ネット通販を始めるには?EC初心者が知るべき販売方法と選び方

ネット通販の販売形態には、大きく「出店型(楽天市場・Yahoo!ショッピング・au PAYマーケットなど)」「出品型(Amazonなど)」「独自ドメイン型(自社サイト:ShopifyやBASE、STORESなど)」の3種類があります。それぞれ集客の方法やコスト構造、運営の自由度が異なり、適したブランド戦略・マーケティング手法も違います。以下では各形式の特徴を詳しく分析し、メリット・デメリットと効果的な戦略を整理します。
【1】 出店型ECモール(楽天市場・Yahoo!ショッピング・au PAYマーケット 等)
オンラインショッピングモール(出店型)
出「店」型。巨大なモールに店を作ります。簡単に説明するなら、店の看板も必要だし、そのブランディングも大事だ。その店としての「どんな商品ラインナップにするか」が相応しいのかを考えて陳列する必要がある。

☆メリット☆
巨大な集客力と認知度:
楽天市場やYahoo!ショッピングといった大手モールは非常に多くのユーザーを抱えており、出店するだけで膨大な「人通り」の中で商品を露出できます 。
実店舗で言えば、乗降客の多い駅ビルに出店する感覚で、自社サイトを一から立ち上げるよりも早く商品が目に留まりやすいです 。モール自体の知名度・信頼性も高く、集客面で大きなアドバンテージがあります。
顧客の安心感・信頼感:
大手モールはセキュリティ対策や顧客対応の信頼性が確立されているため、消費者は知らない個別ショップから直接買う不安が軽減されます 。モールの看板による信用補完効果で、新興ブランドでも顧客に安心して購入してもらいやすい点はメリットです 。
出店コストを抑えやすいプラン:
モールによっては初期費用・月額費用が低廉で、小規模事業者でも始めやすい場合があります。例えばYahoo!ショッピングは出店料無料・成果手数料のみ、Amazonも小口なら月額無料で開始可能です 。自社ECを構築する場合と比べ、サイト開発費用などが不要で、低コストで手軽にスタートできるのも強みです 。
運営サポートが充実:
多くのモールは出店者向けに手厚い支援策を提供しています。楽天市場では各店舗に担当コンサルタントが付き運営アドバイスを受けられるほか、モール独自の配送網や決済システムも利用できます 。初心者でも運営ノウハウを学びやすく、ビジネスを軌道に乗せやすい環境があります 。
一定のデザイン・ブランディング自由度:
楽天市場やYahoo!ショッピングなどテナント型モールでは、自社ショップページをある程度作り込むことができ、独自のデザインやレイアウトでブランド世界観を表現しやすいです 。
商品説明ページに画像や装飾を多用して情報発信できるため、特に楽天市場はファッション・食品・雑貨など写真や説明を豊富に掲載したい商材に適しています 。モール内でユーザーが回遊してショップ自体の存在を知ってもらえる機会もあり、ブランド認知拡大に繋がる面もあります 。
モール独自の販促施策:
楽天スーパーポイントやYahoo!のPayPayポイントなど、モール共通のポイント制度を活用できます。ポイント還元やモール主催のセールに参加することで集客強化が可能です。モール内広告やレコメンド機能を使って、自社商品を関連商品として表示させることもでき、新規顧客との接点拡大に役立ちます 。
★デメリット★
出店コスト・手数料の負担:
モール利用料として月額費用や販売手数料が発生し、ランニングコストが自社ECより高くなりがちです。例えば楽天市場では出店プランに応じて月額2〜10万円程度の固定費がかかり、売上に対しても2〜7%前後のシステム利用料が課金されます 。
モール全体のキャンペーン原資負担や決済手数料など細かな費用も加算されるため、利益率はどうしても圧迫されます 。十分な売上規模に乗せられないと利益が出にくい点には注意が必要です。
競合との比較・価格競争:
モール上には類似商品や競合店舗が多数存在するため、どうしても価格比較されやすく、価格競争に巻き込まれやすい傾向があります 。消費者は同じモール内で条件の近い商品を簡単に比較できるため、少しでも安い方に流れがちです 。その結果、値下げやポイント付与で対抗せざるを得ず、利益率低下を招くリスクがあります。
ブランディングが難しい:
モール内では店舗よりもモール自体のブランドが前面に出るため、「楽天で買った」「Amazonで買った」という認識に留まり、自社の店名やブランドを覚えてもらいにくいです 。
特にAmazon型のマーケットプレイスでは「お店」という概念が希薄で、ショップ単位のブランディングやマーケティングがしづらい構造になっています 。モール依存では自社ブランドのファン育成が進みにくい点はデメリットです。
顧客データの制約:
モール経由の販売では顧客情報を自社で十分に蓄積できないケースが多いです 。購入者の氏名・住所など最低限の情報は得られても、メールアドレスの直接入手や独自のCRM施策はモール規約上制限があります。顧客分析やリピーター施策でモール側に依存せざるを得ず、自由なマーケティングが難しくなります 。
運営の制約と手間:
モールごとのルールや出店審査、出品フォーマットに従う必要があり、自由にできない部分もあります。楽天市場ではHTMLや画像で凝ったページ作りが可能な一方、「お買い物マラソン」のようなセール対応や膨大な商品ページの更新作業など運営負荷も大きいです。
Yahoo!ショッピングやauPAYマーケットでもフォーマットは決まっており、独自機能の実装などはできません 。また各種法令表示や問い合わせ対応も各店舗の責任となり、これら運営面の労力は軽視できません 。
モール側の方針変更リスク:
モール運営会社のポリシー変更により、手数料率の改定や新ルール適用の影響を受ける可能性があります。またモール内の検索アルゴリズムや表示ロジックが変わると集客に響くこともあり、自社ではコントロールできない部分です。プラットフォームに依存するリスクとして認識しておく必要があります。
**出店型に適したブランド戦略**
◆向いている業種・商材:
出店型ECモールは、扱う商品のターゲット層がモール利用者層と合致している場合に特に効果的です。例えば楽天市場ではユーザーの年齢層が比較的広く、特にファッション・アパレル、食品、生活雑貨といったジャンルの商品が人気です 。
これらは写真や説明文を駆使して商品魅力を伝えやすいため、楽天のページ作成自由度と相性が良い商材です 。Yahoo!ショッピングも日用品から趣味嗜好品まで幅広い層が利用しており、価格敏感なユーザー向けの商品に強みがあります。自社の商品カテゴリがモール利用者のニーズにマッチしているかを判断し、適切なモールを選定することが重要です 。
◆ブランディングと差別化:
