泥は商品にならなかった。それでも、こだわりは残った。ルアンルアンが「生せっけん」の価値を磨くまで

「顔を泡にダイブさせるんです」。そう話しながら、目の前で泡を立てているのは、スキンケアブランド「ルアンルアン(Ruam Ruam)」の洗顔研究家、松田理沙さんだ。専用のネットを使って、せっけんを泡立てると、まるでソフトクリームのような濃密な泡が現れた。これを顔にのせ、「ポフポフ」と押すように洗うのだという。ただ、僕が今回興味を持ったのは、その泡だけではない。なぜ、ここまで泡にこだわるようになったのか。その経緯を聞いていくと、意外な話に行き着いた。
そもそも、ルアンルアンの原点はタイで出会った泥だった。しかも、その泥は日本での製品化が難しく、別の素材を探し、研究を重ねて生まれたのが、今の生せっけんなのである。
ところが、商品ができてからも苦労は続いた。容器にこだわりすぎて使い勝手に課題を抱え、パウチでは中身が出てこない。何度も試作を繰り返し、ようやくスティック型にたどり着いた。それでも変わらなかったものがある。あの泥との出会いから始まった、自然素材の力を活かそうとする姿勢だ。それが、なぜ今、洗顔研究家という存在や、お客様の心地よさを追求する取り組みにつながっているのか。松田さんとの対話を通して、ひもといてみたい。
1.始まりはレンタルビデオ店。映画好きの父親が、タイのサロンにたどり着いた
映画への情熱から始まった、徹底した本物志向
「ルアンルアン」のお店を運営するボックスグループの原点を尋ねると、松田さんから意外な答えが返ってきた。
「レンタルビデオ屋さんから始まっているんです」。
創業者は、松田さんの父親だ。大の映画好きで、自ら映画を制作するほど熱中し、俳優を目指していた時期もあったという。そうした映画への情熱から始めたのがレンタルビデオ店だった。当時、家庭では自由に見られなかった映画を、自宅で楽しめる。そのこと自体に価値を感じ、小さな店から事業を始めた。
やがて中古ゲームの販売にも進出し、子どもたちが行列を作るほどの店に成長したという。そこから、さらに事業を広げていくのだが、その一つがタイ式のリラクゼーションサロンだった。
面白いのは、その店づくりである。日本でそれらしい調度品を揃えるのではなく、実際にタイへ出向き、現地の品々を買い付け、日本へ持ち帰る。施術の技術も現地で学び、本場の雰囲気を再現することにこだわった。
タイのサロンで出会った、思いがけない素材
このこだわり、映画好きだったことも影響しているのではないかと思った。映画でも、単に物語を伝えるだけでなく、舞台となる世界をどこまで本物らしく作り込めるかが重要になる。サロンでも、施術さえできればいいのではなく、お客様がその場所に身を置いた時に何を感じるかを大事にしたのだろう。
そして、この徹底した姿勢が、後の生せっけんにもつながっていく。
サロンの運営を通じてタイとの行き来が増えるうちに、現地で思いがけないものに出会った。それが泥だった。タイの泥温泉では、人々が顔や体に泥を塗り、肌がつるつるになると喜んでいたという。
普通なら、旅先での珍しい体験として終わってもおかしくない。しかし、彼らはそこで立ち止まった。この泥には何が含まれているのだろう。なぜ、現地の人々はこれを使っているのだろう。日本の女性にも、同じような喜びを届けられるのではないか。
その疑問から、泥の成分分析が始まった。
2.出会った泥は使えなかった。それでも、自然素材の可能性を追い続けた
製品化できなかった泥。それでも残った確信
2007年頃、タイ・メーホンソーンで出会った天然の泥。その成分を分析した結果、思い描いていた通りに製品化できたかといえば、そうではなかった。松田さんによると、現地で見つけた泥を、そのまま日本の商品にするのは難しかったという。
ここが、このブランドの成り立ちを考えるうえで大事な要素となっている。
というのも、もし、単純に泥を使った化粧品を売ることだけが目的なら、そこで終わっていたかもしれない。しかし、彼らが惹かれていたのは、泥という物質そのものだけではない。自然の中に、人の肌にとって価値のあるものがあるという実感だった。
