時代を読む 特集
【特集】 伝えるから始まるメディアの進化と価値創造:表現を軸にした商売の新しい可能性
これまでメディアは、単体で完結する情報源として機能してきました。しかし、時代が進むにつれて、メディアはその枠を超え、多様な価値を波及させる存在へと進化しています。その背景には、「いかにメディアを情報発信の場で終わらせず、商売やコミュニティ形成へ繋げるか」という問いがあります。そして、メディアの表現の仕方そのものも変わりつつあります。
この特集では、「何を、どう表現するか」に焦点を当て、メディアがもつ新たな可能性を探ります。2つの記事を通じて、メディアを活用した価値創造のヒントを深掘りしていきます。
第1章:「noteという発信プラットフォームが示す新たなメディアのかたち」
嘘偽りのない発信がもたらす共感の力
情報が氾濫する現代において、「嘘偽りのない発信」が多くの人の心を掴むのはなぜでしょうか。その鍵のひとつが、noteというプラットフォームにあります。noteは、企業や個人が自分の想いや価値観を直接的かつ誠実に伝える場として注目を集めています。これは、従来の「宣伝」とは大きく異なるアプローチです。
寿司屋のnoteが教える本質
noteの魅力を語る上で欠かせないのは、「寿司屋のnote」という実例です。コロナ禍で苦境に立たされた下北沢の寿司屋が、自分の思いをnoteで発信したことで、多くの共感を呼び、来店者が急増しました。この事例が示すのは、単なる広告とは異なる「嘘偽りのないメッセージ」がいかに人々を動かすか、ということです。
発信の場としてのnoteの特性
徳力基彦さんの言葉によれば、noteはブログやSNSとも異なる「論説文」のようなスタイルを得意とするプラットフォームです。これは、紙媒体の編集者が担ってきた役割をデジタル上で再現し、発信者が自分の考えを深めて可視化できる場所として設計されています。この特性が、企業や個人にとって新しい「伝える」手段となっているのです。
伝えるから始める価値創造
「伝えるから始める」ことが、コミュニティを形成し、結果的に商品やサービスの価値を高める鍵になる。noteが示すこの可能性は、情報発信のあり方を問い直すきっかけを与えてくれます。
[詳細はこちら::noteとは ?企業が こぞって“発信”する理由 徳力さんに聞いてみた ]
第2章:「偏愛が生む熱狂とECの未来」
偏愛がもたらす価値の再発見
メディアとコマースの融合が注目を集める中、「偏愛」というキーワードがその中心にあります。ヘリテージの齋藤健一さんが語る「偏愛」を軸としたアプローチは、雑誌を再生し、ECの売上を拡大する成功例を示しています。雑誌とデジタルを対立させるのではなく、それぞれの強みを組み合わせて相乗効果を生むという視点が斬新です。
雑誌から生まれる熱狂とコミュニティ
ヘリテージが経営破たんしたエイ出版社から受け継いだ「LIGHTNING」や「趣味の文具箱」は、雑誌としての価値だけでなく、偏愛を基軸にしたコンテンツの力を最大化することで新たなマネタイズを実現しました。雑誌を発行するだけでなく、YouTubeや会員制サービスを駆使し、熱狂的なファンを巻き込みながら、雑誌の発行部数を超えた収益モデルを構築しています。
熱狂を生む新しいマネタイズの形
ここで重要なのは、「何を売るか」ではなく「どうやって熱狂を生むか」という視点です。例えば、「趣味の文具箱」では、限定文具イベントへの招待や会員向け特典を提供することで、購読者との関係性を深めています。これは、単なる商品販売とは異なる、新しい形のECモデルと言えるでしょう。
メディアとコマースが共鳴する時代へ
メディアとコマースの境界が曖昧になる今、齋藤さんの取り組みは、「価値をどう表現し、共感を広げるか」という問いに具体的な解を提示しています。企業が持つ独自の価値観を掘り下げ、それを偏愛という形で具現化する。このプロセスこそが、メディアを活用してECを伸ばす鍵なのです。
[詳細はこちら::メディア化するほど、ECが伸びる理由 ヘリテージの上手な“雑誌”の活かし方]
「伝える」から「共感を生む」へ
メディアの進化は、情報を単に「伝える」ことから「共感を生む」段階へと進んでいます。そして、その共感がコミュニティを形成し、結果的に商売の成功へとつながるのです。noteやヘリテージの事例から学べるのは、「嘘偽りのない発信」や「偏愛」という要素が、いかに新しいビジネスの可能性を広げるかということ。
メディアの役割が変わる今、この特集を通じて得られる学びを、自らの実践に活かしていただければ幸いです。
今日はこの辺で。