
ここ、モノ談は、“心を動かす”ものづくりの背景や職人のこだわりについて語り合い、私たちの毎日をちょっとだけ楽しく、彩り豊かにしてくれるエッセンスを探す場所です。
生産と在庫と粗利のバランスで戦っている
作れば、何でも売れるわけではありません。お客様にとって相応しい価値を提供する。それがメーカーの難しさで、生産と在庫と粗利の中で戦っています。知恵と商売のバランスの間で頑張る彼らのその舞台裏を4つの視点で追います。
ただ、基本的にはその粗利の構造がネットの登場によって変わっていること。それも織り込んでみるべきでしょう。それにより、プロダクトビジネスも転換期を迎えています。
参考:この10年を経て今後の10年を占う シンクロ西井敏恭さんと語る
1.プロダクトアウト(Product-Oriented Approach)
→ 「良いものを作れば売れる」という考え方。
(↓記事一覧)

企業が「自分たちの持っている技術や得意分野を活かして製品を作り、それを市場に提供する」というアプローチです。
特徴としては、技術力や製品の品質を重視し、マーケットのニーズよりも「作り手側のこだわり」が先行することが多いです。
例えば:
- • Appleの初期の製品(スティーブ・ジョブズが「市場調査はしない」と言ったように、独自の哲学で製品を作る)
- • ソニーのウォークマン(音楽を外で聴く文化が定着していなかったが、ソニーが技術力を活かして普及させた)
メリット:
- ・ 画期的な技術や製品を生み出せる
- ・ 競合が追随しにくい独自性のある商品を作れる
デメリット:
- ・ 市場のニーズに合わないと売れない
- ・ 顧客が求めていないものを作るリスクがある
2.マーケットイン(Market-Oriented Approach)
→ 「市場のニーズを基に商品を作る」考え方。
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企業が「市場(顧客)の求めているものを分析し、それに応じた商品やサービスを開発する」アプローチです。ユーザーの声を重視し、需要があるものを的確に提供するのが特徴です。
例えば:
- • ユニクロのヒートテック(寒い冬に暖かくて快適なインナーを求める声に応えて開発)
- • コンビニのスイーツ(SNSなどでトレンドをキャッチし、消費者が欲しいものを素早く商品化)
メリット:
- ・ニーズがあるものを作るので売れやすい
- ・ 市場に合わせて柔軟に対応できる
デメリット:
- ・競争が激しくなりやすい(差別化が難しい)
- ・革新的な商品が生まれにくい(市場の声に従うため)
3.ローカルイン(Local-Oriented Approach)
→ 「地域の価値を活かし、ローカルに根ざした事業を展開する」考え方。
(↓記事一覧)

全国・グローバル展開を前提にするのではなく、地域特有の文化・資源・ニーズを活かしてビジネスを展開するアプローチです。その土地ならではの価値を見出し、地域の人々との結びつきを重視するのが特徴です。
例えば:
- • ご当地グルメ・特産品を活かしたブランド(北海道の「白い恋人」、熊本の「いきなり団子」)
- • 道の駅やローカルスーパーの独自商品開発(地元農家と連携したオリジナル加工食品など)
- • 伝統工芸を活かしたD2Cブランド(京都の和雑貨、沖縄の琉球ガラスなど)
メリット:
- ・その場所の特色を活かした独自性が生まれるため、競合が少ない
- ・固定ファンが定着しやすく、リピート客が期待できる
- ・地域振興にも貢献でき、自治体や地元の支援を受けやすい
デメリット:
- ・全国展開しにくい(地域性が強いため、他のエリアで受け入れられるとは限らない)
- ・ ターゲットが限られるため、規模の拡大が難しい
4.サービスイン(Service-Oriented Approach)
→ 「モノではなくサービスの価値を重視する」考え方。
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「商品そのもののスペックや機能ではなく、サービスの質や利便性、顧客体験を通じて価値を提供する」というアプローチです。
顧客の満足度を最大化するために、アフターサービスやサブスクリプションモデルなどが重視されます。
例えば:
- • Netflix → コンテンツの質だけでなく、どこでも視聴できる利便性やパーソナライズ機能を提供
- • Amazon Prime → 商品そのものより、送料無料や特典などのサービス価値が差別化要因
- • AppleのGenius Bar → 製品の販売だけでなく、手厚いサポートで顧客ロイヤルティを高める
メリット:
- ・顧客満足度が向上し、リピート率が上がる
- ・ 価格競争に巻き込まれにくく、独自のブランド価値を確立しやすい
- ・ データ活用(パーソナライズなど)が可能で、最適な体験を提供できる
デメリット:
- ・ 目に見える商・品価値ではないため、サービスの良さを伝えるのが難しい
- ・ 人的コストや運用コストがかかる(サポート体制、カスタマーサービスの充実など)
どんなビジネスに向いている?
- ・ 顧客との長期的な関係構築を重視する業態(サブスク、SaaS、ホテル、エステ、美容サロンなど)
- ・商品よりも体験が重要なビジネス(レジャー、エンタメ、フィットネス業界など)
4つの考え方の比較まとめ

どれが正解?
・ プロダクトアウト × マーケットインのバランスを取ることで、革新性と市場ニーズを両立できる。
・ サービスイン × ローカルインの視点を加えることで、顧客体験や地域特化の強みを生かせる。
最近のビジネスでは、単に「モノを売る」だけでなく、「どうやって提供するか(サービス)」や「どの地域の価値を活かすか(ローカル)」も重要になっています。
これらを組み合わせて、より強いブランドや事業を作るのが理想ですね!
ジャンルごとで見ていく
ものを作ると言っても、それはジャンルごと、文化も違います。ジャンルごとで、ものづくりを把握して、その業界ごとの努力の違いも見ていけたらと考えています。
最後にーーいいものを作れば売れるわけではない
きっといいものを作れば売れる。そう言って、いろんな要素を取り入れて、最高のものを作るとしましょう。けれど、そこにかかる原価が大き過ぎれば、それが定価に反映されて、お客様の手にとってもらうことも叶いません。
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つまり、商品とはトレードオフだから、面白いんです。こういうお客様がいて、おそらくこのくらい存在するだろう。では相応しい数量は?そう考えて、必要な要素を絞って、原価を抑えて、相応しい価値を提供するわけです。
つまり、そのバランスがわかって初めて、在庫を必要以上に残すことがない。だからお客様への想いなくして、作れないのです。それぞれの姿勢に学び、今一度、商品についての理解を深めましょう。
