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300人で売上1600億円。BE FORWARDは、なぜ世界214の国と地域に中古車を売れるのか/越境EC EXPO 2026速報

日本の商品を、どう世界へ届けるのか。越境ECという言葉そのものは、いまや珍しいものではなくなった。一方で、実際に海外へ売ろうとすれば、どの市場を狙うのか、どう集客するのか、決済をどうするのか、そして商品をどう届けるのか。言語や文化、法規制、通関、物流まで、国内ECとは異なる課題が次々と現れる。そうした越境ECの実務を、販売だけではなく物流まで含めて考えようと、2026年10月5日に初開催されたのが「越境EC EXPO 2026」である。

 日本越境EC協会(JACCA)と物流専門メディア「LOGISTICS TODAY」が共同で主催し、Amazon、eBay、Alibaba、Google、TikTok、JETRO、日本郵便、FedExなど、海外販売を支えるさまざまなプレイヤーが集結。2つのステージで14のセッションが今日、行われている。

その中に、いくつか参加させてもらい、そこで語られていたのは、単なる「海外向けECサイトの作り方」ではない。商品を見つけてもらい、購入してもらい、国境を越えて確実に届ける。その一連の商流をどう作るのかという話であった。

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214の国と地域へ──売上2000億円規模に成長した越境EC

そんな中で登壇した一人が、株式会社ビィ・フォアード(BE FORWARD)代表取締役の山川博功氏だった。中古車をインターネットで海外へ売る。言葉にすれば、それだけの商売に見える。しかし、その規模を知ると見え方は大きく変わる。

同社の取引先は214の国と地域に広がり、売上の約半分をアフリカが占める。売上高は2025年に1609億円まで拡大した。一方で、国内の従業員数は約300人。山川氏は講演で、現在は2000億円ほどの売上規模になっていると語った。

始まりは、値段すらつかなかった中古車だった。

そこからオンラインで顧客を集め、現地ではTシャツやステッカーで名前を広め、売れたデータから次の仕入れを決め、船会社との約束を守って物流網を築いた。そして今、自社で車を仕入れて売る会社から、世界中の在庫と世界中の買い手をつなぐプラットフォームへ変わろうとしている。

越境EC EXPOという場で山川氏の話を聞いていると、越境ECとは、単にサイトを海外対応させることではないのだと改めて気づかされる。

欲しい人を集める。売れるものを見極める。確実に届ける。そして、それを繰り返せる仕組みにする。

BE FORWARDの成長を支えたものは、派手なテクノロジーだけではない。むしろオンラインの裏側に積み重ねられた、極めて地道な商売の仕組みだった。

1.3万5000円をもらって引き取った車が、ネットでは10万円で売れた

BE FORWARDの原点は、山川氏が手掛けていた中古車の買取事業にある。当時は、中古車を買い取るどころか、顧客から処分を頼まれることもあった。価値がないと思われた車を、処分費として3万5000円ほど受け取って引き取る。ところが、その車をオンラインへ7万円、10万円といった価格で掲載すると、次々と売れていったという。

そこで発想を変えた。

処分費をもらわなくても、1万円を払って引き取って、それを12万、13万円で売れば利益が出る。やがて依頼される車だけでは足りなくなり、中古車オークションから仕入れるようになった。

最初から世界的な越境EC企業を作ろうとして始まったわけではない。目の前にある「日本では価値が低いと判断された車」に、別の場所では需要があることを見つけたのである。BE FORWARDの原型となったオフィスも小さかった。従業員は3人。山川氏が28歳の頃に始めた会社の一角にモニターを3台並べ、そこから海外向け中古車販売が始まった。

当時の中古車業界では、オンライン販売そのものが現在ほど重視されていなかった。掲載する写真も3枚程度というケースが珍しくなかったという。

しかし、数千ドルもする車を、わずか3枚の写真だけで海外の人が安心して買えるのか。

BE FORWARDは一台につき35〜40枚ほどの写真を掲載するようにした。サーバーへの負荷も今より大きかった時代である。それでも、買う側からすれば、車をあらゆる角度から確認できた方がいい。

