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北国からの贈り物がヨーロッパの息吹を伝える理由

 そこには農家の魂が見られた。何気なく僕が関心を抱いた商品が「ヨーロッパ野菜」である。それを販売するのは「北国からの贈り物」というサイト。あれ?北国?そう思っては見たものの、それは正しくて、北海道で、普段はカニを販売しているECサイトで、最近脚光を集めているのが「ヨーロッパ野菜」なのである。その成り行きにも農家の愛を感じるわけで、その辺を今回の記事では探ってみたのだ。

北国からの贈り物はいつの時代もチャレンジ精神に溢れる

 「北国からの贈り物」については北海道の老舗のECサイトである。代表の加藤敏明さんが北海道出身であり、東の方に弟子屈町という小さな町があるのだが、そこが生まれ故郷。親の代から、加藤水産という水産会社を営んでいたのだ。とはいえ、実は、この加藤さんは、最初から商売人をやっていたわけじゃなくて、最初は建築家を目指していたという。

 ただ、当時百貨店ではキロあたり1万円だったタラバガニを3000円で直送したことが社内で評判が広がっていき、そこで初めて、気付いたと。加藤さんにとってはなんら珍しくないものであったはずの蟹が、東京の人たちにはこれほど価値があるのだと。そこで、独学で通販を学んで始めたのがこの店舗だそうで、今から20年も前。ネットも浸透していないECサイトの黎明期に立ち上げて、北海道の名物店舗にまで躍進した。

 つまり、アイデアマンでチャレンジャーなのである。話を聞いていて、センスがいい。例えば、ターゲットに合わせて、お店の看板を変えて2店舗やっていること。カニというと年配のイメージが強い。あえて、北海道から美味しいものを取り寄せるというコンセプトにして、もう1店舗は差別化したのである。在庫は裏側で同じなのに、若い人向けの入り口を作った。なぜ、この話をはじめにしたのかというと、こういう考え方の中に「ヨーロッパ野菜」に繋がる片鱗があるのだ。

ヨーロッパ野菜は埼玉の農家の思い?

 今回のトピックである「ヨーロッパ野菜」を始めるきっかけは、埼玉の農家との出会いにあった。彼らはいろいろなところに足繁く通う中で、メーカーなどが集うイベントにたどり着く。そこで毎年その新しい商材を探しにいくことにしていて、その中での見つけた一つがヨーロッパ野菜である。

 実は、埼玉県の農家の方々が集まって「ヨーロッパ野菜研究会」という集まりを結成していた。熱心にその研究を続けているのを見て、そこに着想を得たわけだ。

 確かに「北国からの贈り物」では、十分、カニなどで売上は立っていた。ただ、上記の経緯からも分かる通り、それら以外の世代や商品にもずっと関心を持ち続けていた。果たして、自分たちの持っているリソースを使い、若い世代に対して何を売ることができるのだろうか。特にその意識が強くなって、すでに色々拡充していた中で、この華やかな「ヨーロッパ野菜」にも出会ったわけだ。

 論より証拠。この見栄えを見てほしい。

 このヨーロッパ野菜はそこに相応しい商材として映った。ヨーロッパ野菜は切った中身の色あいが綺麗。それに、葉っぱそのものが青々としており、色彩が鮮やか。スイーツさながらにSNSにも投稿したくなるものばかりだった。

 ここで、先ほど、紹介した埼玉の農家の人たちが出てくる。つまり、「ヨーロッパ野菜研究会」では単純に、その研究にとどまることなく、自ら手がけることもしていたのだ。

そのポテンシャルを感じて事務所を構え販売に着手

 日本では栽培が難しいとされているヨーロッパ野菜。しかし、農家の方々はその研究の末、日本でそれを生産するほどまで、その“研究”は進んでいたのだ。

 ここからはまさに、ネットの出番。農家は生産のプロではある。けれど、販売のプロではない。だから、上手にその長所を生かす形で、工夫をすれば良いと考えた。しかも、普通、野菜をSNSに投稿する人はそうは見られない。けれど、ヨーロッパ野菜であれば、話は違う。ただ、それらの野菜は日本では栽培が難しいから、逆にそれが売られれば、反響を持って迎えられるだろう。SNSで野菜をシェアする人だっているだろうと。