だったら、ほかの泥ではどうなのか。実際、現在の商品には、タイ・ロップリー県で採れるホワイトクレイが使われている。さらに、タイにはハーブも豊富にある。それらを組み合わせることで、もっと肌に喜ばれるものが作れるのではないか。こうして研究の対象が広がっていった。
17種類のハーブに託した、譲れないこだわり
そこで手がかりとなったのが、タイの伝統医学「サムンプライ」だった。現地のランシット大学と共同で研究を進め、伝統医学に詳しい教授の協力を得ながら、美容のために選ばれた17種類のハーブの処方にたどり着いた。
松田さんの説明で印象的だったのが、料理に例えた話だ。材料を揃えるだけではなく、何をどれだけ、どの順序で入れるかまで考える。料理なら、材料が同じでも配合や調理方法によって味が変わる。それと同じように、せっけんも配合が重要になる。
だが、当時の彼らには、化粧品を作ってきた経験がなかった。実際、処方の開発では、これ以上成分を加えたらせっけんとして成立しない、といった話になるほど試行錯誤を重ねたという。
それでも、ここだけは譲らなかった。
自分たちが自然素材の中に見いだした価値を、できる限り損なわずに形にしたかったのである。その結果として生まれたのが、独自の処方を持つ生せっけんだった。もともとの泥が商品になったわけではない。しかし、あの泥の成分を調べようとしたことが、自然素材の配合を徹底して追求する姿勢につながった。
この時に定めた商品の中身が、その後の長い試行錯誤において、重要な意味を持つことになる。
3.陶器にチーク材、竹ひごまで。こだわりを詰め込んだ「女王様」の誤算
開封するだけで一苦労。細部まで作り込んだ初期商品
「これが、最初のものなんです」。
松田さんが取り出したのは、現在のスティック型とは似ても似つかない、立派な陶器の容器だった。松田さんは、それを愛着を込めて「女王様」と呼ぶ。
実際に手に取ると、そのこだわりに驚かされる。陶器の容器に木の蓋があり、さらに包装が施されている。開封しようとすると、あちらを外し、こちらを取り、ようやく中身にたどり着く。取材中、僕は松田さんに手順を教えてもらいながら、一つずつ開けていくことになった。

しかも、細部まで徹底している。
木の蓋には、高級木材として知られるチーク材を使っていた。変形しにくいなどの特徴があるとはいえ、通常のせっけん容器に使うには、随分と贅沢な選択だ。内部には竹ひごを使った細工もあり、容器の中で部品がずれないよう工夫されていた。
これらを作る国もそれぞれ異なるという。そうなると、当然ながら部品のサイズが微妙に合わない問題が出てくる。蓋が収まらないものを手作業で仕分けるなど、製造上の苦労も少なくなかった。この初期商品はデザイン面でも評価されたが、当時の販売価格は税込4,389円。これだけの部材と工程を考えれば、採算が気になってしまう。
こだわりの足し算では、商品は完成しない
僕は思わず「足し算で作った感じですよね」と話した。
素材がいい。だから、容器もいいものにしよう。せっけんの香りを守りたいから、包装にもこだわろう。さらに、使う時の道具も揃えよう。個々の判断には、それぞれ理由がある。しかし、それらを足し続ければ、必ずしも一つの商品として優れたものになるわけではない。
実際、陶器は落とせば割れてしまう。木の蓋を浴室に置きっぱなしにすれば、カビの問題も出てくる。旅行やジムへ持っていくには不便だ。
商品開発では、こういうことが起こる。作り手は、一つひとつの品質を高めることに夢中になる。しかし、お客様がその価格を払うに足る価値を感じるか、会社が継続して利益を出せるかという全体の設計がなければ、事業としては成立しにくい。
ただ、だからといって、彼らのこだわりが無意味だったわけではない。むしろ、ここまで中身を追求してきたからこそ、次に考えるべきことが明確になっていった。
この生せっけんを、どうすればもっと使いやすくできるのか。
4.パウチから出てこない。容器に合わせて中身を変えれば、それでよかったのか
柔らかいのに出てこない。生せっけんの難しさ
