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同じ食材でも、売り方は一つではない。楽天食いしんぼう祭で見えた、地域で商売を続ける工夫

楽天市場の店が集まるイベントなのに、会場で売っているものが、必ずしも楽天市場の商品と同じではない。今回、店の人たちと話していて、そこが面白いと思った。10月9日、代々木公園で始まった「楽天食いしんぼう祭」の東京会場を訪れた。12日(祝)までやっている。毎年足を運んでいるが、以前の「うまいもの大会」で感じた、仮想商店街がそのまま街にやってくる楽しさに、違う要素が加わっている。

 実店舗でも知られる企業が楽天市場に入り、ネットとリアルで、それぞれの強みを別の形で見せている。その工夫を聞いているうちに、商品だけでなく、なぜその土地で商売を続けるのかという話にまでつながっていった。

売る商品は違っても、店の強みはつながっている

例えば、鮮魚を扱う「角上魚類」である。担当者によると、楽天市場への出店は今年3月から。以前から自社ECにも取り組んでおり、贈答品を扱う通販と、その場で食べてもらうイベント用の商品について話を聞いた。店頭の鮮魚、通販の贈答品、会場で提供する料理。

同じ会社でありながら、売るものの性格が違うのである。

つまり、このお店ではリアル店があり、このリアル店では、鮮魚を扱っている。ところが、楽天市場は?となると、まるで違う。カニなどの贈答品向けが主流となり、出所は同じでも出すメニューが異なる。

ここで考えたいのは、店が持っている強みを、今売っている商品だけで捉える必要はないということ。魚介を扱ってきた経験や素材の良さは、日々の食卓にも生かせるし、大切な人への贈り物にもなる。売り場を増やすというより、もともと持っているものを、別の需要に合わせて提案している。

その強みを持っているから、「楽天市場」をきっかけにしながらも、そこで馴染みのあるものとと全く異なるものを購入するという現象が起こる。これは、実店舗の延長だけでは伝わらない横顔であり、楽天市場のイベントだからこそ見せられるわけだ。

一方、ECを主軸にしてきた静岡県掛川市の「おいもや」は、「もちっとアイスもなか」や「お芋ホットサンド」などの食べ歩きメニューを用意している。普段は配送で届けることが多い店が、その場だから楽しめる食感や温度を届け、お客様の反応も直接聞く。出発点は違っても、リアルとネットの違いを、自分たちの良さを伝えるために使っている点は重なる。

楽天グループの伊澤希望さんも、今回は実店舗に強い企業がECの強化を目指して参加するなど、出店の背景が多様になったと話す。町の中小企業が集まる仮想商店街に、違う成り立ちの店が加わってきた。その変化が、リアルの催しにも表れているのだと思う

地元で仕事を続けるために、地域の外へ届ける

ただ、顔ぶれが変わっても、地域で商売をする人と全国のお客様をつなぐという、楽天市場の持ち味は変わらない。

岩手県盛岡市のベアレン醸造所は、ドイツから移設した醸造設備を使い、伝統的なスタイルのビールを造っている。「僕らはドイツスタイルのビールをポリシーに掲げています」と、会場の担当者は話していた。今回は樽生ビールを提供し、持ち帰り用の商品も用意する。

ドイツのビールを岩手で造るというのも、考えてみれば、地域の価値の作り方の一つだ。地域の産業というと、最初からそこにあったものを思い浮かべる。けれど、外で出会ったものを、その土地で育てていくことだってできる。彼らはまさに、ドイツ本場の設備に近いものを持ってきて、そこで造る仕事にする。

その積み重ねが、いつしか、その町を知ってもらう理由にもなるのだというのである。

現にそれはネット通販でも売りになっていて「結構リピートで成り立っています」と担当者。

改めて、多くの人がビールに飲み慣れていても、ここが差別化要因となって、ネットでも活きている。その製法や、なぜ岩手で造っているのか。そこまでは、普段あまり意識しないでビールを飲む人に対して、改めて、この会場で味と背景を知ることで、次に選ぶ理由が一つ増えるわけである。

その日の売上だけでなく、岩手から離れていても続く関係を作れるわけだ。

そんな、地域で仕事を続けることの意味を、もっと具体的な事情とともに話してくれたのが、長野県飯綱町の信濃農園、山浦忠司さんだった。

りんごで知られるこの町で、山浦さんは地鶏を育てている。飼育を学ぶために秋田へ3年半通ったという。飯綱も雪が深い。雪国でも育てられるかを学び、2003年から鶏づくりを続けてきた。この町で成り立つ仕事にするための、長い積み重ねがある。

細かな注文に応えるからこそ、端材の売り方も考える

山浦さんの話を聞くと、イベントで地鶏を売る理由も、少し違って見えてくる。信濃農園は、レストランからの細かな注文にも応じている。

例えば、「もも2枚、ささみ、胸3枚」と頼まれたら、その必要に合わせて届ける。山浦さんが気にしているのは、料理を作る側の都合であり、限られた冷蔵庫を無駄なく使ってもらうことでもある。

ところが、相手の欲しいものに合わせて切り分けると、その注文では使わない部分が残る。お客様にとって便利な提案をするだけでは、一羽を使い切ることにはならない。そこで、残った端材を冷凍し、期限を考慮しながら、イベントで食べてもらえるように加工する。山浦さんは、求められる部位を提供し、そこで出る端材をリアルイベントで加工して、付加価値をつけて売るのだと説明してくれた。

