分岐点であり「DEPARTURE」世界が注目する「Skater JOHN」、渋谷パルコの個展での確かな一歩
産声を挙げてわずか6年ほど。日本発のコンテンツが、海外で火がつき、それを引っ提げて、渋谷パルコという一等地で、“初めての”個展を行う。これが今なのだ。そのコンテンツは「Skater JOHN(スケータージョン)」。人で溢れ、熱気に包まれるGALLERY X BY PARCO。ここで、一際、集まる皆を気遣う人の良さそうなお兄ちゃん(失礼!)こそ、世界中から注目を集めるこの「スケータージョン」の仕掛け人、シバチャンである。
イラストレーターでありながらプロデューサー
とにかく、僕が話した印象で言えば、彼は“プロデューサー”である。実際にはイラストレーターであり、ブランドデザインの生みの親である。でも、そう思わせる理由には、彼の頭に確かなこのブランド設計のイメージが存在していたことをうかがわせる言葉が多く聞かれたからだ。
そのデザインを見てみることにしよう。ブルーを基調とした色使いと、印象的な犬のキャラクターで表現されたこの世界。
それは、いわゆるイラストレーターの描く従来のイメージよりも洗練されていて、ファッショナブルである。なにせ、産声を上げたのは、2018年で、わずか6年ほど前の話。
そして、ボーダレスな今の時代を象徴するのは、最初のブレイクポイントが、フランスにあったからだ。そのフィギュアの購入者がフランスで、インスタグラムに投稿したことで、世界から注目を集めることとなった。2020年のことで、数年前の話である。それだけでも、シンデレラストーリーだ。
これだけのブレイクをシバチャン自身は予測していたかと尋ねてみたが、多分、予測できていたのだろう。謙虚な姿勢を見せながらも、「想定よりも(ブレイクは)早かった」と語り、その自信を見せたのである。
「ジョン」の誕生秘話
これは言っていいのかわからない。けれど、敢えて言わせてもらえば、少なからず、この洗練されたデザインが、かつての裏原宿にみられるファッションブランドに影響を受けたものであることを彼自身の言葉が匂わせていた。
確かに、ストリート系を思わせるデザインの数々。
とはいえ、そんなことは思わせないほど、彼の独自の世界観が席巻している。ただ、だからこそ、ブランドとして認知してもらうために、アイコンが必要であった。そのデザイン性が、そのブランドによるものであることを認識させるために、「ジョン」という犬のキャラクターを登場させたわけである。
では、この「ジョン」を発想したきっかけは何か。それはMLBをテレビで観戦していた時のこと。彼はそこには自由なイメージを抱いた。青空の下で野球をやるその雰囲気が、まさにそれだ。そして球場を越えて、海に落ちたホームランボールを、ファンはカヌーで取りに行く。
大人になっても自由気ままに生きるその姿に着想を得て、「ジョン」を書き起こした。
「ジョン」はニューヨークヤンキースのファンでスケボー、サーフィン、ヒップホップが好きなニューヨーカー。 何故自分が犬なのかも考えもせず、ただただ遊ぶ。更に女性にモテモテ。
そして、こうメッセージを込めて送り出す。 「今よりもっと自由に、なりたい人たちへ、愛を込めて」。
商品で一層引き立つデザイン性
だから、「ジョン」をアート作品のようにして、商品に介在させることができた。ある意味、それは、キャラクターグッズと言い方もできるだろう。けれど、彼の視点が、他のそれとは違うのは、きっと、そういう理由があるからだ。
ファッションブランドのようなおしゃれさを秘めている。感度の高い大人も関心を集めるのも、納得である。
実際、海外で脚光を浴びたこのブランドは、その後、台湾のカフェからオファーを受ける。それによって生まれたそのカフェは、まさにこのブランド仕様であった。だから、彼の商品作りのこだわりも発揮される。その場を体感した人は、その世界に深く酔いしれ、ブランド自体のファンとなっていく。