モールでは他社商品と並んで比較されるため、自社ならではの強みを明確に打ち出す必要があります。差別化ポイントとしては、商品そのものの独自性や品質の高さはもちろん、楽天市場ならページデザインやコンテンツで世界観を演出する、詳しい商品説明や豊富な画像で付加価値を伝えるといった工夫が有効です。
実際、楽天市場では商品の魅力やこだわりを細部まで説明し、お買い物自体に楽しさやエンターテイメント性を持たせることで他店との差別化を図る企業が向いています 。たとえば手作り感のある食品や伝統工芸品なら、そのストーリーや生産背景を丁寧に紹介することでブランド価値を高められます。
また、顧客との関係構築にも力を入れましょう。楽天市場の場合、ショップ独自のメルマガ配信やクーポン発行、ポイント倍率アップなどの施策でリピーターとのつながりを維持できます 。
モールのポイント制度を活かして「○○円以上購入でポイント◯倍」といった施策を打てば、他店ではなく自店で繰り返し買うインセンティブになります。実際、メールマガジンやポイント・クーポンを上手に活用し購入者との継続的なつながりを築くことが可能であり、こうした「濃い」コミュニケーションを重視するなら楽天市場が断然おすすめとも言われます 。
◆価格戦略:
モールではどうしても価格競争になりやすいため、戦略的な価格設定が求められます。他店と差別化できる独自商品であれば高価格でも付加価値で勝負できますが、汎用品であれば市場相場を踏まえて適正価格を設定し、必要に応じてポイント還元やセールで訴求力を高めます。
楽天市場では客単価アップのため「入り口商品」と呼ばれる目玉の安価商品を設定し、集客後に関連商品のまとめ買いを促す戦術も有名です。送料やポイント分を考慮した上で利益が出るラインを見極め、モール手数料込みでも採算が合う価格をシミュレーションしておく必要があります。
また、モール横断で価格比較されることもあるため、自社だけ極端に高い/安い価格設定にしないよう、市場全体での自社商品の立ち位置を意識しましょう。場合によってはモール内限定セットやモール先行販売商品を用意し、純粋な価格比較がされにくい工夫も差別化になります。
◆競争優位性の確立:
競合ひしめくモールで埋もれないためには、自店の強みを際立たせる総合力が大切です。
具体的には*(1)顧客レビューの高評価管理(商品満足度や丁寧な対応で★評価を上げ信頼性をアピール)、(2)モール内検索対策(後述のSEO参照)、(3)配送スピード・梱包品質の向上(即日出荷や綺麗な包装で満足度アップ)、(4)*モール内ランキングや特集への露出(売上計画を立てキャンペーン参加や広告利用で露出増やす)などです。
たとえば楽天市場では売上好調商品は「楽天ランキング」に掲載されさらなる集客を呼ぶため、まずは一点突破で人気商品を育てるのも一策です。
**出店型における効果的なマーケティング手法 **
• モール内SEO対策(検索対策):
モール内の検索結果で上位表示される工夫は欠かせません。商品タイトルや商品説明にユーザーが検索しそうなキーワードを適切に含め、カテゴリやタグの最適化も行いましょう。
楽天市場では「検索ワードランキング」を参考にタイトルや属性を調整したり、Yahoo!ショッピングではプロモーションタグ設定により露出を高めたりといったテクニックがあります。モールによって検索アルゴリズムは異なりますが、共通して商品名や説明文に具体的な特徴・ニーズキーワードを盛り込むことが基本です。
また、レビュー件数や売上実績も検索順位に影響する場合があるため、顧客満足度を高め自然なレビュー増加を促すことも長期的なSEOになります。
• 外部検索エンジンへの露出:
大手モールの商品の中には、Googleなど外部検索でも上位に表示されるケースがあります。
モール自体のドメインパワーが強いため、自社サイトを持たない場合でも商品の個別ページがGoogle検索結果から流入を得ることが期待できます 。そのため商品ページ内のテキストを充実させ、外部検索キーワードを意識した説明やQ&Aを掲載することも有効です。特に専門性の高い商品やニッチな商品では、検索流入が貴重な集客源となることがあります。
• リスティング広告(検索連動型広告):
自社サイトがなくモールだけで展開している場合でも、Google広告やYahoo!広告を活用し、モール内の自社ショップや商品ページへの誘導を図るケースがあります。たとえば特定キーワードで検索したユーザーを、自社の楽天市場店のページに直接誘導する広告出稿も可能です。
費用対効果を見極める必要はありますが、モール内の競合より一歩先にお客様を獲得できる手段として検討できます。ただし、クリック課金の広告費に加えモール手数料も差し引かれるため、十分な利益率の商品で行うなど計画的な運用が求められます。
• モール内広告・プロモーション:
各モールが提供する広告メニューや優遇施策を積極的に活用しましょう。楽天市場なら検索結果やカテゴリー内のスポンサードサーチ広告、クーポンアフィリエイト、楽天マガジンへの掲載等があります。
Yahoo!ショッピングでもアイテムマッチ広告やPRオプションが用意されています。
モール内広告はモール利用者にダイレクトに訴求できるため効果が高く、特に新規出店直後に認知度を上げるのに有効です。また、楽天のスーパーセールやYahoo!の超PayPay祭などモール全体の大型キャンペーンには積極的に参加しましょう。期間限定の大幅ポイント還元やタイムセールに合わせて自店でも目玉商品を投入すれば、大きな集客と売上増加が見込めます。
• ソーシャルメディア活用:
モール出店企業であっても、自社のSNSアカウントを運用してファンコミュニティを育成することはブランド価値向上に繋がります。InstagramやX(旧Twitter)、Facebookなどで商品情報や活用シーンを発信し、興味を持ったユーザーをモール内の自社ページに誘導する動線を作りましょう。
例えばInstagramで魅力的な商品写真を投稿し、「プロフィールのリンクから○○モール店で購入できます」と案内したり、Xでセール情報を発信して拡散を狙うなどが考えられます。SNS上でクーポンコードを配布し、自店ページで使ってもらう取り組みも有効です。モール外であっても接点を増やし、自社のファンを増やすことで長期的な売上基盤を強化できます。
• インフルエンサーマーケティング:
SNSやブログ等で影響力のあるインフルエンサーと組むのも効果的です。自社商品にマッチするインフルエンサーに商品を紹介してもらい、購入先リンクとしてモールの自社ショップページを提示すれば、信頼性の高いレビュー経由で集客できます。
