時代を読む 特集
【特集】韓国から生まれるブームの理由と可能性
韓国から発信される文化は、ここ数年で日本の若者に驚くべき影響を与えています。ファッションやコスメ、さらには食文化まで、韓国の新たな価値観が単なる流行を超えて定着し、日本の若者のライフスタイルや消費行動を大きく変えつつあります。この特集では、韓国から生まれたトレンドがなぜ日本の若者を魅了し、どう定着しているのか、その仕組みや背景を各成功例とともに深掘りしていきます。日本のビジネスにも活かせる視点をぜひご覧ください。
1. 磨かれ輝く“宝の原石” ファンと共に育まれる「nugu SUMMER MARKET」の真価
「nugu」は、韓国発の新しいECプラットフォームで、単に商品を売るのではなく「ファンとともにブランドを育てる」姿勢で急成長を遂げました。
ファッションや雑貨を通じて「本当の自分を表現する」場を提供し、消費者が自己表現を楽しめる空間を作り出しています。
『nugu SUMMER MARKET』というイベントでは、リアルの場でもその価値を体感でき、ファンとの関係性をさらに深める場となりました。
ブランド側が大切にしているのは、顧客に「本来の自分」を見つけてもらうことです。この視点が、ファンの間で共感を呼び、日本市場でも一種の文化的現象となって支持されています。日本のECプラットフォームやブランドが学ぶべきは、商品と価値観を売る姿勢の重要性でしょう。
関連記事:磨かれ輝く“宝の原石” ファンと共に育まれるお店の真価 nugu SUMMER MARKET 潜入ルポ
2. 物を売らずに「小さな幸せ」を訴求する「Little Rooms」
韓国のライフスタイル提案をもとに、日本の生活に「小さな幸せ」というコンセプトを訴求した「Little Rooms」。
物を売るという概念を超えたSNS上でのライフスタイル提案が話題を呼び、ファンを育ててきました。平貴衣代表が考案した「しっとりチューリップ」などのアイテムは、単なる商品ではなく、暮らしの中で癒しや満足感を与える要素として支持されています。
彼女が元々SNSを活用し部屋のインテリアを提案したのも、韓国の「소확행(ソファッケン)」、つまり「小さな幸せ」という価値観を、日本の若者に届けたいという想いからです。この商品展開は、日本のECサイトにも新たな可能性を示し、物ではなく体験や価値観を販売する姿勢がいかに顧客との関係を深めるか、具体例をもって伝えています。
関連記事:物を売らずに小さな幸せという価値観を訴求するうちECが会社の軸になった「Little Rooms」の話
3. 「かわいい」の最前線、「Sanrio Lovers Party」と韓国の共創
日本の「かわいい」文化と韓国のトレンドが融合した「Sanrio Lovers Party」。
このイベントでは、韓国の「クィヨウン(かわいい)」の概念が取り入れられ、日本の「かわいい」文化と調和した空間が演出されています。このイベントは、韓国で生まれた「Sanrio Lovers Club」が日本に逆輸入され、Y2Kスタイルやレトロな学校風デザインが取り入れられている点が特徴です。
フォトスポットやアクスタ、韓国風の制服など、若者にとってインスタ映えする要素が盛りだくさん。韓国発のトレンドが「推し活」という形で日本の若者に受け入れられ、新たな「かわいい」の定義として共感を呼び起こしています。
国境を越えた文化の共創が、ファン層を拡大し、新しい消費行動を促す点は、他ブランドにも参考になるでしょう。
関連記事:今「かわいい」の最前線とは?「Sanrio Lovers Party」で韓国と調和して表現する新たな潮流
4. NOではなくYESを。FEMMUEのオーガニック戦略に学ぶ
韓国発のオーガニックコスメブランド「FEMMUE」は、従来の「NO」という制約ではなく「YES」の価値訴求を全面に打ち出したブランドです。
例えば「お花の力を活かす」というコンセプトのもと、製品にローズやジャスミンの香りを取り入れ、ポジティブな体験を提供。ファウンダーであるケリー・ジョン氏は、世界中の消費者に響くようにブランドの戦略を立てており、各国の好みに合うように香りや効果を調整しています。
日本市場においても、専門家である早坂香須子氏との協力を通じて現地の感覚を理解し、製品に反映。価格帯を広げ、新規顧客を獲得する商品ラインの導入によって、ブランドが一貫した品質と信頼を築くとともに、日本市場での支持を確立しています。
単なる「オーガニック」を超えた価値の訴求が、日本のビジネスにも多くの示唆を与えています。
関連記事:NOではなくYESを。FEMMUEに学ぶ、韓国のオーガニックコスメが日本で浸透した納得の理由
5. マムズタッチ 日本上陸、渋谷から始まる韓国の「熱さ」と「あたたかさ」
韓国ナンバーワンのバーガーブランド「マムズタッチ」は、渋谷の一等地に進出し、日本での本格的な展開をスタートさせました。
1997年の創業から「母の真心」を象徴する店名とともに、一つひとつ手作りにこだわったメニューが韓国で爆発的な人気を呼びました。その象徴である「サイバーガー」は「顎はずれバーガー」として話題を集め、単にボリュームだけでなく味わいや製造過程にまでこだわる姿勢が受け入れられています。
日本では韓国ファン層に留まらず、渋谷という大衆的なエリアで日常に浸透するトレンドとして認知を広げようとしています。
韓国ブランドらしくSNSを通じてファンを拡大し、三週間のポップアップでは1日平均1000個以上の売上を記録。韓国のビジネスが持つスケール意識と現地適応力は、日本の企業にとっても学びの多い点です。
関連記事:マムズタッチ 日本上陸 渋谷に一号店 韓国の「熱さ」と「あたたかさ」と「したたかさ」に学ぶ。
6. 社長対談から見える韓国ビジネスの「強さ」の理由
韓国を熟知する経営者、シナブルの小林裕紀さんとChannel CorporationのJayさんによる対談は、韓国のビジネスが持つ「強さ」を浮き彫りにしました。
Jayさんが韓国のEC業界の成長を牽引する要因として挙げたのは、行動力の速さと資金調達に対する積極性。韓国では多くのユニコーン企業がECやIT分野に登場し、迅速な決断と高い適応力がその背景にあります。一方、日本市場に進出するには、長期的な視点と忍耐が必要であり、小林さんも「日本での成功には時間をかけて浸透させることが重要」と語っています。
この対談を通じ、韓国企業がスピーディな意思決定と試行錯誤の精神で、成功を目指している様子が鮮明に描かれています。
また、韓国の起業家たちは世界市場への進出も視野に入れており、品質や顧客対応の高水準を維持しながら拡大しているのです。韓国の企業文化が日本や他国のビジネスにもたらす刺激と学びは大きく、実行力と柔軟性のあるアプローチが、今後も多くの企業に影響を与えることでしょう。
関連記事:The 社長対談 韓国の本気が日本のECに発破をかける
7.消費を超えてライフスタイルを変えていく
韓国からのトレンドは単なる消費を超えて、日本の若者の価値観やライフスタイルを変えつつあります。
各成功事例から、日本でも商品やブランドの価値訴求の方法として「文化」と「価値観」を重視するアプローチがいかに顧客を引きつけ、実践に結びつくかが見えてきます。自社の商品やサービスに活かせるヒントとして、ぜひ参考にしてみてください。