KDDIとAIがもたらす可能性、そして企業の未来 潜入!KDDI SUMMIT
AIが取り沙汰されからこそ、企業ごと、どう関わりを持っていくのか。それが気になりKDDI SUMMIT 2024に足を踏み入れた。KDDIの場合、通信で培ったデジタルインフラにAIを取り入れて、対企業でエコシステムを作ろうとしている。彼らには資金力もあるし、業務資本提携などで、最先端企業との関係とも密に、その土台の精度を高められる。例えば、ELYZAなどの企業の技術を駆使して、法人向けのソリューション提供を強化していることからもわかる。そこにAIを活用した未来もちらつく。
・KDDI高橋さんの見解:モバイルからAIへ、次なる成長の礎
同イベントの冒頭に、登壇したのがKDDI代表取締役の高橋誠さん。彼は「2050年の世界 見えない未来の考え方」という本を取り上げ、こう述べた。「日本は、高齢化社会のエキスパート」であると。実際、僕もその本を読んで、そう書かれているけど、大事なのはその本質を掴むことである。
どういうことか。それらをネガティブに捉えてしまえば発展性がない。しかし、“エキスパート”だからこそ、先駆けて手がけられるテクノロジーがあるはずだ。そう考えるのが、高橋さんの主張だ。
例えば、高齢化社会が進み、労働人口が減れば、人手不足になる。けれど、この状況を彼は「チャンス」と見なす。それを機に、IoTとAIがもたらす通信基盤の需要拡大に対応することが重要だと述べるのである。
そういう視点で、世の中の企業のあるべき姿をデジタルで見せていこう。それがKDDIの新たな考え方だ。
・通信がしっかりしているからデジタルで企業に寄与できる
彼らはそれまで、通信でBtoCを主にメインに仕事をしてきた。けれど、BtoBで企業を相手にすることを強調している。この部分を推進していくため、これまで培ってきた通信インフラを活用していこうというわけだ。
勿論、今まで通り、通信は基地局の増設など、通信品質の向上に務め、信用を高める。日本全国どこでも「安心して」つながる環境を作り出す。ここが核だ。
ただ、この信頼できる土台があるから、そこの上に乗るデジタルを有効活用して、今度は企業へと貢献していこう。そういうことなのだ。
面白いなと思ったのは、それらの一連の動きを、『WAKONX(ワコンクロス)』と呼んでいる。ん?どういう意味?そう思ったが、和魂洋才なのである。
それは日本の魅力を語る。海外の要素を取り込みつつも、日本独自のサービスに変えていくのが日本はうまい。海外の機能に乗っかるというよりは柔軟性を持って、日本に必要な価値をデジタルでもたらそう。その意味合いが強そうだ。
そこで最初に話した資本力がモノをいう。例えば、ELYZAという会社がある。彼らはLLM(大規模言語モデル)をリリースしており、活かされるのはAIだ。
最近、KDDIの傘下に入ったスタートアップ企業である。
・ELYZAに見る新しい価値の創出
海外のサービスを取り入れながら、日本人に合わせた言語理解とそれを的確に解決する生成AIの頭脳を駆使して、日本企業のニーズに応えるのが、ELYZA。彼らが賢いのは全てを自前でやってしまうと、莫大な費用がかかるとわかっていること。
プラットフォームを上手に取り入れながら、日本流にアレンジしている。具体的には、JR西日本のコンタクトセンターに用いられている。これは相性がいい。まさにコールセンターなどに見られるオペレーターとお客様のやりとりには、言葉が絡む。LLM(大規模言語モデル)が活かせるわかりやすい場である。
ここで、少し話が逸れるけど、この登壇と合わせて、このイベントではブースが用意されていて、失礼ながらELYZAに僕はこう尋ねた。
日本国産でやったところで、そのAIの精度は海外よりも落ちるのではないかと。
しかし、それは違っていた。当然、グローバルな視点では、正直、精度は落ちるだろう。けれど、大事なのは、そこではない。
・BtoBの文脈でそれらを無限に応えていく