特に美容・ファッション系で楽天やAmazonの商品リンクを貼る投稿は多く、インフルエンサー経由の流入が売上を押し上げる例もあります。モールによっては公式アンバサダープログラムを展開している場合もあるので活用しましょう。注意点としては、インフルエンサー起用時は在庫切れやアクセス急増に備え、モール内のページを事前に整備しクーポンを用意するなど、受け入れ体制を万全にすることです。
• リピーター獲得施策:
モールでは顧客情報の制約があるものの、プラットフォームの機能を使ったリピーター施策が可能です。楽天市場では前述のポイント倍付けや、購入者へのフォローメール配信(楽天スーパーCRM)などの仕組みがあります。購入者にショップを「お気に入り」登録してもらえれば、新商品やセール情報をモール経由で通知できます。Yahoo!ショッピングでもストアニュースレター機能や次回使えるクーポン発行などが提供されています。
こうした機能を駆使し、「またこの店で買いたい」と思ってもらえる施策を打つことが大切です。たとえば商品発送時にお礼のメッセージカードや次回クーポンを同梱してリピートを促すのも効果があります(※モールの規約範囲内で実施)。
【2】出品型マーケットプレイス(Amazon など)
(出品型マーケットプレイス)
先ほどの出店型に対して、Amazonは出「品」型。出「品」型とは、巨大なお店の中に商品を出品する形式をとっている。だからAmazonには店単位ではなく商品単位で閲覧。1商品に対して1ページです。

☆メリット☆
• 国内最大級の利用者規模:
Amazonは日本国内でも楽天市場と並ぶ巨大ECプラットフォームで、月間利用者数は数千万人規模に達します 。特に「とりあえずAmazonで探す」という購買行動は広く根付いており、新規ブランドでもAmazon上に商品を出せば非常に多くの潜在顧客にリーチできます。総合力のあるプラットフォームゆえに、取り扱いジャンルを問わず幅広いユーザー層への露出が可能です。
• 低い初期ハードルと迅速な立ち上げ:
Amazonへの出品は審査も比較的スピーディーで、初期費用も抑えられます。小口出品(〜49点/月)なら月額固定費0円で始められ、プロフェッショナル出品でも月額4,900円程度と安価です 。
自社サイト構築のような開発作業も不要で、商品情報を登録すれば即座に販売を開始できます。まとまった資金がなくても始められるため、テストマーケティングの場として活用しやすいのもメリットです 。実際「まずAmazonで市場反応を見てから、軌道に乗れば楽天市場や独自ECに拡大する」というステップを踏む企業もあります 。
• 購買コンバージョンの高さ:
Amazonはサイトの使いやすさや購入までの導線が極めて洗練されており、ユーザーがスピーディーに買い物を完結できる仕組みになっています 。
余計な装飾や煩雑な手順がなく、一度カートに入れればワンクリックで決済完了する利便性の高さから、購入転換率(CVR)が非常に高いです。特にプライム会員は送料無料や即日配送の特典もあるため、欲しいものを見つけたらすぐ買う傾向が強く、販売側にとって「買ってもらいやすい」環境と言えます。
• 物流・フルフィルメントサービス:
Amazonの大きな強みとして「FBA(Fulfillment by Amazon)」があります。これは在庫をAmazon倉庫に預けておけば、受注後のピッキング・梱包・発送、さらには返品対応までAmazon側で代行してくれるサービスです。
FBAを利用すれば自社で発送作業を抱える必要がなく、大量出荷にもスケーラブルに対応できます 。加えてFBA商品はAmazonプライム対応となり、プライム会員向けに優先表示されたり、お急ぎ便適用されることで購買促進に繋がります。物流インフラを借りられるのは、小規模事業者にとって大きなメリットです。
• 信頼性・カスタマーレビュー:
Amazonプラットフォーム上には、購入者による星評価やレビューコメントが蓄積されていきます。評価が高くレビュー数が多い商品はさらに売れやすくなるという好循環があり、良質な商品・サービスを提供すればAmazon上で信頼が「見える化」される仕組みです。これは新参ブランドでも努力次第で評判を高めやすい環境と言えます。またAmazon自体のカスタマーサービスも手厚く、顧客は何かトラブルがあってもAmazon経由で対応してもらえる安心感があります 。
• 多彩な販売プログラム:
Amazonは通常販売以外にも、「定期おトク便」(サブスクリプション販売)やクーポン、タイムセール、数量限定のライトニングセール、さらにはグローバルへの出品連携など、多彩なプログラムが用意されています。
特に定期購入は消耗品などリピート商材との相性が良く、Amazon上でファンを囲い込む施策として有効です 。楽天市場にも定期購入機能はありますが煩雑になりがちで、Amazonの方がシンプルで運用しやすいとされています 。こうしたプログラムを活用できる点もマーケットプレイス型の魅力です。
★デメリット★
販売手数料の高さ:
Amazonでは売れた商品ごとに8~15%前後(カテゴリによる)の販売手数料がかかります 。加えて、1点ごとの出品手数料(小口の場合100円/件)やFBA手数料(重量・サイズに応じた物流手数料)も発生します。
モール型に比べ月額固定費は安いものの、成功報酬型で手数料率が高めに設定されているため、粗利の低い商品だと利益がほとんど残らないケースもあります。手数料込みでも利益が出る価格設定か、十分な原価率で挑む必要があります。
• ページカスタマイズ性の低さ:
Amazonの商品ページはレイアウトやデザインが統一されており、各出品者で差別化できる要素が限られます。画像や文章で訴求することはできますが、自社ショップのように自由にデザインを変更することはできません 。
また、出品形式上「ショップの概念が希薄」なため、自社のブランドストアページを開設したとしても来訪者は商品ページほど多くなく、ショップ単位でファン化させるのが難しい構造です 。凝ったブランド表現よりシンプルで機能的な情報提供が求められる反面、自社らしさを出しづらいのはデメリットです。
• 競合と直接比較される環境:
Amazonでは同一商品の場合、カタログが一つにまとめられ出品者どうしでカート獲得競争(Buy Box争い)が発生します。新品であれば基本的に価格や在庫、出荷スピード等の条件によって自動的に最適な出品者が選ばれる仕組みで、価格が高かったり在庫切れしていると販売機会を逸してしまいます。
他社が安価に参入してくれば容易にカートシェアを奪われるため、常に市場価格をモニタリングし対応する負荷がかかります。さらに、人気が出た商品は競合他社の模倣品や類似品が乱立しやすく、オリジナルブランドでも油断できません。Amazon自体がPB商品(Amazonベーシックス等)として参入してくるリスクもあり、競争原理が非常にシビアです。
• ブランド構築の難しさ:
