時代を読む 特集
【特集】新しい価値に光をあてるサステナブルの挑戦
廃棄されるはずだったものに価値を見出し、新しいかたちに生まれ変わらせる。この流れは、今のビジネスやものづくりに確かな意義を持って広がっています。ただ、重要なのは「なぜそこに価値を見出すのか」。今回の特集では、廃棄予定だった素材に再び命を吹き込み、サステナブルなアプローチで新たな可能性を生み出している5つの取り組みを紹介します。
1. ものづくりへの愛が生んだ「くらしきぬ」のサステナブル思考
「廃棄予定のインナーを“定価”で販売する理由」
冷えとりインナーで知られる「くらしきぬ」では、捨てられる予定だった素材に愛情を込めて付加価値を与え、サステナブルな商品として「定価」で販売しています。冷えとりインナー「はらぱん」にダーニングマッシュルーム(補修用の道具)を付けて販売するこのアイデアは、愛着を持って使い続けてもらうための工夫が詰まっています。お客様に「もったいない」と感じさせず、むしろ価値を感じさせるこのアプローチに、ものづくりへの深い愛情が現れています。
お客様に選ばれる“本当に価値のあるもの”を届ける
「くらしきぬ」のこだわりは、単なる冷えとりだけではありません。素材の品質と「誤魔化さないものづくり」にも強い信念を持っています。「はらぱん」も、シルクとウールを交互に重ね、天然素材ならではの温かさを提供。安易に“使い捨て”ではなく、長く使ってほしい商品だからこそ、品質と使い心地に徹底的にこだわり、お客様に寄り添うものづくりを続けています。
→ 詳しく読む:“廃棄”させずに価値で売る くらしきぬ ものづくり愛故の サスティナブル 思考
2. 漁業者の想いをレシピで応える「ABCスタイル サステナ缶」
サクラマスの未利用部分を「サステナ缶」によって救う
ABCスタイルの「サステナ缶」では、未利用のサクラマスを缶詰にして、新たな料理の楽しみ方を提案しています。漁業関係者の「魚を大事にしたい」という想いがABCスタイルの料理の専門家に伝わり、この「サステナ缶」が生まれました。従来の生産プロセスでは使われなかったメスのサクラマスを活用し、フードロスを防ぎながらも、食材の価値を最大限に引き出しています。
料理で「新しい価値」を見つける力
「サステナ缶」のレシピ開発には、ABCスタイルの長年の料理経験が活かされています。シンプルでありながら、味の深みを引き出すための工夫が詰まっており、缶詰の製法もひと工夫されています。缶詰に閉じ込めた魚や玉ねぎの風味が、調理したてのような新鮮さを保つように設計されており、買い手にとって新しい料理の楽しみを提供しています。
→ 詳しく読む:もっと大事に。魚をいたわる漁業関係者の真心に、レシピで応えるABCスタイル「サステナ缶」の優しさ
3. 若き力が牽引するサステナブルブランド「miss♡gina」と「BOW」
廃棄素材に新たな命を吹き込む若きクリエイターたち
20代の加藤ジーナさんと片岡沙耶さんは、それぞれのブランド「miss♡gina」と「BOW」を通して、サステナブルな活動を実践。廃棄される素材を使って新たな製品を生み出すことに情熱を注いでいます。加藤さんは廃材のリボンでマスクのストラップを制作し、片岡さんは水着やランジェリーを廃棄素材で製作するなど、ユニークなアイデアを次々に実現しています。
「自分たちができること」を追求する姿勢が生む共感
加藤さんと片岡さんの行動力には、20代ならではのエネルギーが感じられます。サステナブルの実現には複雑な問題が絡むものの、自分たちができることから行動を始めた彼女たちは、世代を超えて多くの共感を集めています。消費行動がサステナブルな未来につながることを啓発し、未来に価値を残すための方法を、同じ世代に提示し続けています。
→ 詳しく読む:“サスティナブル”を 加藤ジーナ 片岡沙耶 ら20代の若き力が先導する
4. 文具業界に新風を吹き込む「PENON」のサステナブルな文具
「使い捨て」に抗うサステナブル文具の挑戦
文具業界では使い捨てが主流ですが、「PENON」はサステナブルな素材にこだわり、持続可能な製品を提供しています。パッケージに森林認証紙を使用し、無駄を減らす設計で、環境に配慮しています。使い切りの製品が多い中、「PENON」は再利用や長く使えるデザインを取り入れ、文具のあり方に一石を投じています。
素材とデザインがつなぐ“ものづくり”の精神
刺繍を取り入れた「フラッグペン」などは、丁寧な作りで長く愛用できる文具として人気を集めています。ものづくりに対する愛情と誠意が製品に反映されており、刺繍を担当する作家たちとのコラボレーションによって、デザインも独自性を発揮しています。このサステナブルな取り組みは、文具業界全体にとっても、価値の再発見となるでしょう。
→ 詳しく読む:サスティナブルはものづくりに打ち込むきっかけとなる“PENON”をみて感じたこと
5. サステナブルを手段にD2Cを進化させる「nestwell」
リサイクル素材を使用し「商品力」で引きつける
D2Cブランド「nestwell」は、リサイクルポリエステルから作られた糸を使用し、サステナブルなメッセージを商品そのもので伝えています。お客様に「良い商品」としてまずは手に取ってもらい、その後にサステナブルの重要性に気づいてもらうという工夫も、nestwellの大きな特徴です。ランドリーネットの付属など、顧客が長く使える工夫を凝らし、ブランディングを一貫して進めています。
リアルとオンラインで届ける「本物」の価値
オンラインでの販売が主流のD2Cにあっても、リアル店舗での体験ができるようにポップアップショップを展開。手触りや質感を実際に感じてもらう場を提供し、ネット通販だけでは伝えきれないこだわりを、自ら伝えられる機会を設けています。サステナブルな活動が、単なるトレンドではなく、ものづくりの本質と結びついていることを体感してもらう場として、未来のものづくりを提示しています。
→詳しく読む:D2C 秘話 製品が語る サスティナブル nestwell
新しい価値を見つめ、次の時代を創るサステナブルな挑戦
それぞれの取り組みを通じて、「廃棄されるものに価値を見出す」というサステナブルな視点が、単なる素材の再利用を超えて、私たちの価値観をも変えていく力を持つことが明らかになりました。
これらの活動には、未来に必要な「ものを大切にする心」が込められており、捨てられるものを拾い上げることで生まれる新たな価値が、持続可能な社会づくりに大きく寄与しています。
本特集が、サステナブルな価値の在り方を探る中で、新たな視点を提供できていれば幸いです。企業やブランドだけでなく、私たち一人ひとりも日々の暮らしで「本当に価値のあるものとは何か」を問い直すことで、未来への一歩を踏み出せるかもしれません。
どうか皆さんも、サステナブルな視点で新しい価値を見つけ、次の時代を共に創り上げていきましょう。
今日はこの辺で。