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「売れない3年間」が教えてくれた──リライブが顧客の声から市場を見つけるまで

「これは絶対に売れる」。商品を生み出した本人がそう確信していても、市場が同じように受け止めてくれるとは限らない。リライブを率いる佐々木氏の話を聞いていて興味深かったのは、商品の機能そのもの以上に、その価値が社会に伝わっていくまでの過程だった。

 武術の考え方をヒントに、筋肉への刺激を衣服などに応用する発想から商品を開発した。しかし、最初の3年間は思うように売れなかった。それでも体験した人の反応を拾い続け、YouTubeをきっかけに認知を広げ、EC、インフォマーシャル、テレビCM、そして店舗へと販路を広げていく。

 しかも、その過程で当初想定していた顧客まで変わっていった。

 商品を作って、売り方を考える。それだけではない。顧客の反応から、自分たちの商品が「誰に、どんな意味を持つのか」を見つけ直していく。リライブの歩みには、新しい市場を作るときに必要なものが見えてくる。

1.困りごとからではなく、「発見」から商品が生まれた

 一般的な商品開発では、まず顧客の困りごとを探し、それを解決する商品を考える。佐々木氏自身、それまでの起業ではそうした発想でサービスを作ってきたという。しかし、リライブは逆だった。最初に顧客の課題があったのではなく、「こうすると体の動きが変わるのではないか」という発見が先にあったのである。

 きっかけになったのは、佐々木氏が学んでいた太極拳などの武術だった。体の特定の部分に働きかけることで力の出方や柔軟性が変わる。その考え方をもっと簡単な形で再現できないか。そこで筋肉への刺激に着目し、最初は養生テープを体のさまざまな場所に貼りながら試していった。

 「ここに貼ると力が出やすい」。そんな試行錯誤を繰り返しながら、中国の古い文献なども調べ、筋肉と経絡との関係にも着目していったという。そして、特定の筋肉に刺激を与えるという考え方を、日常的に使える製品へ落とし込んだ。それがリライブの出発点だった。

 つまり、最初から「高齢者向けの商品を作ろう」「介護現場の課題を解決しよう」と考えていたわけではない。先に技術があり、その技術が何に役立つのかを後から探したのである。

 ここが、この商品の面白いところだと思う。マーケットインとは逆の出発点である以上、作った時点では市場が見えていない。だからこそ、発売してから顧客の反応を聞き、自分たちが持っているものの意味を探す必要があった。リライブの商品開発は、完成した瞬間ではなく、むしろそこから始まっていたのである。

2.「体験すればわかる」だけでは、商品は売れなかった

 佐々木氏には当初、かなりの自信があった。実際に使ってもらえば変化を体感してもらえる。スポーツだけではなく、介護、農業、運送など、体を使うさまざまな場面に応用できる。これならテレビにも取り上げられ、すぐに広がるだろうと思っていたという。

 ところが、現実はまったく違った。

 展示会にも出展した。東京ビッグサイトにも、介護関連の展示会にも商品を持っていった。そこで実際に体験してもらうと、「すごい」と反応してくれる人はいる。自分用に一枚買ってくれる人もいた。

 しかし、バイヤーに「これを売ってください」と持ちかけると話が変わった。「着ることで力が出やすくなる」という商品の考え方自体が、それまで市場になかったからである。知られていないものは比較対象がなく、売る側にも説明しにくい。

 佐々木氏は当時の自分を「怪しいおじさん」と表現していた。今でこそ販売実績があり、メディアにも登場している。しかし、それらが何もない状態で、知らない人から突然「これを試してみてください」と言われれば、受け手が警戒するのも無理はない。

 ここには、新しい商品ならではの難しさがある。商品の価値と、その価値を信じてもらえるかどうかは別問題なのだ。

 良い商品を作れば売れるわけではない。「使えばわかる」も、使ってもらうところまで辿り着かなければ意味がない。リライブは、その壁の前で約3年間足踏みした。だが、この売れなかった時間が、後に「どうすれば未知の商品を信じてもらえるのか」を考える土台になっていく。

3.「令和の虎」で起きたのは、商品の変化ではなく“信用”の変化だった

 転機になったのは、YouTube番組「令和の虎」への出演だった。

 あるセミナーをきっかけに番組関係者と接点が生まれ、実際に商品を体験してもらったところ、その反応から出演へと話が進んだ。番組では複数の出演者が商品を試し、その様子が長い時間をかけて紹介されたという。