前述の通り、購入者にとっては「Amazonで買った商品」という認識が強く、どの出品者から買ったかは意識されにくい傾向があります 。特に無名ブランドの場合、購入者は商品が良くても販売者名までは記憶しないことが多く、リピート購入の際もまたAmazon内検索で類似商品と比較されてしまいます。
ブランドストーリーを伝える場も限られるため、高級路線やブランド世界観を重視する戦略とは相性が悪いです。出品型では短期的な売上拡大は狙えても、自社ブランドのファン醸成には不向きである点を認識しておく必要があります 。
• 顧客情報が蓄積できない:
Amazonでは顧客の連絡先(メールアドレス等)はプラットフォーム側が管理しており、出品者が直接入手することはできません 。購入者へのフォローアップもAmazonのメッセージシステム経由に限られ、独自にメールマーケティングを行うことは規約で禁止されています。
従って一度買ってくれたお客様に再アプローチするのが難しく、リピーター獲得施策が制限されます 。得られる購買データも限定的で、自社マーケティング資産として残りにくい点はデメリットです。
• プラットフォーム依存のリスク:
Amazonのガイドラインは非常に詳細かつ厳格で、違反があるとアカウント停止など重大なペナルティに繋がります 。たとえば注文不良率や出荷遅延率が一定以上になるだけで出品権限が一時停止されることもあります。
また、レビュー操作の禁止や知的財産権の取り締まりなど運営ルールが頻繁に更新されるため、常に最新の方針に適合する必要があります。プラットフォーム側のアルゴリズム変更(検索順位やBuyBoxロジック)にも影響を受け、売上が急変動するリスクもあります。Amazonビジネス一本に依存しすぎると、規約変更やアカウント閉鎖リスクに晒される点に注意が必要です。
**出品型に適したブランド戦略**
◆向いている業種・商品特性:
Amazonで成果を出しやすいのは、商品スペックや価格など比較検討項目が明確で、かつ需要が広範囲に存在する商材です 。具体的には家電・ガジェット、日用雑貨、消耗品、本・映像ソフト、トレンドのホビー商品などが挙げられます。
これらはユーザーが「性能や価格で選びたい」「すぐ欲しい」と思うケースが多く、Amazonの合理的・迅速な購買体験と親和性が高いです 。特にスペック重視の商品や、購入検討に時間をかけない日用品はAmazonとの相性が良いでしょう 。また、定期的なリピート購入が見込める商品(ペット用品、サプリメント、化粧品など)も、Amazonの定期購入プログラムを活かせるため適しています 。
一方、ハイブランドのアパレルや一点物のハンドメイド雑貨など、ブランドストーリー訴求が重要な商材は、出品型よりも自社ECやテナント型モールの方が適している場合があります。Amazonでは商品の機能・価格以外の情報を伝えにくいため、そうした商材だとうまく魅力が伝わらない可能性があるためです。
◆販売戦略と差別化:
Amazon上での差別化は主に商品力とオペレーション力で勝負することになります。同じプラットフォーム上では価格・評価・写真といった見える情報が命綱となるため、まずは高品質な商品を適正価格で提供し、良いレビュー評価を集めることが最優先です。
競合商品と比較して優れているポイント(性能・デザイン・コスパなど)を明確に打ち出し、商品説明欄や画像で根拠ある訴求を行いましょう。幸いAmazonでは顧客レビューという形で差別化要素が蓄積されていきます。初期段階では多少採算度外視でも購入者を増やし、レビューを集める戦略も有効です。
また、FBAの活用も差別化になります。
プライム対応商品となることで顧客の選択肢として有利になり、配送スピードや信頼性で勝ります。自己発送の場合でも、即日出荷や丁寧な梱包・カスタマー対応に努め、ストアパフォーマンスを高く維持することが重要です。これによりカートボックス獲得率が上がり、結果的に売上拡大につながります。
自社がメーカーであれば、類似品対策としてブランド登録(Brand Registry)を行いましょう。
これにより知的財産権の保護や、A+コンテンツ(商品ページ内に独自のリッチコンテンツを掲載する機能)の利用が可能になり、多少のブランド表現強化ができます。オリジナルブランドであることを前面に出し、「公式」販売である安心感を与えるのも有効です(模倣品や転売品との差別化)。
◆価格戦略:
Amazonでは常に他社との価格比較に晒されるため、競争力のある価格設定が肝心です。しかし単純に安くすれば良いわけではなく、手数料やFBA費用を織り込んだうえで利益を確保できるラインを見極める必要があります。
自社がメーカーの場合、卸売価格との兼ね合いやブランド価値維持のため、むやみに値下げできないことも多いでしょう。その場合は、セット販売やバリエーション追加で単純比較を避けつつ実質単価を下げる工夫もあります(例:1個あたり○円より3個セットでお買い得、など)。
また、「カートボックス」を獲得するためには最低価格を目指す必要がありますが、在庫状況や出荷スピード、セラー評価など他要因も影響します。
そのため、多少価格が高くてもFBA利用や高評価維持でBuyBoxを取れる可能性があります。結果として顧客に約束する価値(迅速配送・安心感)込みで適正な価格を設定することが大切です。期間限定でクーポンを発行したり、タイムセールに参加して短期的に値下げし在庫回転を促す戦略も組み合わせ、メリハリのある価格政策を行います。
◆競争優位性の確立:
Amazonで長期的な優位性を築くには、単品ヒットではなくラインナップ戦略や顧客ロイヤルティにも目を向けます。関連商品をシリーズ展開してクロスセルを狙ったり、アクセサリ類でエコシステムを構築することで、一つの商品を買った顧客が次も自社の商品を買いたくなる状態を作ります。たとえば調理器具を販売しているなら、それに合う消耗品(フィルターやレシピ本など)も揃えることで他ブランドに浮気されにくくする、といった戦術です。
また、購入者が商品ページからブランドストアへ遷移することもあるため、ブランドストアページは整備しておきましょう。ここで全商品を見やすく陳列したり、ブランドコンセプトを簡潔に伝えることで、自社ブランドへの関心を深めてもらうチャンスになります。
さらにAmazonには「フォロー」機能があり、ユーザーがブランドをフォローすると新商品情報が届くようになります。大々的なファン獲得は難しくとも、このような機能を活用し少しずつ自社のお得意様を増やす努力が肝要です。
**出品型における効果的なマーケティング手法 **
• Amazon内SEO対策:
Amazonの商品検索アルゴリズムに最適化することが、出品型では非常に重要です。商品タイトルにはブランド名・商品名に加え主要な特徴や型番、キーワードを含め、検索ヒットしやすくします。
