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「スロウハイツの神様」辻村深月著

たまたま、「スロウハイツの神様」という本を読んで、思いのほかのめり込んだ。時間を忘れるほどで、「あっそうか」とかそんなことをぶつぶつ言いながら、その世界に熱狂していたのである。

この本を読んでいて、思う。人間は何かしらで、つまづくけれど、一方で何かしらで救われる。苦しみが大きいほど、そこから救ってもらえた要因は、自分にとってかけがえのないものとなり、それは、苦しかった経験を飲み込んで、人をきちんと前へ駆り立てる。

共感を覚えたのは、この中で描かれるのが、小説、脚本、そうしたものに賭ける人たちの人生だからだろうか。それを、なんだか自分になぞらえていた。そういう書くということが人に対して、どれだけの価値をもたらすのだろうか。そんなことを思いながら。ただひたすら、のめり込むように読んでいた。

そして、読み終わった時、僕はそれらは価値をもたらすのだな、という結論に達した。

僕は遡ること、大学時代に、インターネットの掲示板を通して、文章にしてみることの面白さと、人に見てもらうことの楽しさに気づいた。

だから、親が望んでいたような、典型的なサラリーマンではなく、小さな業界紙の記者となった。その選択肢こそ、言い方を悪くすれば潰しの効かないもので、正しかったのか、と思っていたし、将来これで、僕はやっていけるのか、と不安だった。でも、他の何かに秀でたわけではない、というよりは自信がなかったから、これしかない、と思って、記事を書き続けた。

そこから、本当にいろいろ経験して、今また僕が選んだのは、やっぱりメディアであった。そして、文章には価値がある。そう信じて、書き続けている。

書くことの素敵さをこの本で読み、実感しつつ、「書く」への向き合う魂は、この本の登場人物への想いと相通じるものがあったのだ。

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石郷 学

株式会社 team145 代表取締役 

ジャパンEコマースコンサルタント協会 客員講師 

776.fmラジオ『connect』準レギュラー

Next retail Labフェロー 

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