初期の陶器の容器は、見た目にも美しく、特別感があった。しかし、毎日使う洗顔料として考えれば、もう少し手軽であってほしい。浴室に置いても困らず、旅行にも持っていける。そのための新しい容器を探し始めた。
そこで試作された一つが、パウチ型だった。

ところが、松田さんが持参した試作品を実際に触ってみると、思わぬ問題があった。柔らかそうなのに、中身が出てこないのだ。
「出ないんですよ」。
パウチを押しても、せっけんが思うように出てこない。使えないわけではないが、毎回一生懸命こねるように押し出さなければならないとすれば、あまりに不便だ。
松田さんは、せっけんの質感を「生バターみたい」と表現した。指で触れば柔らかい。しかし、液体のように流れ出るわけではない。一般的な洗顔フォームとは異なり、分類上は固形せっけんだという。
それなら、もっと柔らかい処方に変えればいいのではないか。誰もが考えそうな話だ。実際、チューブやパウチから出しやすいものにするため、処方の調整も試みた。しかし、ここで問題になったのが泡だった。
「私たちが許せる泡ができないんです」。
つまり、容器から出しやすくすることはできても、従来の処方で得られていた泡の質感が変わってしまう。
処方を守るために、容器の形を変える
ここで、先ほどの泥の話が生きてくる。タイの自然素材に可能性を感じ、独自のハーブ処方を研究して生まれた生せっけん。その中身を、使いやすい容器に合わせるためだけに変えてしまっては、そもそも何のために研究してきたのか、という話になる。
では、その処方を維持しながら、毎日便利に使える方法はないだろうか。
幾度もの試作を経て、たどり着いたのが、リップクリームのように繰り出すスティック型だった。使う分だけ出せて、携帯もしやすい。水が入らないよう、蓋をしっかり閉じる構造にもこだわった。

ただ、見た目はおよそせっけんらしくない。初めて見た人には、のりの容器にも見える。
それでも、この形であれば、大事にしてきた中身を変えずに、お客様が日々使える商品として届けられる。容器の開発は、いつしか、せっけんそのものの価値を守るための取り組みになっていた。
5.スティック型と泡立てネット。二つが揃って、初めて素材の価値が見えてきた
最初から「泡」が武器だったわけではない
スティック型が完成した時、社内には「これはいける」という手応えがあったという。
しかし、商品開発の難しいところは、作り手がそう思っても、お客様にとっての正解とは限らないことだ。一見すれば、せっけんには見えない。どれほど画期的な容器でも、その使い方が伝わらなければ、購入には結びつかない。
そこで欠かせない存在となったのが、泡立てネットだった。
実はネット自体は初期の商品にも付属していた。つまり、生せっけんの中身と、それを泡立てる道具は、容器が変わっても残り続けていたのである。
開発当初から、泡が最大の売りだったわけではない。松田さんによれば、試作を重ねる中で、きめ細かく濃密な泡ができた時、その気持ちよさを開発メンバーが実感したという。とはいえ、当時は17種類のハーブの処方にも強い思いがあり、泡そのものが今ほど前面に出ていたわけではなかった。
それが、商品の使い方が定まるにつれて変わっていく。
スティックから必要な分を繰り出し、ネットで泡立てる。すると、せっけんの持つ独特の質感が、弾力のある濃密な泡として現れる。手で直接こするのではなく、泡を肌にのせて洗うことができる。その気持ちよさが、使う人に伝わるようになった。
使われる場所が広がり、泡の価値が見えてきた
面白いのは、販売先での反応だ。ルアンルアンはECだけではなく、美容室への卸売りも手がけてきた。そこでは美容師たちが泡のへたりにくさを評価し、ひげ剃りにも使うという、当初とは異なる用途も生まれた。
使われる場面が増えたことで、泡が持つ可能性が見えてきたのである。
とはいえ、売れるまでの道のりは簡単ではない。チラシやECなど販路を模索し、贈り物として選んでもらえるよう包装にも工夫を重ねた。スティック型が生まれてから、徐々に社内の雰囲気も変わっていったと松田さんは振り返る。
重要なのは、処方を守ったことと、それを商品として成立させることは、別の課題だったという点だ。