箇条書き(Bullet Points)や商品説明欄にも関連キーワードを盛り込み、ユーザーの疑問を先回りして解消する情報を入れてコンバージョン率向上を狙います。Amazonは検索結果の並び順に売れ行きや在庫、評価も考慮するため、SEO(検索最適化)=販売実績作りとも言えます。
最初は広告等で露出を増やし販売数とレビューを確保→検索上位表示→広告に頼らず売上持続、というサイクルを目指しましょう。なお、Amazonではキーワードの入れすぎに注意し、タイトルは読みやすく簡潔に(50〜100文字程度)まとめるのが推奨されています。
• Amazon広告(スポンサープロダクト等):
Amazonプラットフォーム内の広告は新規出品者にとって必須とも言えるマーケティング手段です。代表的なスポンサープロダクト広告は、検索結果や商品ページに自社商品を優先表示できるクリック課金型広告で、適切なキーワードを設定して入札します。
これにより、レビューが少なく検索順位が低いうちでも商品を露出でき、売上とレビュー獲得の加速につながります。またスポンサーブランド広告(ブランド名での横長バナー表示)やディスプレイ広告も、ブランド登録している場合は活用可能です。広告経由の売上が増えると有機的な検索順位も上がりやすくなるため、広告は投資と割り切り一定額を継続投入する戦略が有効です。広告効果は定期的に分析し、費用対効果の高いキーワードやターゲティングに予算配分しましょう。
• レビュー獲得と管理:
マーケットプレイスではレビューの星の数が売上を大きく左右するため、良好なレビューを増やす活動も重要です。購入後に一定期間経過した顧客に対し、Amazonのシステムを通じてレビュー依頼メッセージを送ることができます(※独自の誘導は規約で禁止)。
また「Vineメンバー」(上級レビュアー)によるレビュー制度を利用して、発売前後に商品提供し忖度なしのレビューを書いてもらう方法もあります。低評価レビューが付いた場合は内容を真摯に受け止め改善に努め、必要に応じてカスタマー対応でフォローします。質の高いカスタマーサービスはユーザーからの評価コメントにも反映され、信頼度向上につながります。
• オフライン・他チャネルからの誘導:
自社で別販路(実店舗や他のECサイト)を持っている場合、そこでAmazonページへの誘導を行うケースもあります。例えば自社カタログや説明書に「Amazon店でも取り扱い中」と記載したり、SNS公式アカウントでAmazonの商品ページURLをシェアするなどです。
特にSNSとの親和性は高く、Instagramの製品紹介投稿からAmazonリンクに誘導するといった形でトラフィックを集めているブランドもあります。インフルエンサーにAmazonリンク付きで紹介してもらうのも効果的でしょう。Amazonはその場で買いやすいため、興味を持ったユーザーをスムーズに購買まで繋げることができます。
• ソーシャルメディア活用:
Amazon中心で展開する企業も、ブランド認知向上のためSNSマーケティングは有効です。Instagramで商品写真や動画を投稿し興味を引いたり、Twitterでキャンペーン情報を発信することでファンとの接点を増やします。自社ECほどSNS誘導に熱心ではない事業者も多いですが、SNS経由でAmazonページに誘導し購入してもらえればAmazon内ランキング上昇など相乗効果も期待できます。
たとえば「Amazonランキング〇位獲得!」とSNSで発信すれば更に話題になり、ブランド力向上にもつながります。
• リピーター対策:
出品型では直接的なリピート促進策が取りにくいものの、商品自体やAmazonの仕組みを通じて間接的にリピートを狙えます。ひとつは定期おトク便の活用です 。消耗品であれば定期便割引を設定し、初回購入時に定期購入を促すことで自然と継続購入してもらえます。
また、ラインナップ拡充により「この前買ったブランドの新商品もAmazonで買おう」と思ってもらうのも有効です。その際、商品ページ上で自社の他商品を「こちらもおすすめ」と一緒に購入されている商品として表示させるために、セット購入割引やバリアント登録(色違い・サイズ違いの紐付け)を行っておくと良いでしょう。
顧客と直接コンタクトできない分、購入体験を通じたリテンションが重要です。
つまり、「このブランドの商品は安心だからまた買いたい」と思わせることです。具体的には過剰包装にならない程度に丁寧な梱包や、商品品質のばらつき防止、トラブル発生時の迅速な返品対応など、顧客満足度を高める活動がリピート購入に繋がります。
Amazonの性質上、一度気に入れば再度同じ商品を「購入履歴」や「ほしい物リスト」からリピート発注するユーザーも多いので、まずは一度で信頼を掴むことがリピーター確保の鍵になります。
【3】 独自ドメイン型ECサイト(自社オンラインショップ)
独自ドメインサイト /オンラインストア
上記のAmazon、楽天などのカラーなく、完全にオリジナルの自分のお店ができます。反面、何もない平地に家を建てるようなものなので、人がいないリスクもあります。でも、自分のお店だからファン化が推進できる。フューチャーショップ、カラーミーショップ、ショップサーブ、Shopifyなどのサービスがそれだ。

☆メリット☆
自社利益の極大化:
独自ドメインの自社ECサイトではモールのような出店手数料や売上コミッションが発生しません。決済代行手数料(クレジットカード手数料など)やシステム利用料は若干かかるものの、中間マージンがない分、基本的に利益率が高くなります 。
モール型では出店料・販売手数料で利益が圧迫されますが、自社サイトではその分を利益として確保したり、逆に価格に還元して競争力を上げる余地もあります。売上規模が大きくなるほど、この差は無視できないメリットになります。
ブランディングの自由度:
自社サイト最大の強みは、サイトデザインや機能を完全に自社ブランドに最適化できる点です 。サイトの色使い・レイアウト・フォントから掲載コンテンツまで制限がなく、自社の世界観を表現したオンラインストアを構築できます 。
例えば高級感を出すために余白を贅沢に使ったミニマルデザインにしたり、商品ごとに動画やストーリー記事を掲載したり、といった独自の演出が可能です。既存のテンプレートに縛られず自由にカスタマイズできるため、ブランドイメージ確立には最適な場と言えます。「このサイト自体がブランドの一部」という位置づけで、お客様に唯一無二の購買体験を提供できます。
• 顧客データの蓄積・活用:
自社ドメインのECサイトでは、顧客が登録した情報や購買履歴、行動ログなどを自社で保有・分析できます 。これはマーケティング上極めて有用で、顧客属性に応じたDM配信やおすすめ商品の出し分け、LTV(顧客生涯価値)の測定など、データドリブンな施策展開が可能です 。