それを使いこなす側の技量である。
例を挙げれば、同じバットを使っても、草野球チームと大谷翔平選手では、飛ぶ飛距離が違う。飛ばすこともできないのに、無駄に性能が良くても仕方がない。その逆の然りで、そこまで飛距離を飛ばす必要がないのに、無駄に飛ばしすぎても仕方がない。
つまり、その時代の日本企業に求められている部分に特化させることこそ、国産でLLMなどのサービスを提供していく意味がある。話を戻せば、コンタクトセンターは、まさに、言葉を扱う仕事だから親和性が高い。
多くの問い合わせに対して、それをログとして残し、解答に活かす。あるいはそれをもとに、オペレーターが即座に課題に答える材料として、それらのサービスを活用。そうすることで、オペレーターの応える中身の力を底上げする。
極論であるけど、作業というよりそれはそれらAIを駆使して、コンサルタントに近い提案すら可能になる。つまり、それは人間自体の成長を意味する。
それらが機能するのは、デジタルというインフラの中。KDDIが通信の土台を盤石にさせるほど、それの精度がアップする。だから、その伸び代として捉えているのが、対企業向けのソリューション。鍵を握るのが、AIの導入であるというわけだ。
だから、最初の話に戻る。KDDIはこれまでの通信基盤を活かし、AIを取り入れることで新たなビジネスチャンスを模索している。
OpenAI長崎さんとの対談:AIとKDDIのアセット活用による未来展望
この日、同イベントには、そのAIの重要性を踏まえて、OpenAI日本法人、長崎社長を招待した。OpenAI自体の話はこちらの記事に譲る。
関連記事:OpenAI 日本法人 長崎社長語る 生成AI その成長と僕らが歩むべきその未来
その後、OpenAIの長崎さんとKDDIの高橋さんとでディスカッションも行った。彼らは、やっぱり日本が直面している少子高齢化など、社会的課題は、AIを通じて解決できる可能性が高いという意見で一致。
面白かったのは対談の中でローソンの話題が上がっていたこと。
高橋さんが鋭いのは、小売店の果たす役割の変化を語っていたことだ。つまり、コンビニエンスストアでいえば、物販だった。けれど、そこから顧客との繋がりを深める方向にシフトしている。その部分で役割は変化したというのだ。
それこそがデジタルの果たす使命。AIは、その変革を支える重要な技術になると考えていると説く。長崎さんもうなづく。
例えば、フランチャイズ経営者と本部とのコミュニケーションが効率化されるだろう。そして、在庫管理やマーケティングもより精度が高くなるとも語った。
・企業や人に求められる「今、自分たちは何がやりたいのか」
そういうベーシックなところに加えて、KDDIがその付加価値を発揮する。KDDIが提供する通信ネットワークを活かし、リアルタイムでのデータ分析や顧客対応が可能となれば、ビジネスの即応性が高まる。
そう未来について語ったわけである。
逆に、これらの対談でOpenAIの姿勢も鮮明に見えてくる。
つまり、KDDI然り、彼らは色々な企業と組んでいる。ただ、それは異なる事業形態に基づき、異なるデータを持っている。だから、生成AIの使い道が異なるわけで、関わるほどにOpenAIなどの会社は躍進する。
インフラは画一的でありながら、企業のやることは各々より個性的になる。
すると、彼らに多額の出資をするMicrosoftの存在はその1パートナーに過ぎないとわかる。データが集まり処理をしていくほど、そこで彼らのリソースは自らの成長に繋がり、そのつながりを通して、Microsoftは利点を得ることができる。
大事なのは、生成AIを使いこなす企業側だ。何をしたいのかという明確なメッセージを持つことなのではないか。
改めて、なんでもできる時代だからこそ、難しい。どうAIを活用して、その個々の企業の中にある、さらなる高みを見つつ、企業価値をあげていけるか。そこが今の人類に与えられた大きな課題である。
今日はこの辺で。