 興味深いのは、この前後で商品そのものが突然変わったわけではないことである。

 それまで佐々木氏自身が「この商品はすごい」と説明していたものを、第三者が体験し、「これは面白い」と語るようになった。すると視聴者にとっての商品の見え方が変わった。

 佐々木氏の説明によれば、出演後は短期間で数千枚が売れた。そして本当に重要なのは、その後だった。購入者が自分で試し、「前屈が変わった」「家族が使ってみた」といった体験をYouTubeやXに投稿し始めたのである。それも企業側が報酬を用意して依頼したわけではない。面白い体験だったから、自発的に誰かに伝えたくなった。

 一人の発信者の信用を借りて商品を知ってもらい、購入者が体験し、その購入者が次の発信者になる。ここで初めて、企業から顧客への一方向だった説明が、顧客同士へ広がっていった。

 新しい概念の商品ほど、企業が何度説明しても伝わらないことがある。一方で、自分と同じ消費者が実際に試している姿は理解しやすい。リライブが「売れない3年間」から抜け出した背景には、商品の機能だけではなく、その価値を語る人が佐々木氏一人ではなくなったことがあったのだと思う。

4.「介護士向け」のつもりが、顧客の声から高齢者市場が見えてきた

 売れ始めると、今度は別の発見があった。それは「誰に売るべき商品なのか」である。当初、佐々木氏が想定していたのは介護現場だった。自身の妹が介護の仕事で体を痛めていた経験もあり、人を抱き起こすなど身体的負担の大きい介護職に役立つのではないかと考えた。

 しかし、実際に市場へ出してみると想定通りにはいかなかった。個人の介護職からは「あると楽だ」という反応があっても、介護施設への導入を大きく広げるのは簡単ではなかったという。

 そこで顧客の声を見直した。

 すると、高齢者本人やその家族から「歩くことへの負担が軽くなった」「外に出るきっかけになった」といった手紙が届いていた。企業側が想定していた使い方とは違うところで、顧客自身が商品の価値を見つけ始めていたのである。

 そこからターゲットを高齢者本人へと整理していった。ECで得た利益をインフォマーシャルへ投じ、29分の番組を制作。BSや地方局などで放送を続けた。最初は「30日間使って実感できなければ返品」という全額返金保証も用意した。未知の商品を買う側の不安を、売る側が引き受ける設計にしたわけである。

 さらにインフォマーシャルで資金と認知を積み上げ、その後はテレビCMへ進み、一般層への認知を広げることで店舗での取り扱いにもつなげた。EC、インフォマーシャル、テレビCM、店舗。それぞれを別々の販路として選んだのではない。顧客が増えるたびに得られる声から次の市場を見つけ、それに合わせて伝える場所を変えていったのである。

5.売った後の「ありがとう」と「不満」が、次の商品を作っていく

 リライブには10回以上購入している顧客が約2万人いるという。そこまで関係が続く背景を考えると、売上の数字だけを追っている会社とは少し違う姿が見えてくる。

 顧客から届くのは「ありがとう」だけではない。配送が遅い、商品がほつれた、サイズが違う。当然、クレームもある。しかし佐々木氏によれば、不満の中にも「使い心地はいいのだけれど」といった言葉が入っていることがあるという。

 だから悪いレビューも商品開発や配送改善の材料にする。そして、届いた手紙にはハガキで手書きの返事をする。メールにはメールで返す。商品を売った時点で顧客との関係を終わらせず、その後の反応を次の商品やサービスへ戻している。

 帽子やリストバンドなどへ商品が広がったのも同じ発想だ。シャツは個人で所有するものだが、介護施設などで必要なときだけ共有して使うのであれば、別の形のほうが都合がいい。商品の形を増やすこと自体が目的なのではなく、使われ方を見ながら形を変えているのである。

 佐々木氏は商品開発には、既存の商品から色や大きさなどを「ずらす」方法と、新しいコンセプトそのものを作る方法があると話す。リライブが選んだのは後者だった。「リカバリーウェア」という既存の枠には自らを入れず、「潜在能力を引き出す」という独自の考え方を伝え続けてきた。

 新しい概念だから、理解されるまで3年かかった。しかし一度理解されれば、自分たちにしかない市場になっていく。

 振り返れば、リライブの市場を作ったのは、佐々木氏一人ではないのだろう。体験を投稿した人、高齢者やその家族から届いた手紙、そして時にはクレームまで含めた顧客の声。それらを拾い続けた結果、「何のための商品なのか」という答え自体が少しずつ形になっていった。

 商品を市場へ出すということは、完成品を届けることではない。むしろ、そこから顧客と一緒に、その商品の意味を見つけていくことなのかもしれない。

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