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百貨店が「売場」なら、ヨドバシは「物流」だった。──池袋で見えた、小売業の新しい勝ち方

2026年6月30日、池袋駅東口に関東最大級となる「ヨドバシカメラ マルチメディア池袋」がオープンした。約33,000㎡、地下1階から地上6階までの7フロアを使う巨大店舗である。公式には「ヨドバシ・ドット・コムとのシームレスな連携」や「FIND YOUR BEST」を掲げた店舗として紹介されている。

 しかし、実際に足を運んでみて感じたのは、「巨大な家電量販店ができた」ということではなかった。そこにあったのは、百貨店とはまったく違う思想だったのである。百貨店が「売場」をつくる時代から、「物流」を中心に都市を設計する時代へ。その変化を、私は池袋で目の当たりにした。

百貨店は「売場」を積み上げる。ヨドバシは「一つの経営」を積み上げる。

 まず驚いたのは、建物全体が一つの店舗として機能していることだった。百貨店ではフロアごと、ブランドごとに採算を考える。当然、それぞれが利益を出さなければならず、「この売場は赤字でも、別の売場で回収する」という発想は取りづらい。

 ところがヨドバシは違う。地下から上階まで一つの店舗であり、一つの経営体だ。だから極論を言えば、一つのフロアだけで利益を出す必要はない。ガチャガチャの巨大売場が学生を呼び込み、おもちゃ売場へ流れ、美容商品へ立ち寄り、家電を見て帰る。その途中でネット注文の商品を受け取る人もいる。

 つまり、一つひとつの売場ではなく、建物全体で利益を生み出している。しかも建物には、かつて百貨店だった名残も残る。本来なら使いにくそうな空間さえ、ヨドバシは売場やイベントで埋め尽くしていた。

 そこには「建物に合わせる」のではなく、「売るためなら何でも使う」という強さが見える。美しさより、回遊。演出より、購買。その割り切りが、この店の空気をつくっていた。

店舗ではなく、巨大な物流拠点として見るとすべてが理解できる

 歩いているうちに、あることに気付いた。この店は巨大な店舗でありつつも、巨大な物流センターのようである。商品は並んでいるけど、しかし役割は、ここで買うため、それだけではないように思う。

 ヨドバシ・ドット・コムで注文した商品の受け取り拠点にもなり、店舗在庫はネット販売にも利用できる。もしなければ、ここに取り寄せればいいが、最短でここにある在庫をそのまま、ネット用に当ててもいいはずだ。取り寄せのタイムラグを、この豊富な品揃えがカバーしているのではないかと推測できる。

 そして、駅直結という立地は、ある意味、そのニーズに対して応えるには最適だ。極論、店頭で実物を見て、その場で買ってもいいし、自宅配送でもいい。それだけではなく、豊富な品揃えは、他の商品も魅力的に映って見えるようにするはずだ。

 従来、小売業は「リアル店舗」と「EC」を別物として考えてきた。しかしヨドバシは、それらを完全に一体化しているからこそ、この駅直結のこれだけの面積を誇る店舗は、それを再抱かさせるものと言って良い。

 だから、店に人が集まること自体が、ECの価値にもつながる。逆にECの存在が店舗の価値も高める。その循環が、この巨大店舗の正体なのだと僕は見たのである。

「高級感」より「熱量」。人が人を呼ぶ売場の設計

 隣には百貨店があるし、元々、百貨店の場所である。だからこそ、その違いがよく見えた。百貨店は、美しい。広い通路、高級感ある内装、ブランドショップ。

 しかし、人が少ない時間帯には、その空間の広さが寂しさにも映る。一方ヨドバシは違う。開店したその日ということもあるが、人が多く、それに負けないくらいに商品が多い。

 扱う商品の幅も多岐に渡り、学生はガチャガチャに集まり、子供はおもちゃを見ている。家族連れがゲーム売場を歩き、女性は、美容商品を試す人がいる。彼らの強みとされるジャンルの中で、確実に多種多様の人たちに響く設計をしている。

 「売れ、売れ、売れ。」そんな熱量が建物全体から伝わってくる。もちろん、それは品揃えだけでは生まれない。人が集まる売場を意図的につくり、その人たちが別の売場へ流れる設計になっている。

 人の流れそのものが商品価値になっているのである。百貨店はブランドが主役。ヨドバシは人の流れが主役。そう考えると、この二つは似た建物に入っていても、まったく別のビジネスなだと痛感した。だからこそ、同じ土地の使い方ひとつでも、こうも違うのだから、かつての百貨店のビジネスは、今、変容を求められているような気がする。集まることを意図して設計するのではなく、集めるのである。

家電量販店ではなく、「都市のプラットフォーム」が完成した

 今回の池袋を見て、一番印象に残ったのは、「ヨドバシは家電を売っている会社ではない」ということだった。もちろん家電は売る。しかし、それは一部でしかない。

 美容、玩具、ホビー、日用品、アウトドア、ガチャガチャ。何でもある。つまり、「今日は家電を買う日」ではなく、「池袋へ行くならヨドバシに寄る」が成立する。その結果、人が集まり、物流が集まり、ポイントも貯まるから、ECとの相互利用も増える。

 店舗がECを支え、ECが店舗を支える。その循環を都市の中心に置こうとしている。

 公式発表では、「ヨドバシ・ドット・コムとのシームレスな連携」「関東最大級の売場」「専門販売員による最良の選択」を掲げている。しかし、実際に現地を歩いて感じたのは、そのさらに奥にある思想だった。

 百貨店が「モノを美しく売る場所」だとすれば、ヨドバシは「人・物流・EC・体験を一つに束ねる都市のインフラ」をつくろうとしている。池袋で起きているのは、新しい大型店の誕生ではない。

 小売業そのものの設計思想が変わる、その象徴なのだと思う。

 今日はこの辺で。

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