後に巨大なデータを武器にする会社の出発点には、まず「自分が客なら何を見たいか」という素朴な問いがあった。

2.オンラインで売るからこそ、Tシャツを配り、車にステッカーを貼った

BE FORWARDは越境EC企業である。しかし山川氏は、「オンラインだけに頼るものではない」と話す。オンラインが生きるのは、オフラインがあるからだという。

その考えを象徴する施策が、驚くほどアナログだった。

購入された車にはBE FORWARDのステッカーを貼った。すると輸出港に同社のロゴを付けた車が並ぶ。港湾や物流に関わる人がそれを見る。やがて現地を走れば、一般の人もそのロゴを目にする。

購入者には、書類と一緒にBE FORWARDのTシャツも送った。ジンバブエなどで購入者がそのTシャツを着れば、周囲の人がブランドを知り、またサイトへやって来る。オンライン広告だけでブランドを作ったのではない。売った商品そのものと、商品を買った人が広告塔になっていったのである。

さらに現地でイベントやキャンペーンを仕掛けた。「1ドルで車を売る」といった企画を行えば、サイトには大量のアクセスが集まる。採算だけを考えれば合理的とは言いにくい施策でも、「お祭り」を作ることで人を集め、BE FORWARDという存在を知ってもらった。

ザンビアでは、国営郵便局の約40拠点にBE FORWARDの窓口などを設けた。地方の顧客でも郵便局へ行けば、担当者と一緒にネットで車を見ながら購入できる。かつては、その郵便局から米ドルを送金するサービスまで用意していたという。

山川氏は商売に必要なことを、極めて単純な言葉で表現する。

「人気者になること」。

オンラインでアクセスを集める以前に、現地で名前を知られ、人が集まり、買いたいと思われる存在になる。そのオフラインの蓄積が、オンラインの強さを作ってきた。

3.チャイナショックで通貨価値が4分の1に。それでも世界へ売り続けた

海外へ商売を広げれば、当然、日本では想像しにくいリスクにも直面する。BE FORWARDの販売先は新興国が多く、中でも売上の約半分を占めるのがアフリカである。そのアフリカ経済は、中国経済とも深くつながっていた。

山川氏が例に挙げたのが、2015年の「チャイナショック」だった。

アフリカでは銅やダイヤモンドなどの鉱物資源を中国が大量に購入していた。その中国経済が減速すると資源が売れなくなり、産出国の経済にも影響が及ぶ。ザンビアでは、通貨価値が大きく下落した。山川氏の説明では、価値が4分の1ほどになった時期もあったという。

それまでと同じ価格の日本車を買おうとすれば、現地の顧客は自国通貨で従来の約4倍を用意しなければならない。海外へ販売するということは、相手国の景気だけでなく、その国と別の大国との関係まで自社の売上に跳ね返ってくるということである。

当時、BE FORWARDはアフリカへの依存度が7割を超えていた。そこでカリブやオセアニアなど、別の市場を開拓し、販売地域を分散させていった。

物流でも同じだった。

アフリカ向けに毎月500台分の船腹を確保すると約束したなら、受注が300台しかなくても、残りを赤字覚悟で埋めて船に載せる。

目先では損をする。それでも船会社との約束を守らなければ、次に必要な時に船腹を確保できない。船がなければ、どれほどECサイトで売れても顧客へ届けられないからだ。

越境ECは、サイトの中だけでは完結しない。世界情勢、為替、物流、現地経済。そのすべてと付き合いながら、最後まで「届ける」ことが商売なのである。

4.ICHIGOとは真逆。「できるだけ内製化しない」という経営

興味深いのは、同じ日に登壇したICHIGOとの違いである。

ICHIGOは、エンジニアリング、マーケティング、商品企画、梱包などを可能な限り内製化することでコストを抑え、その分を商品価値へ還元してきた。

参考:日本のお菓子を世界へ。そして、世界を日本へ──ICHIGOが越境ECの先に「リアルな体験」を求めた理由

BE FORWARDの山川氏は、講演を聞きながら「自分は真逆だ」と感じたという。

「できるだけ自分のところに人を置かない」。

専門領域には、それぞれ専門家がいる。ならば、自社ですべて抱え込むのではなく、外部のプロフェッショナルに任せればいい。背景には、人に知識が集中することへの警戒もある。優秀な社員が一人で仕組みを作っても、その人が退職すれば、会社から知識やノウハウまで失われかねない。

