10年越しの再会──“変わらないね”が、嬉しかった

展示会でばったり声をかけたら、向こうが「えっ、まさか…!」と目を丸くした。
10年ぶりの再会。僕だとわかった瞬間、まるで家族のような笑顔に変わった。
モノづくりの現場を共にした、あの時間
写真の永井さんは甲府でアトリエを構え、ジュエリーを手がけるデザイナー。僕がジュエリーの企画をしていた頃、矢野未希子さんと組んだジュエリー制作で、一緒に仕事をさせてもらった。今や僕はメディアの編集長という立場。
でも彼女にとっての僕は、いまだに“ジュエリー企画者”というイメージなんだそうだ。「モノ書きって意外だね」って笑いながら、でも最後にこう言ってくれた。
「そういう感じ、変わらないね。良かったぁ」
実は、今までずっと語らなかったことがある
この再会のあと、ふと思い出したことがある。実は永井さんと考えたあの矢野さんとのジュエリー、お蔵入りになったんだ。どうしてもやりたくて、見切り発車で企画を進めた。でも矢野さんに「イメージが違う」と言われ、会社には説明がつかなかった。(永井さんが悪いわけでもなく、矢野さんが悪いわけでもない。原型を作ろうと言った僕が悪い。)
結局、原型代を僕自身が負担した。それを彼女(永井さん)が分割にしてくれて、何ヶ月もかけて、僕はコツコツ返済した。あの時、正直言えば、悔しさもあった。でも今になって思う。そういう経験もまた、今の僕をつくっているんだな、と。
“想いだけは変わらない”と言ってもらえた
立場は変わった。でも、あの頃と変わらず、「やる」と決めたら、何があってもやる。たとえ自分が犠牲になっても。
純粋で、不器用で、でも自分の気持ちには正直で、人を大事にする。それゆえ、上みたいに自分の利益を失ったりもするんだから。でも、それを貫き、今やっている事業の中身を聞いて、僕に対して、今でも「あの頃と変わらない」と言ってもらえたことが、すごく嬉しかった。何をしようとも人って変わらないのかもね。
最後に
僕にはいろんな顔がある。ライター、企画者、編集者、起業家。でもそのどれにも共通するのは、その時々の想いに全力だったということ。だから、振り返るといつも“誰か”がそこにいてくれる。親身になってくれた人たちが、今もずっと、僕の背中を押してくれている。10年ぶりに会った彼女の笑顔に、「ああ、やってきてよかった」と思った。
出会いに、感謝。