なるほど。そのレストランの注文には合わなくても、その場で食べる料理の材料として見れば、別の使い道が生まれる。素材の価値がなくなったわけではなく、届け方を変える必要があったのだ。

取引先には、必要なものを必要なだけ届けたい。一方で、自分たちが育てた鶏の命も、できるだけ無駄にしたくない。

その両方を成り立たせるために、普段とは違う売り方を考える。「命をいただくわけですから」という山浦さんの言葉は、そうした細かな仕事の仕方につながっていた。命を大事にすることが、抽象的な思いのままで終わっていない。

角上魚類が魚介を贈り物として提案することと、商売の形は違う。けれど、持っている食材を誰に、どんな形で届けるかを考え直すことで、価値を生んでいる点は重なる。売る場所を増やすだけではない、リアルイベントに出る意味が、ここにもあった。

りんごの町で、なぜ地鶏なのか。飯綱町の仕事を守るために生まれた商売

そもそも、なぜ山浦さんは飯綱町で地鶏を育て始めたのだろうか。

飯綱町といえば、りんごの産地として知られる。しかし、山浦さんが選んだのは地鶏だった。実は、山浦さんはもともと土木建設業を営んでいた。しかし、2000年頃から工事の入札価格が下がり、設備投資の負担も大きくなる中で、別の事業を考えるようになったという。

そこで着目したのが農業だった。ただ、米もりんごも基本的に収穫は年に一度。それでは、従業員に毎月給料を支払い、安定して仕事を作ることが難しい。そこで、一年を通じて生産できる畜産に目を向けた。

しかも、大量生産を前提とした養鶏ではない。時間と手間をかけて育てることで、付加価値を生み出せる地鶏を選んだのである。

秋田へ3年半通って飼育方法を学び、2003年に事業を開始した。飯綱町も雪が深い。そこで地鶏を育てるには、同じ雪国である秋田の経験が必要だった。つまり、地鶏を育てるという選択の出発点には、飯綱町で仕事を作り、従業員の暮らしを守ろうとする思いがあったわけだ。

町の名前を背負い、商売を続ける。飯綱町から東京へ届ける意味

だが、決して順風満帆ではなかった。県のブランド鶏「信州黄金シャモ」の生産に携わる中で、鳥インフルエンザによって供給が途絶え、取引先との信頼関係にも苦しんだ。その経験を経て、山浦さんは町の許可を得て「飯綱シャモ」という名前を使うようになったという。

そして、ようやく事業が持ち直してきたところに、今度は円安や飼料価格の高騰が重なる。付加価値の高い商品を作っていても、利益を出すことは簡単ではない。

「最終的には従業員を守らなきゃいけないんで。お金を稼がなきゃいけないんですよ」

山浦さんはそう話し、「何か言う前に自分で動け、なんです」と続けた。

そして、その厳しい環境の中、彼は「飯綱町」との連携を密にしていくことになる。今回、楽天食いしんぼう祭に参加していたのも、飯綱町の公式アンテナショップ「みつどんマルシェ」だ。

会場では、信濃農園が生産を手がける信濃地鶏の炙り焼きを提供していたびである。ここにも、今回のイベントに参加する意味が見えてくる。

地域の生産者が作ったものを、町の販売拠点が東京へ持ってくる。それを食べてもらうことで、飯綱町の存在を知ってもらう。気に入ってもらえれば、楽天市場を通じて、今度は全国の人たちに商品を届けることもできる。単に鶏肉を売っているわけではない。町に仕事を作るために始めた事業だからこそ、育てた鶏を無駄にすることなく、価値に変えて届ける。その積み重ねによって、飯綱町で商売を続けていこうとしている。

楽天市場が変われば、リアルで集まる意味も変わってくる

さて、楽天の立場からもみてみよう。伊澤さんが準備を通じて感じたという「店舗さんそれぞれにストーリーがある」という言葉も、こうした話を聞いた後では、よくわかる。

今回、楽天側が力を入れたのは、その背景まで伝えることだった。伊澤さんらは大阪や和歌山などの店舗を事前に訪ね、メニューの開発風景も撮影した。SNSの撮影や編集は、伊澤さんを含む2人で手がけ、どんな思いで商品を作ったのかを発信しているという。

一方、催事への参加自体が初めてという店もある。そこで、グループ内のイベント運営チームとも協力し、備品の手配などから一緒に考えた。背景を聞くだけでなく、それぞれの店が実際に商売をできるようにするところまで関わっている。 実店舗では知られていても、ECではこれからという店もあれば、普段は会えないお客様と直接話したい店もある。地方で作り続けるために、新しい売り先を必要とする人もいる。同じ場所に出店しているからといって、欲しい成果まで同じではない。

そう考えると、今回の催しは、楽天市場の商品をリアルに持ってくるだけのものではない。それぞれの店が持つ強みを、違う用途や食べ方に置き換え、新たに伝える場になっている。楽天市場自体が多様になったからこそ、その違いを生かせる催しにもなってきたのではないか。

会場で売れ、帰宅後の買い物にもつながれば、もちろん嬉しい。ただ、その売上を作っているのは、ネットとリアルを行き来させる仕組みだけではなく、食材をどう生かすかと考える、一軒一軒の工夫なのだと思う。その工夫が商売になれば、地元で続けられる仕事もある。僕には、今年の楽天食いしんぼう祭が、そんな地域と商売の関係を改めて見せてくれたように思えた。

今日はこの辺で。

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