 それが彼らにとっては新たなチャンスを手に入れることになる。加藤さんのECの立ち上げ時と同様に、ここでのもそのアイデアと行動力が身を結ぶことになるわけだ。

どれも印象的な野菜たち。それを活かす売り方

 たとえば、ビーツをご存じだろうか。真っ赤に色づいた根菜であり、実は鉄分も豊富。見た目にも、健康にも心に響く要素があって、話題性もたっぷり。だから、お店としての役目はというと、殊更丁寧にその中身を書いていく事だった。一見すると、それが人の目を引くほどの鮮やかさだからこそ、ちゃんと説明があることは凄く重要なのである。

 このようにしてその長所を活かす形で、彼らの培ってきたECサイト運営の知見は生かされ、農家の思いも形となったわけである。これがなければ、日の目を見なかったかもしれない。

 また、先ほども書いた通りで、栽培が難しい。だから、扱いが難しい。ならば、と彼らは「敢えて販売する商品は特定していない」。イメージを伝え、店側がセレクトしてセットにして販売する。

 どの野菜が届くかは特定できない。だからこそ、サイト上で、納品されうる全種類の説明を記載する。違和感なく買ってもらえる事に注力した。普通の野菜と変わらず、自然体で普通の商品を買う感覚。一通り、見てもらってどれが届いても安心だと思ってもらうこと。それが何より大事だ。

 それだけではなく、「どのように届くのかも詳しく添える」。そういった具合に珍しさと商品を特定できないデメリットを、売り方でカバーしてプラスに変えていくのである。

持ちつ持たれつでお客様に響く

 絶妙なのは、セレクトして商品が特定できないという要素もプラスに変えている点だ。「その注文の時期に最も旬なものをセレクトする」という言い方をすれば、興味も惹けるわけである。かつ、見栄えのいいものだからこそ、そこも選定基準にしてしまう。敢えて、プレゼントに向いている商材として、その商品の立ち位置を明確にするわけだ。当然、箱に集めたイメージもちゃんと設計して、セレクトするようにした。

 ゆえん、お客様にとっては何が届くのかに期待を寄せながら、待つことになる。それがまた、この商品の差別化要因になってファンを作る。しかも、年中、栽培してできる野菜も異なるから、送る野菜が違う。その組み合わせ方も異なれば、一期一会の楽しみができるというわけである。どうだろう、ギフトを贈る側の気持ちもそそられないだろうか。届けば、写真を撮って感謝を述べるだろうし、SNSシェアだってされるだろう。着実に輪が広がっていった。

 現場の川鍋さんの話によれば、こうすることで農家の想いはちゃんと届き、触ったり、食べたりする事で、お客様の満足度へと繋がるんですと嬉しそう。

あっぱれ、ヨーロッパ野菜

 僕自身、ヨーロッパ野菜という存在は、このお店の商材で初めて知った。それを埼玉の農家の努力により、日本で作られるようにしたそこにもドラマがある。しかし、そのドラマもただ地元で売っているよりは、日本の全国に知れ渡った方がいい。ネットがもたらしたその感動は皆にとって大きいだろう。

 北海道の魅力を全国に伝えたその知見は、今視点を変えて、埼玉から「ヨーロッパ野菜」を伝える大事な礎となっている。思えば、ECサイトは商品を媒体である。あらゆる人のヨーロッパ野菜へのリスペクトがあり、生産者と売り手、そしてお客様の想いは一つとなって、新風を起こしたのである。「ヨーロッパ野菜」あっぱれ。

 魅力的な素材に惚れ込んだ農家の気持ちを、商品という形でお客様にシェアして今日も、幸せをお裾分けするわけである。

 素敵な連携をここに見た。今日はこの辺で。

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