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未来は展示されていない──SusHi Tech Tokyo 2026で見た「動き出すアイデア」の正体

「Sustainableな都市をHigh Technologyで実現する」そう掲げられたイベント。それが、SusHi Tech Tokyo 2026である。壮大な言葉に感じられるかもしれないが、 けれど、実際に足を運んでみると、その印象は少し変わる。そこにあるのは、完成された未来ではない。むしろ、まだ形になりきっていない“途中の挑戦”たちだ。

 ビジネスデーではスタートアップで奮闘する起業家が立ち、また、学生が真剣な表情でピッチを行い、 パブリックデーでは、ワークショップで子どもたちが手を動かしながら未来の仕組みを考えている。この場所は、未来を「見せる」場ではなく、未来が「生まれている」現場だった。

「場をつくる」ということ──会場全体に設計された“参加する構造”

 会場を歩いてまず感じたのは、“体験の連なり”で構成されているという点。

 オールジャパンエコシステムエリアでは、全国48の自治体が出展し、それぞれの地域が持つ技術や資源を発信している。単なる地方PRではなく、都市と地方、技術と文化をどう接続するかという問いがそのまま並んでいるように感じた。 

 さらに、インパクトステージでは中高生による社会課題解決のピッチが行われ、グリーンステージではARトランポリンやセンサーデバイスを使った体験型コンテンツが展開されている。 

 ここで重要なのは、「見る人」と「やる人」が分かれていないことだ。子どもも大人も、来場者も出展者も、同じ空間で“参加者”として存在している。

 つまりこのイベントは、情報を受け取る場ではなく、関わることで理解するように設計されている。

 この“参加する構造”そのものが、すでに未来の社会の縮図のように感じられた。

スタートアップが語るのは「正解」ではなく「夢」だった

 会場には、数多くのスタートアップが並んでいる。けれど、彼らが語っていたのは、完成されたビジネスモデルではない。
むしろ、その逆だった。大学時代に起業し、アプリ開発をプロデュースしているある企業の担当者は、こんなことを嬉しそうに語っていた。

「ドラえもんを作りたいんです」

 もちろん、フィジカルなロボットではない。デジタルの世界で、人の問いに応え続ける存在をつくりたいという話だった。

 一見すると、夢物語のようにも聞こえる。けれど、その場にいると、それが決して突飛な話には感じられない。むしろ、そのくらいのスケールで考えなければ、今の時代のイノベーションには届かないのだと気づかされる。

 既存の枠組みに沿って考えるのではなく、「何を実現したいのか」から逆算していく。

 その思考の出発点に触れられることこそが、この場の価値なのだと思う。

IPは「資本」からではなく「物語」から生まれる

 印象的だったのが、IPのあり方を変えるようなBLOOMIN’ KIDSの取り組み。子どもたちが絵を描く学校を運営する企業が、そこにとどまらない。そこで生まれた作品を企業に提案し、商品デザインとして活用していく。

 さらに、その対価をロイヤリティとして還元していく仕組みをつくっている。あるいは、その子どもたちが日常的に親しんでいる場所をゲーム化し、そこに物語を持たせていく。

 ここで起きているのは、従来とは逆の流れだ。これまでは、資本を投下してIPを育てていくのが一般的だった。しかしこの事例では、まず「物語」と「体験」があり、そこから広がりが生まれている。

 つまり、IPは作るものではなく、関係性の中から育っていくものへと変わりつつある。

 この視点は、単なるビジネスモデルの話ではなく、“価値の生まれ方そのもの”が変わっていることを示している。

街は「情報」から「体験メディア」へと変わる

 もう一つ面白かったのが、strolyというアプリの提案だ。通常の地図は、どうしても無機質になりがちだ。位置情報は正確でも、そこにある空気や物語までは伝わらない。

 しかしこのアプリでは、街がイラストで表現され、 GPSと連動しながら、場所ごとの情報が立ち上がってくる。つまり、街そのものが“メディア”のようになる。

 店の情報も散策の流れの中で自然と出会う形でリストで表示される。

 これは、地図の進化というよりも、「街をどう体験するか」の再設計だ。都市が単なる機能の集合ではなく、 意味や感情を持ったメディアへと変わっていく。

 その兆しを感じる提案だった。

子どもが主役になる理由──未来は「体験」からしか生まれない

 驚かされたのは、パブリックデーに集まる人の多さだ。会場前、東京ビッグサイトの前には、今や遅しと始まるのを待つ人が行列を成した。いざ、中へ入れば、学生はメモをしながら起業家から話を聞き、家族連れは子供達をワークショップへと誘い、共に楽しむ。

 スタートアップや企業だけでなく、子どもや学生が主役として参加できるように設計されているのである。実際、会場にはプログラミング体験や電子工作、ドローン操作など、手を動かしながら学べるコンテンツが数多く用意されていた。 

 さらに重要なのは、それらが単なる“遊び”ではないことだ。すべての体験が、テクノロジーや社会課題とつながっている。つまり、「面白い」で終わらず、「理解」へとつながる設計になっている。 

 未来は、知識だけではつくれない。実際に触れ、考え、感じることによって初めて、自分ごとになる。

 だからこそ、この場では子どもが中心にいる。

 未来を変えるのは、すでに完成された大人ではなく、これから挑戦する人たちなのだから。

この場の価値は「答え」ではなく「余白」にある

 こうして会場を回って感じたのは、このイベントが何かを“教えてくれる”場ではないということだった。むしろ逆で、自分の中に問いを持ち帰る場所だ。

 スタートアップのアイデアも、IPの新しい形も、どれもそのまま真似できるものではない。けれど、その本質を辿っていくと、 自分の中の思考と結びついていく。

「こういう考え方もあるのか」
「この発想は自分の領域にも応用できるかもしれない」

そうやって、少しずつ思考の幅が広がっていく。

 だからこの場の価値は、“完成された答え”ではなく、 “次に進むための余白”にある。SusHi Tech Tokyoは、未来を見せるイベントではない。

 未来をつくろうとする人たちが集まり、その途中をそのまま見せている場所だ。そして、その未完成さこそが、最も価値のある部分なのかもしれない。 

 今日はこの辺で。

 

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