購入者の利便性向上に特化した機能を伸ばしていく。いわゆる「お得なサービス」は店のためというより“買い手(ユーザー)のため”。その結果として店も活性化する。
この仕組みをうまく運用すれば、「BASE」で生まれた160万もの店舗と「Pay ID」を通して買い手をスムーズにつなぎ、双方の満足度を高められるだろう。
結びに
だから、僕は思うのだ。鶴岡さん、あなたは「あの時の考え方と少しも変わってない」。
今回のアプリ名変更を通じて、BASEが持っている真の姿—「個々の才能を応援する」—がより際立ったように感じる。
モール型の経済圏が生み出す利便性やポイント還元の仕組みももちろん大切。だが、一人ひとりや一企業ごとの世界観を大事にするアプローチもまた、確かな意味があると思う。
これから、BASEとPay IDはますますそれぞれの役割を高めていくことだろう。そうやって、誰もがネットで自由に“売り買い”できる世界を広げていく。そんな未来に、僕は大いに期待している。
いずれにせよ、これらが共存していく中で、一人一人、一企業一企業が輝く世界が生まれることを切に祈るのである。
今日はこの辺で。