あの泥の研究に始まる素材へのこだわりを、どの容器に収め、どの道具を添え、どんな価格と使い方で届けるのか。それらが噛み合って、ようやくお客様が価値を感じられる商品になる。
そして、一度その形が定まると、今度は、その泡をどう活かすかという新しい段階に入っていく。
6.256種類の洗顔料を試して分かったこと。松田さんが見つめる「素肌の土台」
父親の試行錯誤を見ていた娘が、美容の世界へ
ここで、松田さん自身の話を聞いてみたい。
松田さんは、父親が生せっけんの開発に苦労する姿を、学生時代から見ていたという。「一歩進んで二歩下がる」ような試作の繰り返しに、当時は何をそこまでこだわっているのか、不思議に思ったこともあったそうだ。
その後、ITベンチャーを経て、百貨店で美容部員として働くようになる。そこでは多くのお客様の肌と向き合い、あることを実感した。
肌にとって大事なのは、まず土台を整えることだという。
どんなにメイクを工夫しても、もともとの素肌の状態が整っていなければ、思うような仕上がりにはなりにくい。だから、ただ化粧品を重ねるのではなく、日々の洗顔を含めたケアを通して、素肌の状態を大切にする必要がある。
その考え方と、父親たちが試行錯誤してきた生せっけんが、松田さんの中で結びついていった。
やがてルアンルアンに加わり、商品開発にも携わる。父親とタイへ足を運び、現地の素材や製造の現場も見てきた。単に出来上がった商品の良さを説明するのではなく、なぜその処方にこだわるのかを、自分自身でも理解していったのである。
256種類を試して確かめた、泡の心地よさ
そして、その理解を深めるために取り組んだのが、ほかの洗顔料との比較だった。
松田さんによると、この3年間で実際に試した洗顔料は256種類に及ぶという。何が違うのか。泡のきめ細かさ、弾力、へたりにくさ、そして洗った時の心地よさ。それらを自分で確かめてきた。
その結果、今、ルアンルアンの最大の武器は何かと尋ねると、迷わず「泡です」と答える。
ただ、その泡を評価するために256種類を試したこと以上に、僕が興味深く感じたのは、松田さんが何を目的にそれを研究しているのか、という点だった。
単純に競合商品より優れていると証明したいわけではない。自分たちの商品を使うことで、毎日の洗顔がどのように変わるのか。その変化を、お客様自身に実感してもらうにはどうすればいいのか。
商品の強みが定まったからこそ、研究の対象は、その商品を使う人の生活にまで広がっていった。
7.ネットの内側に塗る、泡にダイブする。何百回もの実験が生んだ洗顔の楽しさ
何百回も試して見つけた、泡立て方の工夫
取材の後半、松田さんは実際に泡を立てて見せてくれた。

まず驚いたのが、せっけんを塗る場所である。普通なら泡立てネットの外側に塗りつけそうだが、松田さんはネットの内側に塗る。
その理由を尋ねると、外側ではせっけんが動いてしまい、ネットとの摩擦がうまく生まれないのだという。内側であれば、ネットをクシュクシュと動かす間も、せっけんが中にとどまりやすい。
「これ、何百回やったか分からないぐらい試して気づいたんです」。
なるほど。ここまで来ると、本当に研究だ。
ネットも、通常の2層から4層に増やしたタイプを使い、泡立ちを工夫している。さらに、スティックの繰り出し量も細かい。半回転でおよそ2ミリ。使う水の量についても、繰り返し試しながら感覚を掴んできたという。
顔を泡にダイブさせる。「ポフポフ」という洗顔方法
そして、実際に泡を立てると、その意味が分かる。
目の前に現れたのは、ソフトクリームのように形を保つ泡だった。手にのせても簡単には崩れず、弾力がある。これを顔に押しつけるのではなく、顔を泡に近づけていく。
「顔を泡にダイブさせるんです」。

そして、3秒ほど、そのままとどめる。
その後は、泡を「ポフポフ」と押すようにして洗う。手で肌をこするのではなく、泡の弾力を使って洗うのである。松田さんは、この泡によって摩擦を抑えながら汚れを落とすことができると説明する。すすぐ際も、熱いシャワーをそのまま使うのではなく、32度程度のぬるめの水を勧めていた。
洗顔という作業が、楽しみな時間に変わる