モールではこうしたデータはプラットフォーム側に蓄積され自社では活かせませんが、自社サイトなら誰が何をいつ買ったかといったデータベースを資産として蓄えられます。Googleアナリティクス等を組み合わせれば、流入経路や離脱ポイントの詳細分析も可能で、サイト改善や広告戦略に生かせます。データを武器にPDCAを回しやすいのは独自ドメインの大きなメリットです 。
• 販売戦略の主導権:
自社サイトではモールの規約に縛られず、自社の裁量で販売戦略を実行できます。例えば価格設定一つとっても、モールでは極端な割引や独自ポイントは禁止事項がありますが、自社サイトなら自由です。期間限定セール、クーポン配布、会員限定価格、すべて自社判断で実施できます。
プロモーション面でも、アフィリエイトプログラムを独自に組んだり、ポップアップでキャンペーン告知を出すなど多彩な施策が可能です。さらには商品開発面でもテスト的な商品をひっそり追加して市場反応を見るなど、柔軟かつスピーディーにトライアルできるのも利点です。モールのような審査待ちやルール制限がなく、小回りの利く運営ができます。
• 顧客との直接的な関係構築:
自社ECでは会員登録やメルマガ登録を促し、自社でお客様と直接コミュニケーションできます。これにより、ブランドのファンコミュニティを育てロイヤルカスタマーを創出しやすくなります。SNSやイベントと連動した企画も実施しやすく、ブランドと顧客がダイレクトにつながる接点を増やせます。
モール経由ではプラットフォームの一利用者に過ぎなかった顧客も、自社サイトでは「〇〇ブランドの会員様」として特別な体験を提供でき、愛着やロイヤルティを高めやすい環境です。熱心なファンは自発的に口コミで宣伝してくれることもあり、ブランド資産の蓄積につながります。
• チャネルコントロールと拡張性:
独自ドメイン型は、自社の他チャネル(実店舗や他EC、SNS販売など)との連携も取りやすいです。在庫連携やポイント共通化などを自社主導で設計でき、オムニチャネル戦略を推進できます。さらに、自社サイト上に新機能を実装したり、最新のマーケティングツールを導入することも容易です。
たとえばチャットボットによる接客や、サブスクリプションコマースの仕組み、レビュー投稿機能、カスタマイズ商品のオーダーフォームなど、必要に応じてサイトを進化させられます。外部サービスとのAPI連携も柔軟で、自社の成長に合わせ拡張できるスケーラビリティは独自ECならではです。
★デメリット★
集客の難易度が高い:
自社サイトはゼロからユーザーを集めなければならず、集客コストと時間が掛かります 。モールのように出せばすぐ人が来るわけではなく、SEO対策や広告、SNS運用など地道な努力でサイト訪問者を増やす必要があります 。
立ち上げ当初は認知度も低く、「そもそもサイトに誰も来ない」状態からのスタートとなるため、売上が軌道に乗るまで一定の時間と投資を要します。短期的に売上を上げるのは簡単ではなく、成果が出るまでに時間がかかることを理解しておかなければなりません 。
サイト構築・運用のリソース必要:
独自ECサイトを開設・維持するには、ウェブ制作やシステム運用の知識、人材が必要です 。ShopifyやBASEなど手軽なサービスもありますが、魅力的なサイトに仕上げようと思えばデザインカスタマイズやコーディングが発生します。
また、決済やセキュリティ対応、在庫管理、アクセス増加時のサーバー増強など技術面のケアも重要です 。社内にそうしたノウハウがない場合、外部のWeb制作会社に依頼したりシステム会社と契約する必要があり、人的・金銭的コストがかさみます 。モールでは運営会社が担ってくれた機能(例:不正注文対策、システム障害対応)も自社で責任を負うため、ITリテラシーが求められます。
信用獲得のハードル:
無名ブランドがいきなり自社サイトで販売しても、ユーザーにとっては「本当に信頼できるショップなのか?」という不安があります。実績がない段階では、個人情報やクレジットカード情報を直に入力してもらうハードルは高めです 。
大手モールなら「楽天だから大丈夫」と思ってもらえますが、自社サイトではサイトの見た目やSNSでの評判などあらゆる要素で信用を積み上げる必要があります。SSL証明書の導入や特商法表記の充実、問い合わせ窓口の明記など基本的な信頼醸成策は必須です。
それでも初回購入の敷居はどうしても高く、信用を得るまではCVR(購入率)が低めに推移しやすいでしょう。
支払い・配送などの全工程管理:
自社サイトでは受注から決済確認、発送、カスタマーサポートまで全て自社で行う必要があります。決済一つとっても、クレジットカード、コンビニ払い、代引き、後払い等を用意しようとすると各種契約・設定が必要です。発送もヤマト・佐川など運送会社との契約や集荷手配、送り状発行など手間が発生します。
配送遅延や紛失対応、返品ポリシー策定など顧客対応も自前でこなさねばなりません。モールでは共通インフラがあった部分をすべて自社で管理・運営する負担がある点は覚悟が必要です。ただしこれらは一度仕組みを作って軌道に乗せれば効率化できますが、最初は試行錯誤が避けられません。
スケールメリットが出にくい初期段階:
一定の売上規模に達するまでは、広告費や人件費など固定コストが売上に対して重くのしかかります。少ない受注のためにサイト維持費やSSL代を払い、配送効率も悪いという非効率が発生しがちです。
モールなら少量でも外部効率を享受できますが、自社ECは軌道に乗るまで収益面で厳しい時期が続く可能性があります。黒字化までの資金繰り計画や、並行してモールにも出店して収益を補完するなど、初期の戦略設計が重要となります 。
**独自ドメイン型に適したブランド戦略**
◆向いている企業・ブランド:
独自ECサイトは、中長期的にブランドを育成しファンとの繋がりを深めたい企業に向いています。具体的にはブランドの世界観が重要な商材(ファッション、コスメ、工芸品など)や、リピート購入が前提の商材(定期購入やサブスク系)、あるいは熱心なコミュニティを作りやすい商材(趣味用品、オーダーメイド品など)**で真価を発揮します。
たとえば、独自デザインのアパレルブランドであればサイト全体でコレクションの雰囲気を表現でき、ブログでコーディネート提案をするなどブランド体験を提供できます。また、ある程度既に知名度や固定ファンが存在する場合(有名店のEC化やSNSで人気の商品など)は、独自サイトに誘導することでダirectに売上を取れるため非常に有効です。
逆に無名ブランドの新商品をいきなり自社サイトだけで売るのはハードルが高いため、最初はモールで顧客を増やしつつ並行して自社ECを育てるケースも多いです 。
◆ブランド構築と差別化:
自社サイトではブランドの世界観・ストーリー発信を徹底しましょう。他にはない独自のコンセプトや価値観をサイト全体で表現し、「このブランドが好きだからこのサイトで買いたい」と思わせることが理想です。具体的には、トップページでブランドのビジュアルイメージやメッセージを打ち出し、商品ページでも単なるスペック羅列ではなく開発秘話やデザイナーの想いなど背景を伝えるコンテンツを盛り込むと効果的です。
ブログやコラムを併設し、商品カテゴリーに関連するライフスタイル情報やハウツー記事を提供すれば、読み物として楽しめるサイトになります。コンテンツマーケティングによってブランドに共感するファンを増やすことが独自EC成功の鍵です 。
また、自社サイト限定の商品やサービスを用意するのも差別化になります。モールや店舗では買えない限定カラー・サイズの商品、名入れやセミオーダー対応、あるいは購入特典(ノベルティ同梱や直筆メッセージなど)を付けることで、「公式オンラインショップで買う理由」を作れます。
価格面でも、モールでは基本値引きしないが公式サイトでは会員限定セールを行う、といった差別化をするブランドもあります。ただしあまり露骨に価格差を付けると他チャネルとの関係に影響するため、公式サイトではポイント付与率を高めにする・送料を安くするなどして実質的なメリットを出す方法もあります。
◆価格戦略:
独自ECでは価格設定も自由度が高いですが、その自由さゆえに戦略が問われます。自社サイトしか販路がない場合、市場で比較されることが少ないため強気の価格設定も可能ですが、競合他社サイトやモール価格とも乖離しすぎないよう注意が必要です。
多チャネル展開している場合は基本的に価格のパリティ(同一価格)を保ちつつ、自社サイトではポイント還元や次回使えるクーポン付与など付加価値でお得感を出すのが一般的です。
こうすることで他チャネルとの摩擦を避けながら、自社ECで買うメリットを打ち出せます。
また、独自ECでは収益性と集客力のバランスを考えた価格戦略を立てます。広告費や決済手数料なども含めた原価計算を行い、十分な利益を確保できる価格帯を設定します。
一方でサイトへの送客を増やすため、利益度外視のフロント商品を用意することもあります(例:新規会員限定で初回○○%OFF商品を設定し、まず買ってもらう敷居を下げる)。その後リピートや関連商品購入で利益を取るシナリオを描くなど、ライフタイムバリューを意識した価格設計が重要です。
◆競争優位性の確立:
自社ECにおける競争優位は、唯一無二のブランド体験と顧客ロイヤリティの高さです。他社には真似できない世界観・商品ラインナップを持ち、それに共感するコアなファン層を囲い込めれば、多少高価格でも支持され安定した売上が見込めます。
そのためには商品開発力やブランド発信力が求められますが、小規模でも尖った魅力があればニッチ市場で強固な地位を築けます。さらに、顧客との長期的な関係(コミュニティ形成やファンクラブ的施策)を深め、顧客が自発的にブランドを宣伝してくれるようになると無敵です。レビューやSNSでファンがポジティブな声を上げ、それが新たな顧客を呼ぶ好循環を目指しましょう。
また、独自ドメインだからこそ可能なCX(顧客体験)の差別化も重要です。サイトの操作性やデザインだけでなく、配送梱包の体験、アフターサポート、定期的なフォローアップなどトータルで満足度を高める工夫をします。
たとえば高級ブランドなら高級感のある包装や手書きのサンクスカードを添える、ECコスメブランドなら小さなサンプルを同梱して次の商品提案をする、といった細かな気配りがブランドロイヤルティを向上させます。
**独自ドメイン型における効果的なマーケティング手法 **
• SEO対策(検索エンジン最適化):
自社サイトへの集客で肝となるのがGoogleやYahoo!など検索エンジンからのオーガニック流入です。まずサイトの基本構造を検索エンジンフレンドリーに整備します(適切なタイトルタグ・メタディスクリプション設定、サイト表示速度改善、モバイル対応、SSL導入などの技術SEO)。次に、商品ページやコンテンツページで狙うキーワードを定め、ページ内に関連語句を織り交ぜながらユーザーにとって有益な情報を載せます。
例えば、単に「商品名 XYZ」ではなく「XYZ 使い方」「XYZ 比較」といった検索にも答えられるようQ&A形式の説明を入れるなど工夫します。コンテンツSEOも重要で、商品に関連するテーマの記事やハウツーガイドを用意し、検索ユーザーを幅広く取り込む施策を取りましょう 。
例を挙げるなら、アウトドア用品ブランドなら「キャンプ道具の選び方」「季節別キャンプ準備リスト」といった記事を書き、自社商品の露出とともに検索流入を増やす戦略が考えられます。SEOは成果が出るまで時間がかかりますが、一度上位表示を獲得できれば継続的な集客源となるため、腰を据えて取り組みます。
• リスティング広告(検索連動広告):
SEOの効果が出る前から売上を上げるには、Google広告やYahoo!広告でのリスティング出稿が即効性のある手段です。自社サイトで取り扱う商品の関連キーワードで広告を配信し、検索結果ページの上部に自社サイトへのリンクを表示させます。ニッチな商品や新商品であれば比較的低単価で広告を出せることもあります。
リスティング広告は予算に応じて柔軟に出稿量を調整でき、即時に集客可能なので、新規ECサイトの立ち上げ期には特に有用です。適切なキーワード選定と入札、魅力的な広告文の作成がポイントになります。たとえばブランド名での指名キーワード広告を出しておけば、ユーザーが検索エンジンでブランド名を探した際に競合より先に公式サイトに誘導できます。
費用対効果(ROAS)は継続監視し、採算の取れないキーワードには入札しないなど最適化を図りましょう。
• SNSマーケティング(オウンドメディア化):
自社ECにおいてSNSは単なる広告媒体ではなく、ファンとのコミュニケーションの場として活用します。Instagramでは世界観の統一された写真や動画を投稿して視覚的にブランドを訴求し、フォロワーとのエンゲージメントを高めます。投稿から自社サイトへ商品タグで直接誘導したり、ストーリーズで新商品発表を行うなど購買動線も意識しましょう。X(Twitter)はタイムリーな情報発信や顧客サポートに適しており、新作発売日やキャンペーン告知、さらには利用者からの投稿のリツイートなど双方向のやり取りで盛り上げます。
YouTubeは商品の使い方動画やブランドヒストリー、開発秘話など濃いコンテンツを提供でき、ファン獲得に繋がります。TikTokはバズを狙った短尺動画で若年層へのリーチに有効です。これらSNSでフォロワー=潜在顧客のコミュニティを育て、自社サイトへの誘導リンクを常にプロフィール等に用意しておくことで、SNS→サイトへの流入・購買を促進します。SNS上でのコメント返信やDM対応も丁寧に行い、ブランドへの親近感を持ってもらうことも大切です。