だからBE FORWARDが力を入れるのは、人を増やすこと以上に「仕組み」を作ることだ。

問い合わせが増え、既存のメールソフトでは対応しきれなくなれば、自社の業務に合わせた仕組みを作る。人が行っていた作業は可能な限りシステムへ置き換える。人が辞めるたびに別の人を採用して穴を埋める組織ではなく、業務そのものが回り続ける形を作る。

結果として、1600億円を超える売上規模に対して、国内従業員は約300人にとどまる。

ICHIGOが「自分たちでやることで強くなる」会社なら、BE FORWARDは「自分たちがやらなくても回る仕組みを作ることで強くなる」会社なのである。

どちらが正しいという話ではない。重要なのは、自分たちの商売で何を競争力の源泉とするのかを決め、それに合わせて組織まで設計していることだ。

5.月2万台の取引が生んだ「データ」は、後発企業が買えない資産になった

では、BE FORWARD自身に残すべきものは何なのか。その答えの一つが、データである。月におよそ2万台規模の車を扱えば、膨大な情報が蓄積される。

メーカー、車種、年式、走行距離、色、車両状態、仕入れ価格。それをどの国へ、いくらで販売し、どれだけの利益が出たのか。さらにサイトに掲載した車が、どのように見られ、どれだけ売れたのか。

中古車は同じ車種であっても、一台一台状態が違う。

だからこそ、過去の販売実績を蓄積すれば、「どんな車を、いくらで仕入れ、どの国へ、いくらで売るべきか」を判断する材料になる。山川氏は、このデータとその使い方こそ、競合企業が簡単には追いつけない部分だと語る。

資金力のある大企業が同じ中古車輸出市場へ参入することはできる。ECサイトも作れる。広告費もかけられる。

しかし、BE FORWARDが何年もかけて世界中で一台ずつ販売し、顧客の反応を見ながら蓄積してきたデータまでは買えない。しかもデータは、持っているだけでは意味がない。どの車を仕入れるのか。どの国へ出すのか。価格はいくらにするのか。その判断へ組み込み続けて初めて、競争力になる。

オンラインで顧客を集め、オフラインで人気を作る。売れた結果をデータとして戻し、次の仕入れに生かす。そして物流で確実に届ける。

BE FORWARDの強さは、一つの必殺技にあるのではない。一つひとつの仕組みがつながり、次の販売をさらに強くする循環を作ったところにある。

6.日本車を輸出する会社から、「世界から世界へ」車を動かす会社へ

そして今、BE FORWARDは次の姿へ変わろうとしている。これまでの説明だけなら、「日本の中古車を世界へ輸出する会社」である。しかし山川氏は、日本から輸出できる中古車が将来減ることを、それほど大きな問題とは捉えていないという。

すでに日本以外から車を輸出するビジネスを広げているからだ。講演では、シンガポールから海外へ輸出される中古車のうち大きなシェアをBE FORWARDが扱い、韓国やタイなどでも展開を進めていると説明した。

さらに変化を象徴するのが、掲載在庫である。

BE FORWARDが自ら仕入れて保有する車だけではなく、日本国内の中古車販売会社が持つ在庫をデータ連携し、BE FORWARD上で販売する。そして今度は、海外企業が持つ在庫まで掲載する。2026年の掲載台数は54万754台。そのうち海外他社在庫だけで21万7892台に達する。

つまり、在庫を自ら抱えなくても商品が増えていく。BE FORWARDが20年以上かけて作ってきた世界の顧客、集客力、販売データ、物流網。その上に、世界中の販売事業者が商品を載せられるようになれば、会社の性格そのものが変わる。

日本の中古車を世界へ売る会社ではない。世界にある車を、世界の欲しい人へ動かすプラットフォームになる。

山川氏が目指しているのは、日本発で世界に通用するインターネット企業だという。3人で始め、価値がないと思われた中古車をネットに載せたところから始まった会社は、いまや214の国と地域へ商売を広げた。

その20年以上の歩みを振り返ると、BE FORWARDが売ってきたものは、中古車だけではなかったことが分かる。

 欲しい人を集める。売れるものをデータから見つける。確実に届ける。そして、その一連の流れを人ではなく仕組みにしていく。

その仕組み自体が、いまBE FORWARD最大の商品になろうとしているのである。

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