「美しき愚かものたちのタブロー」原田マハ著
東京・上野にある国立西洋美術館に行ってそれに感化されて、僕は原田マハさんの「美しき愚かものたちのタブロー (文春文庫)」を手にしたのです。
僕は、国立西洋美術館で魅せられたんです。中でもゴッホの眩いばかりの「刈り入れ」という作品でしばし立ち止まって。なんとも言えない力がありました。帰りがけ、その展示会のパンフレットを購入してしまいました。だから、なんかそれを題材にしたこの小説には引き寄せられたんです。
それで読んでみると、そのゴッホの時に感じた力に妙に納得しちゃって。「たかが絵画、されど絵画」だなと。
この西洋美術館って松方幸次郎氏が収集したものが結構あります。それは松方氏が日本における文化的な意識を底上げして、国民に広くそういう知識を得る機会を作ろうという想いが裏にあるんです。
だから、そのタブロー(絵画)への熱意が並ではないんですよね。関わる人全てを、命懸けで名画を守ろうとする、それぞれのストーリーへと駆り立てる。
それで、ゴッホに立ち止まったあの瞬間を思い出すと、深い。飾られているその一枚には描いた人だけではないその重さがズシンと響いていたんだなあと思ったんです。
絵ってそれだけ人を時に狂わせ、直向きにして、感動させるなんて。そして、これだけの人の念が寄せられていたなんて。あの瞬間をまた、別の意味で受け止め、深い余韻に浸っています。