• コンテンツマーケティング:
独自ドメインサイトでは、販売だけでなく情報発信メディアとしての側面も強化しましょう。先述のブログ記事やHowToコンテンツに加え、電子カタログ、レシピ集、スタイルブック、ユーザーレビュー集など多様なコンテンツを用意することで、サイト滞在時間を伸ばし回遊を促せます。
例えば、コスメブランドなら肌質診断コンテンツやメイク方法動画を提供してユーザーの関心を引き、その流れで商品購入につなげるといった工夫です。コンテンツが充実すればSNSで話題になりシェアされることもあります。自社ECサイト自体を顧客にとって有益で楽しい場にする発想でコンテンツ充実を図りましょう。これにより広告に頼らずとも自然流入と口コミ拡大が期待できます。
• メールマーケティング:
自社サイトではメールアドレスを獲得しやすいので、許諾を得た会員にはメールマーケティングを駆使します。新商品入荷やセール案内、誕生日クーポンの配布、購入商品に応じたおすすめの紹介など、パーソナライズされたメールを送れば高い開封率・クリック率が見込めます。
特に購買後フォローメール(「その後使い心地はいかがですか?」など)を送って関連商品の紹介やレビュー依頼をするのは効果的です。ポイント残高のお知らせやカート放棄者へのリマインドメールも購入喚起につながります。ステップメール(会員登録後◯日でこの内容、といった自動メール)を組んで顧客育成を図ることも可能です。メールはコストが低くダイレクトに訴求できるため、定期配信のメルマガも発行してブランドニュースレターとしてファンとの接点にしましょう。
• オンライン広告(SNS広告・ディスプレイ広告):
検索広告以外にも、FacebookやInstagramの広告、Twitterプロモ広告、YouTube広告、TikTok広告、Googleディスプレイネットワークなど、多様なオンライン広告を試して自社に合う媒体を開拓します。SNS広告はターゲット属性を詳細に絞れるため、自社商品のペルソナ像にマッチしたユーザーにアプローチできます。例えば、20代女性で美容関心が高い層にスキンケア商品の動画広告を配信するといった具合です。
動画や画像クリエイティブの出来が効果に直結するため、自社で難しければ制作会社に依頼してクオリティを担保しましょう。ディスプレイ広告(バナー広告)はリターゲティングに有効です。
一度サイトに訪れたが購入に至らなかったユーザーに対し、追跡型広告で再訪問を促します。カート落ちユーザーには「カートに商品が残っています」といったバナーを出すことも可能です。これらオンライン広告は使いっぱなしにせず、クリック率やコンバージョン率を見ながらPDCAを回し、費用対効果を最適化します。
• インフルエンサーマーケティング:
自社ECブランドにフィットするインフルエンサーを起用するのも強力です。コスメなら美容系YouTuberやInstagrammer、食品なら料理研究家や人気ブロガー、ファッションならモデルやスタイリストなど、信頼性のある発信者に商品を実際に使ってもらい、その感想と一緒に自社サイトのリンクやクーポンコードを紹介してもらいます。
インフルエンサー経由でサイトアクセスが増え、一気に売上が跳ねることもあります。費用はかかりますが信用の移転効果が高く、新規顧客獲得に有効です。マイクロインフルエンサー(フォロワー数万人規模)を複数起用する方が費用対効果が高い場合もあるので、自社リソースに応じて検討しましょう。
なお、提供した商品に対する率直なレビューをお願いし、ネガティブも含めて発信してもらう方が結果的にブランドの信頼度を高めます。
• ロイヤリティプログラム:
独自ドメインならではの会員ロイヤリティ施策を導入しましょう。ポイントプログラムは典型的で、購入金額に応じたポイント付与と次回利用時の割引によりリピート率向上を狙えます。顧客ランク制度も効果的です(例:年間購入額に応じてブロンズ・シルバー・ゴールド会員にランク分けし、それぞれ送料優遇や先行セール招待など特典を付与)。
これにより顧客の継続購入意欲が高まり、「あと○円でゴールドだから買おう」という動機付けになります。定期購入割引や紹介プログラム(友達紹介で両者にクーポン進呈)なども、顧客をファン化しつつ売上増につながる施策です。重要なのは顧客に特別感とお得感を提供することで、ブランドのファンでいて良かったと思ってもらえる仕組みを作ることです。
• カスタマーエクスペリエンスの向上:
マーケティング手法からは少し逸れますが、独自ECでは口コミでの集客が大きな割合を占めるため、顧客満足度(CS)の向上が結果的に最強のマーケティングとなります。丁寧かつ迅速な顧客対応、購入後のアフターフォロー、予想を超えるようなサプライズ(例:手書きのお礼状やノベルティ)によって感動を与えれば、SNSで紹介してくれたり周囲に勧めてくれる可能性が高まります。
「お客様一人ひとりとの関係を大切にする」姿勢は独自ECならではの武器です。こうした小さな積み重ねがブランドの評判を高め、広告費をかけずとも安定した集客をもたらしてくれるでしょう。
なので、ユニクロのような名前が有名なところが比較的多い。モールのカラーもなく、自分のお店のファン化が推進できるので、データを基に、お客様を分析して、リピーターが生まれやすいのが特徴。
ちなみに、、、
独自ドメインサイト /オンラインストア(個人商店)

細部のことはさておき早く作りたい!小さな規模感で、個人商店をやりたい、そんな人向けに、BASE、STORESなどがある。数分でショッピングサイトを作れ、商品登録も簡単で、決済環境が整っているから、すぐに始められる。考え方としては、独自ドメインと同じ捉え方で進めていけば良い。
重要なのは、自社の商品を求めるお客様にとって一番魅力的な出会い方・買い方を提供することです。モールであれAmazonであれ自社サイトであれ、顧客視点で最適な購買体験を追求しつつ、今回整理した施策を講じていくことで、ネット通販ビジネスの成功確率は格段に高まるでしょう。
今日はこの辺で。
参考文献・情報源:
- 楽天市場・Amazon・Yahoo!ショッピング 各プラットフォームの公式ガイドライン・料金表
- ECナビ「ECモール出店のメリット・デメリットとは?自社ECとの違いやおすすめも解説」
- お名前.com「自社ECサイトとモール型ECサイトの違い」
- makeshop ECノウハウ「自社サイトとECモールの違いは?メリット・デメリット」
- GMOクラウドECニュース「楽天タイプかアマゾンタイプか〜ECモールタイプ別メリット・デメリット〜」
- ecto経営コンサルティング「楽天市場とAmazon、出店するならどっち?経営目線で比較」
- ニューアキンドセンター「楽天市場に向いている商材とは?」