ここで面白いのは、松田さんが商品の説明ではなく、僕が実際にどう顔を洗うのか、その動作を一つずつ教えてくれていることだ。
松田さんによると、洗顔料の泡立てを面倒そうだと感じる人は少なくないという。しかし、正しい分量と使い方が分かれば、泡立てに何分もかける必要はない。それ以上に、あの泡に顔を包まれる心地よさが、日々の洗顔の印象を変えていく。
僕らは、顔を洗うこと自体が目的になってしまいがちだ。ところが、その数分間が、朝は気持ちよく一日を始める時間になり、夜は一日の疲れを切り替える時間になるとしたら、洗顔に対する捉え方も変わってくる。あの素材の良さを最大限に活かす方法を考え続けた結果、松田さんは、泡立て方だけでなく、顔を洗う時間そのものを研究するようになっていたのである。
8.「洗顔研究家」を通じて、商品をお客様の暮らしに届ける。最後に戻ってきた原点
商品を説明するだけでは、伝わらないものがある
ここでようやく、松田さんが「洗顔研究家」と名乗る理由も見えてくる。
もともと、美容の知識を伝えるだけの存在にはなりたくなかったという。せっかく自分たちが時間をかけて作った生せっけんがある。その心地よさをもっと多くの人に知ってもらいたい。そして、洗顔という毎日の行為が、肌だけでなく、気持ちも整える時間になってほしい。
そのためには、商品を説明するだけでは足りない。
今、ルアンルアンでは、松田さん自身を前に出した発信にも力を入れ始めている。SNSやコンテンツを通じて洗顔の大切さを伝えるほか、WEBカウンセリングでは、お客様一人ひとりの相談にも応じている。寄せられるのは、使い方が正しいかどうかという質問だけではない。ほかの商品との組み合わせや、年齢とともに変わる肌の悩みなど、その内容はさまざまだ。
例えば、若い頃は毛穴の黒ずみが気になっていた人も、年齢を重ねれば毛穴の開きや肌の変化が気になるようになる。そうした悩みに対して、商品の紹介だけではなく、洗い方を含めて考えていく。
松田さんが目指すのは、単なる美容知識の解説ではなく、その人が洗顔を見直すきっかけを作ることなのだ。その取り組みは、商品開発にも、発信にもつながる。小さな会社だからこそ、松田さん自身が開発、カウンセリング、情報発信まで幅広く関わっているという。
梱包の一つひとつにも、お客様への思いやりが宿る
そして、もう一つ印象的だったのが、商品の発送まで自社で手がけているという話だ。箱の中で商品が動かないようにするにはどうするか。何を同封し、どのように包むか。お客様が受け取った時のことを考えて、一つひとつ工夫を重ねている。
話を聞いていて、僕は最初の陶器の容器を思い出した。
あの時は、商品そのものにこだわるあまり、容器や包装の細部まで手をかけ、結果として使いやすさや採算との折り合いに苦労していた。しかし、今ではスティック型と泡立てネットという商品の形が定まり、その先のお客様の体験を考えることができるようになった。
だから、梱包一つにしても、ただ丁寧にすればいいわけではない。お客様が受け取り、使い、気持ちよく一日を過ごす。その一連の体験を支えるための工夫になっている。
すべては、あの泥との出会いからつながっていた
考えてみれば、タイで泥に出会った時も同じだった。
現地の人々が泥を塗って喜んでいる姿を見て、これを日本の人にも届けられないだろうかと考えた。その泥自体は商品にならなかったが、自然素材への確信は残った。そこから独自の処方が生まれ、何度も容器を作り直し、やがてスティック型と泡立てネットという形にたどり着いた。
その素材が持つ魅力を、今度は「泡」という体験で伝えられるようになったからこそ、松田さんは使い方を研究し、お客様一人ひとりの生活にまで目を向けられるようになった。
結局、変わっていないのだと思う。
泥から始まった、肌にとって良いものを届けたいという思いが、長い試行錯誤を経て、今では毎日の洗顔を心地よい時間に変える取り組みになっている。
あの「ポフポフ」という何気ない動作も、そう考えると随分違って見えてくる。ルアンルアンが届けようとしているのは、単に顔を洗うためのせっけんではない。その時間を通じて、お客様が感じる喜びなのだ。
今日はこの辺で。