そして、彼の立場をより明確に形作ったのは、時を同じくして、着手した「NFT」。
当時、NFTは熱狂の最中にあった。それゆえ、彼のデザインは一層、人目を引くこととなった。ただ、NFTの存在が大きかったのは、ファンとの距離感を近づけたことだ。
「NFT」は持ち主を明示する分だけ、クリエイターとファン、そして、ファン同士の距離が近い。それで、ファンとの一体感が生まれやすい。そういうことで、そのデザインに惹かれたもの同士、「TEAM JOHN」という集まりが自然発生したのである。ここが時代の潮流といえるところだろう。
NFTをフックにより熱狂の度合いが高く
「TEAM JOHN」を筆頭に、ファンたちはスケータージョンのアイコンにして、シバチャンと同じ立場で、このブランドの動きをSNSで追っていく。だから、ブランドの裾野は自然な形で広がり、ファンの熱狂は最大化していくのである。
そして、初の個展を「渋谷」という発信地、時代を牽引する「パルコ」で行う快挙である。ただ、彼はその達成感に酔いしれることなく、真剣な眼差しで、こう語ってくれたのだ。
「この渋谷パルコでの個展が、分岐点となる」。
今回のために、新しい商材を作成して、デザインも書き起こした。当然、時間と工数を丁寧にかけてやってきた。それこそが、彼が今の力量を試せるそれだけの最高のステージだと考えている。その結果をもとに、また次なるステージを考えるというのだ。
そうか。だから、この個展のタイトルも「DEPARTURE」である。つまり、「出発」なのだ。
この通り。
彼の作り出す商品は、アパレルでも丁寧な袋詰めがされていたり、パッケージ一つにもこだわりが見られる。だから、モノを買うというより、世界観を手に入れたくなるのだ。レジを見れば、それを手にして並ぶ人で、行列ができていた。いわずもがな、次々とその数が減っていく。
分岐点であり、「DEPARTURE」
でも、すごく冷静に彼はこう口にするのである。
「結果いかんでは、ふりだしに戻って、ゼロからやるくらいの気持ちになるかもしれない」
でも、その一方で、その逆で、「さらにいけると確信できれば、それは、このブランドにとって、さらなる飛躍と、大きな展望を描ける足掛かりとなる」。
確かに、分岐点であり、「DEPARTURE」。
それで、僕は思ったわけだ。彼は、プロデューサーなのだと。勿論、デザインを手掛けているけど、描くだけにとどまらない設計をしっかり、彼は描いている。だから、人柄という言葉では片付けられない、人を重んじる姿勢が宿っている。
出会った人と人とを上手に引き合わせながら、このブランドの価値を底上げしている。
デザインに魅了された人と人とで広がる新しい世界
そんな彼の人を重んじる姿勢で一つ、エピソードを紹介したい。実は、このイベントより半年前に、僕は、彼に偶然、出会っていた。それは純粋に知人のクリエイターから勧められたから。それを聞き、「西武渋谷店」へ駆けつけ、同ブランドのポップアップストアに顔を出し、これを購入した。
その商品を購入する合間に、彼とは二言、三言、言葉を交わしただけ。それでもこの個展に来て、僕が話しかけると、彼はその時のことをしっかり覚えていた。
その低姿勢で物腰柔らかな、人を惹きつける姿勢。その一方、時折、真剣な眼差しで、デザインの捉えられ方に細心の注意を払い、関係者に声をかける姿も何度か、目にした。彼がこのブランドを通して、多くの人を巻き込み、ムーブメントを起こす理由が分かるような気がする。
確かに、、分岐点であり、「DEPARTURE」。
クリエイター本来の感性を持ちながら、一方で冷静に、計画を組み立てて、未来に繋げていく彼の姿勢に、確かな道筋を感じた。その真剣勝負の分岐点は、未来に対してプラスに働くことを僕は、その熱狂と彼の行動で、確信したのである。
今日はこの辺で。