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消費者に“選ばれる理由”石井食品の踏み出す新たな一歩とダイレクトイシイの挑戦

 80年以上の歴史を誇る石井食品。その象徴ともいえる「イシイのおべんとくん ミートボール」は、単なる美味しさや価格競争だけではなく、「お弁当」というシーンを明確に打ち出すことで、消費者に選ばれ続けてきた。しかし、今、石井食品の子会社であるダイレクトイシイは、従来の販路にとどまらず、通販という新たなチャネルを通じて、食品業界に革新をもたらそうと挑戦している。

 DMGコンサルティング主催の立春セミナー&交流会で、ダイレクトイシイの代表取締役社長である萩原俊彦氏が語った取り組みは、企業理念である「安心・安全でおいしい食の提供」を基軸に、消費者と生産者を直接結びつける新たな価値創造のヒントに満ちていた。

「お弁当」という視点が生んだブランドの強さ

 「イシイのおべんとくん ミートボール」は、当初市場で苦戦を強いられた商品だった。しかし、販売データを丹念に分析すると、春先の運動会や遠足など、お弁当の定番として利用されるシーンが浮かび上がった。

 そこで、「おいしいミートボール」ではなく、「お弁当の一部として溶け込む」ことを前面に打ち出したマーケティング戦略を採用。以降50年近くにわたり、消費者の記憶に刻まれるロングセラーへと成長した。

 この成功の背景には、「使われるシーン」を軸としたストーリー作りがある。ミートボールに限らず、その他の製品展開にも応用され、石井食品のブランド戦略の核となっている。

・非常食を“日常”に

 例えば、最近では、「非常食」としての商品開発が進められている。しかし、「もしものため」だけでは、消費者が継続的に購入しにくい。そこで、「非常食を日常に溶け込ませる」発想が生まれた。

 レトルトリゾットや子どもでも食べやすいスープなどを敢えてそこで提案し、日常的に美味しく食べられることを重視。これにより、消費者は日々の食事の延長線上で非常食を選ぶようになる。

 さらに、テーマを明確に伝えるためのパッケージ変更や商品ストーリーの見直しも進めている。こうした工夫が、「選ぶ理由」となり、商品の価値を高める要因となっている。

 こうした「食べるシーンを作る」視点は、元の製造工場としての価値をフルに活かす上で、非常に効果的であるといえよう。商品の単なる機能価値を超え、消費者のライフスタイルや感情に訴えかける強力なブランド戦略として機能している。

・通販という新たな舞台での挑戦

 萩原氏が代表を務めるダイレクトイシイでは、食品通販の分野で新たな挑戦を続けている。食品ならではの課題が多く、冷凍・冷蔵商品の物流コスト、流通ノウハウの不足などが大きな壁となる。

 そこで、社内でのマーケティング研修や物流の最適化、リピートしやすい商品の開発に注力。さらに、楽天やAmazonなど大手モールへの出店、直販サイトの強化、定期購入サービスの導入など、多角的なチャネル戦略を展開している。

 特に、デジタルマーケティングやSNS広告を積極活用することで、新たな顧客層の獲得に成功している。ECサイトでは「大人向けのスパイス入り」「減塩タイプ」など、多様な選択肢を提供し、「もっと知りたい」「もっと試したい」というニーズに応えている。

 これにより、消費者はどのチャネルでも違和感なく商品を選ぶことができ、より自然な形でブランドとの接点を持てる環境が整っている。

「お弁当」から「非常食」へ、シーンの派生

 こうした取り組みの背景には、社内のフラットなコミュニケーション環境や定期的な研修を通じて、社員一人ひとりが消費者のライフスタイルを理解し、適した商品ストーリーを構築する体制がある。

 また、地域の食材を活かした商品開発や自治体・農家との連携を強化することで、地域密着型ブランドとしての価値も高めている。D2C(ダイレクト・トゥ・コンシューマー)戦略による販路拡大も進め、食品通販市場の未来を広げる可能性を秘めている。

 未来への展望として、石井食品は「生産者と消費者を直接つなぐ」というミッションのもと、さらなるチャネル戦略と商品開発を推進。これにより、食品通販の枠を超えた新たな価値創造が、業界全体に影響を与えることは間違いない。

商品軸でありつつ、新たな気づきを生む戦略

 「お弁当の定番」として確立したミートボールの成功は、後の商品展開にも根付いている。石井食品とダイレクトイシイの取り組みは、単なる商品の売買を超え、消費者が「このシーンにはこの商品があるといい」と具体的にイメージできるストーリー戦略を推進している。

 お弁当の定番から非常食へ。そして、地域との連携で新たなストーリー作りを。その挑戦は、従来の食品ビジネスの枠を打ち破り、通販という新たな舞台で未来を切り拓く大きな一歩だ。

 セミナーで語られた事例や戦略は、食品業界全体に示唆を与えている。生産者と消費者をつなぐ「ストーリー」が、未来の食品ビジネスをより豊かにし、消費者に選ばれるブランドを生み出していく。その挑戦は、これからも続いていくだろう。

今日はこの辺で。

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