Z HD 2020 3Q (決算) YoY +33.7% 楽天よりGMV 伸び悩みも
Zホールディングス株式会社( Z HD )は2020年度 第3四半期( 2020 3Q )(10〜12月期)の決算を発表した。今期の結果を受け、売上収益は1.14兆円、営業利益は1600億円で着地する見込みだとしている。
■簡単にまとめると・・・
- ・トピックとしては、コマース事業の取扱高拡大に伴い、全体の売上収益は増加。「超PayPay祭」の開催等により、 ショッピング事業取扱高 YoY 33.7% 増となった。
- ・運用型広告等は需要増に伴って、広告関連売上収益 YoY 6.7% 増。
- ・投資を積極的に行っていることに加え、クレジットカード事業の既存システム刷新しているので、それに伴う除却損等により、営業利益は減少。売上収益 YoY 14.9% 増、営業利益 YoY 8.1% 減となっている。
- ・第4四半期はeコマース・決済事業を中心に、積極投資を実行するとしている。通期で 売上収益 1.14兆円(YoY8.3% 増)、営業利益 1,600億円(YoY5.1% 増)での着地見込みだとしている。
中身について、深掘りしていくと下記の通りになる。
■投資の中身について
Q3時点においては、営業利益は439億円としている。
Q4としては年度内で大型キャンペーンを予定していることを明らかにして、この点は今期における一つのヤマであることは会見を聞く限りで伝わってきた。下記の通り、それが積極投資や、コマース事業の粗利減、LINE統合の費用などで営業利益は178億円の見通しだ。
■コマース事業に関して
Q3におけるeコマース取扱高(物販系/サービス系/デジタル系を全て含む)は、9182億円でYOY33.0%増となっている。その内訳はショッピング事業が3,947 億円 +33.7 %という伸びを見せていて、「超PayPay祭」等の販促活動強化を行ったことに加えて、ZOZO連結子会社化の影響だとしている。
まずはQ3の投資の中身だが、コマースに注力している様子で、販促活動費はYOYで73億円。それは結果として奏功しており、下の表の通り、ショッピング事業取扱高 YoY+33.7%、リユース事業取扱高 YoY+7.4%となっている。
この点、リユースが伸びている理由に関して、今まではかけた分のプロモーション費がなかなか結果に結び付かなかったが、ようやく今回は機能して、また世の中のリユースに対しての機運の高まりとともに、リピートなども増えてきて改善されていると。
(参考までに、リユース事業2,192 億円 +7.4 %、サービス事業が「Go To キャンペーン」の影響で2,111 億円 +101.9% 、デジタル系も92 億円 +20.2 %といずれも好調ではある。)
実績が伸びた理由については、新規購入者及び、全体の平均客単価の両方が上がっていることを挙げている。具体的には、新規購入者数がYoYで+40.7 %、新規+既存顧客 平均客単価がYoYで+3.1 %となっている。本来であれば、新規購入数が増えるとその客単価が減るのだが、回数の増加などを受けて、結果的にわずかながプラスになっていると説明している。
ZOZOに関しては商品取扱高がYOYで26%増となり、営業利益も126%増となって同じグループになったことの相乗効果は下記の通り。PayPayモールへの出店など、ZOZO自体の取り組みも奏功していることもあり、全般に広がっている。
なお、今後はZOZOのファッションに加えて、コスメ進出ZOZOグラスを使った新しいコスメの提案もして、その裾野を広げていく。Z世代においてファッションと合わせて、クロスセルを行っていき、グループ全体でバックアップしていく旨を明らかにした。ただ、ちょっと個人的にはZOZOの歴史を見るに、気持ちの移り変わりの少ないメンズファッションから広がったことを思うと、女性の気持ちをこの ZOZOがどれだけ掴めるかが肝な気もする。
PayPayモール奏功 しかし楽天などよりはGMVが伸びていない悩みも
YOY20%大半ばの成長を目指すショッピング事業
専務執行役員 小澤 隆生さんの話では、ショッピング事業における目標値において「正直、コロナ禍で読みが難しいので、そのショッピング事業での成長を20%台半ば程度」としており、今の勢いを考えると、もっと高く目指さないのかという投資家の声に対しては、「年度内のキャンペーンに対して成果を見たい」としており、このキャンペーンがネット通販の関係者における一つの勝負になりそうな予感がある。
Yahoo!ショッピングとPayPayモールで見ると、どちらが伸びているのかという部分においては、明らかにPayPayモールでの伸びがショッピング事業を牽引している部分があると説明し「PayPayモールは思い描いた数字通りに順調に伸びている」(小澤さん)と分析してみせた。
PayPayモール、Y!ショッピングの違い
ただ、これは、どちらをどれだけ伸ばすという考え方にはないことも添えた。両方の合算値で追っていると。実はこれらのやり方はタオバオとTモールとの関係性を参考にしているようで、「基本、Yahoo!ショッピングに見に来て、PayPayモールで買っていく」という事例がかなり多くみられるのは、その関係性から予測したまさに想定の範囲内だとしている。
だから、PayPayモールの方が売れる理由は「その質が、Yahoo!ショッピングよりも高い」からと冷静に判断してみせた。とはいえPayPayモールの方を伸ばすというわけではなく、Y!ショッピングでもPayPayモールの商品を買えるようにして、その見え方として良い商品に特化したものとして、PayPayモールというものを用意している。単純に、多様化するニーズに応えているに過ぎなく、結果、あとは商品力が結果を出すと説明している。
色々な入口を作ることで、多様性に応える売り場を目指しているわけだ。
好調ながら楽天、Amazonよりは伸び悩み
なお、手厳しいのは ZHDとして「投資をしたのにも関わらずGMVが楽天と、Amazonと比較すると負けている」と投資家から指摘された点。ただ、この切り返しとして小澤さんの返答は素直であった。
「コロナ禍でお店に行けないとなった時に、真っ先に思いつくのが楽天、Amazonであったということだ。また、いつも買っているモールで月1万円支払っていたものを2万円買うようになったということでもある。そこで、20年、頑張ってきたところと、8年くらい頑張っている我々との差が出ていていることを実感しているし、実力不足な部分である」と認めたのだ。
その意味で、物事が変わるのは実は一瞬だが、その一瞬はその時代の転換期まで、どれだけ企業が地道に積み重ねてきたかによるのではないか、という気持ちを強く抱いた。それはこの間、某ショップオブザイヤーでも感じたことで、長い店舗こそ、窮地に強い。
決して、ZHDにおいて逆風は吹いていないが、それでも先に色々と試行錯誤を続けてきたライバル企業のが、同じことをやってもそこに差が出てしまう部分があるのだと思う。
ただ、そこの部分だけ見るのも本質的ではない。ZHDとしてある意味、ヤフーで培ってきたメディアの祖業を大事にしながら、今はその成長としてショッピングの強化に努めているだけで、そこの部分も含めて、楽天などのショッピングだけではない価値を今一度、見出しながら、LINEなどの武器も備えて、広く人々の生活に浸透し、そこを含めた上でのさらなる躍進を期待したい。
今日はこの辺で。